前々から思っていたことだが、P'Kingは誰に対してもかなり距離感の近い人である。
 いつものグループにいる今も、Bossの肩に顎を乗せてスマホを覗き込んで談笑している。隣に座っているBohnにも何かちょっかいを出しては鬱陶しがられている。さらにいたずらを仕掛けられたBohnはむっとして、遠くの方を指さしてKingに何か言ったようだ。彼は驚いて後ろにいたMekに抱きついた。Bohnはゲラゲラ笑っている。恐らく『犬だ!』とでも言って驚かせたのだろう。Kingは真っ赤になってBohnと何故かTeeも巻き込んでヘッドロックを食らわしている。実に羨ましい・・・もとい、微笑ましい。

 慌てるな。あれはただの仲の良い友達同士のスキンシップだ。
 少し離れたベンチで遅めのランチを取っていたRamは、人目を引く賑やかなグループを眺めながら密かにため息をついた。

「P'Kingってさ、ほんとやばいよね!この間勉強教えてもらってて、顔がここ!すぐ近く!すごく綺麗で僕、変にドキドキしちゃった!」
 幸せそうに食後のラズベリーのチーズケーキを頬張っているDuenの横で、ドリアンのチップスをThingThingがせわしなく口に運んでいる。正面に座っている親友の聞き捨てならないセリフにRamは思わず聞き耳を立てる。
「Duen、あんたP’Bohnという恋人がありながら何言ってるの!まあでも分かる。あの人確かに綺麗よね。妙に色っぽい時あるし」
「でしょ、ThingThingもそう思うよね!あの距離の近さってやばいよね!」
「そうそうあれじゃ、自分に気があるんじゃないかって勘違いするやからもいるわね。ほんとP'Kingってさ」
 ThingThingは大きく頷いて、そしてしごく的確な言葉を口にする。
「無自覚な人たらし!」
 ほんとそれ!と二人で意気投合してながらキャーキャー騒いでいる。だがまあ言い得て妙だなとRamは感心する。
「Ramは?P'Kingと一緒に暮らしてるのよね?あんたといる時もそうなの?」
「二人は付き合って無いんだよね?でもP’Kingのこと好きなんだよね?RamはP’Kingにムラムラしたりしない?」
 Duen、可愛い顔をしてそんな生々しいことを・・・。
 親友二人に話を振られ、Ramは食事の手を止めて思わず押し黙ってしまった。そう、まさにRamを悩ませているのはそこである。
 確かに出会った頃は、無遠慮にグイグイ距離を詰めて来るところに慣れずにかなり閉口した。だが彼が自分を理解してくれる唯一無二な人だと分かってからは、その距離の近さに別の意味で閉口した。タトゥーに触れて来る、手は握る、挙句にシャワーを一緒に浴びようとする。とどめはキャンプだ・・・。
 勘弁して下さい・・・。である。
 Kingに恋愛感情を抱いてしまったRamにとっては、まさに飼い殺し状態なのだ。いや、だった、と言うのが正解か。
「何か悩んでるようなら相談に乗るよ?友達でしょ?」
「そうそう、今もP'Kingの事だけ見て、ため息ばっかついてたでしょう?」
 さすが親友だけあってよく見ている。秘めていたはずの思いもバレバレである。Ramは再びため息をついた。
 変化があったのは、そうキャンプの後からだ。キャンプから戻って以降KingはRamとの距離を取り始めたのだ。課題を見てくれる時も、何かを手渡してくれる時も、TVを一緒に観る時も、ほんの僅か以前より距離が空く。こちらが一歩詰めれば向こうが一歩引く。微妙な距離が縮まらない。
「え~、何でだろう。何か思い当たること無い?何かP'Kingの気に障ることしたんじゃないの?」
 そうDuenに言われるまでもなく、思い当たることなんて一つしかない。
 ・・・キャンプの夜のキス・・・
 さすがにキスの事は親友達にも言ってはいない。だが他に原因なんて無いように思う。Kingにとってあのキスは酔っぱらいのおふざけで、気まずくてさっさと忘れたい事なのだろう。
 そう考えてRamは三度ため息をついて、華やかな集団に再び視線を移した。するとKingが視線に気が付いたようにRam達の方に振り返った。二人の視線が引き合うように合う。Kingはあっ、という顔をしてそれからゆっくり微笑んだ。Ramの胸がときんと鳴る。すぐに視線は外されたが、綺麗な微笑みの残像だけがRamの目に焼き付いて離れない。
 ・・・やっぱり好きだ・・・
「そんなに好きなのね」
 エスパーなのか、ThingThing・・・。
「僕にはP’KingもRamの事が好きなように見えるんだけどなぁ」
 嫌われていないとは思うが・・・。
「P'Kingに聞いてきてあげる!」
 そう言って立ち上がるDuenの腕を掴んで慌てて止める。ふるふる首を横に振るRamに、申し訳なさそうにDuenが腰を下ろした。
「ごめん、お節介だよね。でもね、ちゃんとP'Kingと話をした方がいいよ」
 うんうん、と頷きながらThingThingはRamの目を見て言った。
「ねえ、Ram?言葉にしないと伝わらない事ってあるのよ?」

 Ramは午後の講義を終えた後、Kingのコンドに帰る気になれずに図書室へ寄り道をした。だがいつまでも居座る訳にもいかず、ようやく重い腰を上げて帰宅の途に就いていた。
 ThingThingに言われた事を何度も反芻する。言葉にすることが苦手なRamにとっては一番の難関である。
 ぐるぐる考えを巡らせて歩いていると、聞きなれた声が前方から聞こえて来た。
 P'King?
 Ramが顔を上げるとKingの細いシルエットが見えた。朝見たままのワーガーシャツにジーンズ姿の彼は、背の高い男と話をしながら校舎脇をゆっくっり歩いている。Kingが本を片手に時々男を見上げては何か質問をしているようだ。聞き取れる話ぶりから相手は先輩らしい。
 距離が近いな。
 まるで恋人同士のような近さにRamがヤキモキしながら様子を伺っていると、先輩とおぼしき男は本を覗き込みながらKingの肩に手を掛けた。Kingは質問に夢中なのか気にする様子も無い。やがてその手がするするとKingの腰に降りる。
「!!」
 Kingは男の怪しい動きに気が付いていない。と言うか、あれくらいは彼にはオトモダチとのスキンシップの範疇なのだ。男の顔がKingのさらさらと揺れて光る髪に近づいた時、Ramの我慢も限界に来た。
「P'King!!」
 突然呼ばれて驚いて振り向いたKingは、相手がRamだと分かると相好を崩した。ばつが悪そうに手を引っ込めた男を睨みつけてRamはKingの元に走り寄る。
「Ai’Ning、どうしたの?今日は帰りが早いって言ってなかった?もう帰ったかと思った」
「P'King、教授が呼んでいます」
「え?今?」
「失礼します」
 Ramは一礼しながら、もう一度男を睨みつけて、Kingの腕を掴んで来た道を引き返し始めた。
「ちょっと、Ai’Ning!痛いって!」
 Kingの苦情を無視してRamはずんずん速足で歩く。
「もうちょっとゆっくり、Ai’Ningってば!もう!」
 Ramは男が追いかけて来ないことを確認してからようやく手を離した。人気のない校舎裏に連れて来られて戸惑った様子のKingは不安気に、教授は?と聞いてきた。
「教授の話は嘘です」
「は?どういう事?」
 ポカンとした顔で見つめ返して来るKingに、Ramは今日何度目かのため息をついた。
「俺、先輩とこの本の事で話をしてた途中だったのに!何でそんなウソ!」
 鈍い人だと思ってはいたが、さすがにここまで無自覚だとRamでも呆れ果ててしまう。可愛さ余って憎さ百倍だ。
「その先輩とやらがあなたの肩やら腰やら触りまくって、挙句に髪にキスまでしようとしていたのにあなたはそれをおべんきょうをしていた、と言うのですね」
 イライラした気持ちを言葉に乗せてKingに思い切りぶつけた。Kingの顔色が変わる。
「そ、そんな事先輩が」
「する訳無い、ですか?」
「!!」
 Ramのいつにない強い口調ときつい表情に何かを感じ取ったのか、Kingは唇をぎゅっと結んで睨み返して来る。
「・・・何でそんな事君に分かるのさ!先輩の事何も知らないくせに!」
「分かりますよ」
 ・・・だってあれは貴方に触れたいと思っている自分だ 
 そんな反抗的に言い返すKingに、Ramの中に燻っていた黒い感情が顔を出す。
 ・・・何も知らないのは貴方の方でしょう?
「逆に何で分からないのか聞いてみたいですね。あなたが無意識に触れて来る手が、相手にどんな気持ちを抱かせるか分かっていますか?」
 ・・・あなたの何気なく触れて来る指を
「思わせぶりに上目遣いで見つめるところとかもそうですね」
 ・・・じっと見つめて来る吸い込まれそうなあなたの黒曜石の瞳を
「お、思わせぶりだなんて、そんな事・・・」
「誰に対しても親切で優しくて世話好きで・・・」
 ・・・あなたの包み込むような優しさを
「それがどんなに切なくさせるか分かりますか?」
 ・・・自分だけに向けて欲しいと切に願う
「あなたはとても綺麗で・・・」
 ・・・俺があなたをどんなに好きかあなたは知らないでしょう?
「・・・とても残酷だ」
「・・・あ・・・?」
 Kingはみるみる色を失くしていく。
 言い過ぎたか、とも思ったが訂正はしない。だって事実だ。あなたが他の人に触れるたびに。あなたが他の人を見つめるたびに。あなたが他の人に優しくするたびに。心がかき乱される。苦しくて仕方がない。
「ご、ごめん・・・。俺が触るの嫌だったんだね・・・」
 ・・・他の人に触れないで欲しい
「人の目を見て話すのは癖で・・・。そんなに気分を害してたなんて思ってなくて・・・」
 ・・・俺だけを見つめて欲しい
「俺が世話を焼くの鬱陶しかったなんて気が付かなくて・・・。お節介だったんだね・・・。うちに泊まれなんて言って迷惑だったんだ・・・」
 ・・・俺だけをかまって欲し・・・い・・・ん?
「ごめん・・・君がそんなに嫌がっていたなんて知らなくて・・・。もうしないから・・・だから・・・」
 ・・・・・・
「ちょ、ちょっと待ってください。何を言ってるんです?」
 何やらおかしな方向に話が行ってないか?
「嫌だったんだろう?触るのも、見つめたりするのも、世話を焼いたりするのも・・・」
「誰が嫌だと?」
「・・・君が」
「誰にされるのを?」
「・・・俺に」
 今にも泣きだしそうなKingを呆然と見ながら、Ramは絡んでもつれてしまった話の内容をどうにか解きほぐす。そして何一つ伝わっていないKingの天然っぷりに、がっくり膝を折りそうになった。
 ああ、もうどうしてこの人は頭は良いくせに、こんなに、こんなに・・・・・。

 言葉にしないと伝わらない事ってあるのよ?

「バカですか!」
「っ!!な、何だよ!悪かったよ!どうせ俺は人の気持ちも分からないバカだよ!」
 目に涙を浮かべて立ち去ろうと踵を返しかけたKingを背中から抱きしめる。
「離せ!」
 拘束を解こうと暴れるKingをさらに強い力で抱きしめる。
「嫌です、ほんとバカだ・・・」
「バ、バカバカ言うな・・・」
「バカなのは俺の方です。あれはあなたに他の人に触れて欲しくない、俺以外を見つめて欲しくない、俺だけをかまって欲しいっていう意味で言ったんです」
「・・・え?」
 動きを止めて大人しくなった細い体を抱き締めながら思う。
 誰にも渡したくない。
「キャンプから帰ってから、あなたが俺と距離を取っているのが分かって、どんなに傷付いたか分かりますか?あのキスはおふざけだったのかとすごく悩みました」
「そ、それは・・・」
「でもそれはあなたが悪いんじゃないんです。俺がはっきり気持ちを伝えなかったから」
 Kingを自分の方に向かせて抱きしめる。されるがまま腕に中で大人しく収まった愛しい人に安堵する。
「だ、だってキャンプの後、君は何も言ってこないから・・・嫌だったのかと思ったんだ。普通はそうだよね・・・男なんかにキスされたら嫌だよね・・・。それでも変わらず一緒にいてくれるのは先輩だから気を使ってくれてるのかと・・・思って・・・だから・・・」
 相変わらずどこかズレているKingに、今度はちょっぴり嬉しそうにRamはため息をつく。
「拒絶もしなかったでしょう?」
 むしろ応えていたかと思うが。
「そうだけど・・・」
「酔っていないと言ったはずなんですが」
「む・・・」
「やっぱり伝わっていなかったんですね」
 わざとらしくもう一度ため息をついてやると、小さな声でごめん、と呟いた。完全に脱力してしまったKingの背中を慌ててさすってやる。しばらくそうしていると、Kingはおずおずと顔を上げて涙で潤んだ瞳でじっと見つめて来た。引き込まれそうな深い瞳にRamはドキリとする。
「・・・じゃあ、俺達ってお互い勘違いしてすれ違っていただけってこと?ずっと・・・一緒にいてもいいの?」
 はい、と力強く頷くRamに、Kingは嬉しそうに微笑んでから目を閉じて静かに言った。
「・・・・・・ありがとう」
 Kingの頬を涙が伝う。はらはら落ちる涙にRamはたまらなくなる。
 切ない思いを抱えていたのは自分だけでは無かったのだ。
 雫を指ですくって愛しくてやまない美しい人を引き寄せる。
 夕日に映る二人の影が重なって、いつまでも離れようとはしなかった。

「ねえ、それってちゃんとP'Kingに伝わってる?」
 幸せ気分で少々浮かれてランチを取っていたRamに、眉間にしわを寄せながらThingThingが言い放った。
 どういう事だ?と首を傾げるとThingThingはずいっと指を差した。
 指先の方を見ると先日見た同じ場所に例の目立つ五人組がいた。今日は周りに後輩と思しき学生達が取り巻いている。BossとTeeは女子生徒に鼻の下を伸ばし、Mekは本に目を落とし周りを完全無視している。しかし後でBossがMekにお仕置きを受けるのは必至であろう。Bohnは適当にかわしているがまんざらでもない様子なのが見て取れる。ここにDuenがいなくて良かった。Kingはと言うと・・・。どうやらまた課題に苦戦中の後輩の面倒を見ているようだ。何故か男子学生も多いのは気にし過ぎだろう。それにしても相変わらず距離が近い。
「まあ面倒見のいい人だから困ってる後輩を放ってはおけないんだろうけど。と、私が言いたいのはそこじゃなく」
「?」
「話を聞く限りでは、あんたP'Kingに好き、って言ってないよね」
 ・・・・・・あれ?そう言えば心の中で何度も言ったつもりでいたが、言葉にして言っていない・・・?
「P'Kingからも言われてないよね」
 ・・・・・・。
 ああ、いやしかしいくら何でも伝わっているだろう。
「P'Kingってさ、恋愛に関して奥手っぽいよね?また元通り仲の良い先輩後輩に戻りました!よかったよかった!で終わってたりしないよね」
 いやいやいや、だって・・・P’Kingだって泣いて・・・しっかり抱き合って・・・。って、おい!そこの男、肩に手を置くんじゃない!
「仲直りしたくらいで安心してると、恋愛に免疫の無い初心な先輩は、誰かに持ってかれちゃうかもよ」
 そんなことは・・・。無いとは言い切れん・・・。
 ガタンと椅子を蹴ってRamは立ち上がる。そして一目散に集団の元へ走り出した。
「ひゅ~~、頑張れ~~、奪還してこ~い!」
「もう、ThingThingてば幸せな人達を羨ましいからって、からかっちゃダメだよ」
 煽るThingThingに遅れて来たDuenがあきれ顔で声を掛けた。
「てへっ、ばれたか。いいじゃん、あの二人はどっからどう見たって両想いなんだから。気付いてないのは本人達だけよ」
「面白がるのは悪い癖だよ」
「ふん、そんな事より、あんたの旦那もいいの?女に囲まれて浮かれてるよ?」
「!?」

「お~い、誰か向こうからすごい勢いで走ってくるぞ」
 Bossののんびりとした声に、何事かと顔を上げるとKingの思い人が駆け寄ってくるところだった。
「Ramじゃん、どうしたんだ?」
 昨日の長い抱擁を思い出して頬を染めて俯いてしまったKingの前に、当のお相手が息を切らして立ち止まった。Kingは恥ずかしさのあまり顔を上げることが出来ない。
「P'King」
 呼ばれて恐る恐る顔を上げると、鍛え上げた体に整った顔が目に映った。ドキドキする鼓動をどうにか抑えて平静を装いながら声を掛ける。
「ど、どうした?君も分からないところがあった?」
 RamはいきなりKingの上を掴んで引き上げる。
「少し借りる」
「へ?」
 そう言うとKingの腕を引いて走り出した。
「うわっ!ちょ、ちょっと」
 え~~!!、と後輩達から一斉に上がる抗議の声を完全無視してRamは走る。
「何だったの今の」 
 呆気にとられるTeeとBossは、今の勢いで飛び散ったプリントやらノートやらを急いで拾い集める。
「あれ、もう一人誰か走ってくるぞ。Bohn、お前の嫁じゃない?」
 綺麗な女子生徒に話しかけられ少し浮かれていたBohnは、Mekの言葉にギクリと跳ね上がる。
「Bohn!!僕と言う恋人がありながら浮気なんて許さないからね!!」
「ち、違う!浮気じゃない!お、落ち着け!Duen!」
 突然始まった夫婦喧嘩に周りも巻き込まれて、平和だった昼の休憩時間がてんやわんやの大騒ぎとなった。

「Ai’Ning、ま、待って・・・息が続かない・・・」
 ずいぶん遠くまで走って来たことに気が付いて、Ramは慌てて急ブレーキをかけた。
「す、すみません!」
 ぜいぜい息を切らしながら苦しそうに前屈みなっているKingを木陰に移し、背中をさすってやる。
「もう、体力差考えてよね。昨日から何なのさ」
「すみま・・・」
 走ったせいで赤みの差した頬に流れる汗が美しくてRamは目が奪われる。
「・・・それで何の用だったの?」
「うっ・・・」
 いざKingを前にすると情けないことに、言おうと思っていた言葉が出てこない。Ramのだんまりをどう取ったのかKingは困ったように呟いた。
「ああ、そっか。ごめん、また俺何かやってた?人との距離の取り方って分からなくて・・・。嫌な思いをまたさせてた?」
 こんな顔をさせたかった訳じゃない。悲しい顔はこの人には似合わない。ずっと笑っていた欲しいのに。
「いえ、すみません。昨日言ったことは忘れて。あれは俺の願望なだけで・・・。あなたはあなたらしくいてください。ただ・・・昨日言い忘れていたことがあって・・・」
「何?」
 じっと見つめられて半端なく緊張する。たった一言、好きという言葉がなかなか出てこない。
 その時、ふふっとKingが笑った。えっ?と顔を向けたRamの頬にKingの細い指先が触れる。
「大丈夫だよ」
「え?」
「ちゃんと伝わってる」
 風が吹いて降り注ぐ木漏れ日を揺らす。
 ああ、そうだ。これがP'Kingだ。愛してやまない愛しい人。自分を理解してくれる唯一無二な人。
 優しく微笑むKingに何故だか堪らなく泣きそうな気持ちになる。
「だから大丈夫。もう間違えたりしない。俺は君を・・・」
 Kingの頭を引き寄せて続きの言葉を唇でふさぐ。
 
 ・・・言葉の続きは俺に言わせて

 ・・・あなたを
 
 ・・・愛しています

 

 

 

 作者より

 まいどワンパターンだなぁ。ほんとすみません。でもまあ書きたい事ってKingに一途なかっこいいRamとスーパー鈍感人たらしなKingのじれったいハピエンラブストーリーなんだからしょうがない、ってことにしてください(^^;)