「脳からわかる発達障害」

鳥居深雪著、中央法規、2009


今回、本のレビューを書こうと思ったのは、発達障害や自閉症について、多くの著者が多くの本を出していて、これから発達障害について知りたいが、どの本を手に取れば良いかわからないという人に、少しでも本を選ぶ手がかりになればという想いからだ。


発達障害と一口に言っても、障害の定義が知りたいのか、対応が知りたいのか、原因が知りたいのか、その人の人生が知りたいのか、さまざまであると思う。



まずは、私が読みやすいと感じた本書を紹介する。


本書は、発達障害について、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害(高機能PDD)の3つに分類して脳科学も交えながら解説されている。


発達障害者はどのように文字や映像、物事が見えているのかなどが、健常者の視点から理解できるように表現されているのが面白い点だ。(ただし、それがどれだけ正しいかは確認できないのだけど…)


10年以上前に書かれたものなので、今の発達障害の定義とは少し違うとは感じる。


特に、高機能PDDとしているのは、知的障害を伴う自閉症などの広汎性発達障害は、発達障害に含まないという観点からかと推測する。


医者にもよると思うが、私の長男が通院している児童精神科では、ASDについては知的障害の有無に関わらず自閉スペクトラム症という大きな括りで診断しているそうだ。


自閉症の歴史はまだ80年ほどなので、細分化したり集約したり、これからも変化していくかもしれない。


ASDの概念についても、本書で少し触れられている。



著者の鳥居先生については本書によると、特別支援学級、養護学校教諭などを経験され、不登校や非行の子どもの教育相談、生徒指導に関わり、その後医学の道に進み、脳科学の研究を行っている方のようだ。


そのため、文章も教壇で教えるように、平易な言葉で表現され、わかりやすい。


発達障害の子どもとの関わりの実体験ももとにされており、実際の支援の方法についても言及されているので、発達障害の子どもを持つ親や、これから子どものに関わっていく人の入門書としておすすめする。


また、脳科学の研究をされているということで、脳についての基礎的な知識を書いた章もある。


専門用語もあり、私には難しいが、それでも読みやすい表現で書かれているので、興味が持てる。



発達障害の入門書のような本はいくつもあるが、この本で特におすすめできるのは、発達障害児のトレーニングや発達障害児の感覚が、具体的に示されていることだ。


これらの点は、やはり実際に子どもに関わってきたからこその経験則なのだろう。


親、教師、医者、学者、ソーシャルワーカーなど、発達障害児に関わる人間というのは多数いて、それぞれが発達障害について違った見解を持っているのは仕方がない。


発達障害に関する書籍の著者もさまざまで、それぞれ毛色が違う。


実は、私が一番面白いと思うのは、発達障害者本人が書いた本なのだが、それが必ずしも自閉症の長男の理解に役に立つとは言えないのが残念なところだ。



「脳からわかる」という著書名が、少し難しそうな聞こえだが、構えずに読むことができると思うので、是非手にとってほしい1冊だ。


(アマゾンとか楽天市場のリンクは貼らないので、タイトルで検索してほしい。)