ドラクエ25周年を題してドラクエの歴史を触れていますが、今回は2000年8月26日に発売した「ドラクエVII」について話してみたいと思います。天空シリーズを含めてこれまで任天堂のハードに出し続けたドラクエだったが、ここにきてプレイステーション(PS)
というソニーのゲーム機へ転向してしまうんです。なぜでしょうか
その背景には「VI」
が発売される1年前の1994年までさかのぼります。
この年の年末にはソニーがPS、セガがセガサターン(SS)を投入し、先行の3DOやPCエンジンの流れをくむPC-FXとともに次世代機戦争となったんです。
その中で一歩抜け出したのがPSとSS。共に32ビットのCD-ROM搭載機だが、PSは3D性能が評価され「鉄拳」や「リッジレーサー」(共にバンダイナムコ)といったようなヒット作に恵まれました。一方、SSはというとセガという知名度に加えて「バーチャファイター」(セガ)といったヒット作も生み出し一時期はPSと互角に渡り合うことになったんです。もちろん、任天堂もPSやSSに対抗するためにNintendo64(N64)を開発するとともに、ドラクエやFF
といったブランド力のある作品を任天堂陣営に囲い込もうとしました。とりわけ、FFを開発しているスクウェアについては任天堂の山内溥社長(当時)のインタビューで「ロールプレイングの分野では世界一。次世代機の立ち上げには欠かせない。」(1995年9月28日付 日本経済新聞)というようにスクウェアが開発したソフトを高く評価するとともに、共同出資で子会社を設立を発表するなど任天堂とスクウェアは蜜月の関係でした。しかし翌年、スクウェアが「FFVII」
をPSで発売すると発表するとともに任天堂陣営から去ってしまいました。スクウェアがPS陣営に入ったことで次世代機戦争は一気にPS陣営に傾き、任天堂もN64を投入するものの、他のメーカーがCD-ROMを採用しているのにROMカセットにこだわったり、肝心の64DDの開発が遅れたりと時すでに遅く、前述のスクウェアやエニックスといった有力なサードパーティの流出を止めることができず、このままPSが次世代機戦争を制しました。
さて、「VII」はというと初めからPS向けに出す気はなかったらしい。というのも、当初は任天堂陣営のN64の64DD向けに出すことが内定しており、任天堂の山内社長が堀井雄二さんに開発を頼むほど期待していたとか。ちなみに、石版システムも64DDで出すことを想定していたみたいで、好きな順番で石版のかけらを取り、プレイヤーによってマップが変わるといういわゆる書き換えるドラクエを堀井さんは目指していたんですね。確かに64DDは容量が約64MBとCD-ROMの10分の1しか容量がなくFFシリーズのようなムービーが多いゲームには不向きだが、容量の半分以上を書き込み領域に使えるということでプレイヤーごとに全く違った展開を楽しむゲームには向いており、前述の石版システムと連動したフリーシナリオ化したドラクエにはどうしても64DDの機能が必要だったというわけ。(PSの場合はメモリーカード1枚につき128kBしか記憶領域がありません)ただ、前述の通り、次世代機戦争がPSに軍配が上がっている上に64DDが発売されるか(結局、2000年にランドネットDDの端末として発売されたもののたった1年でサービス終了してしまったけど…)怪しいという状況だったということも相まって1997年1月にその時売れているハードであったPS
で出すことを決定するに至りました。それに伴い、堀井さんが目論んが外れてしまい、予定されたいたイベントを一本につなげざるを得なかったです。その結果、2000年8月にPS向けで発売した「VII」はというとクリアするまで50時間はおろか場合によっては100時間もかかってしまうというドラクエシリーズにしては異様に長いものになってしまったというわけ。
PSへ移ったことで媒体がROMカセットからCD-ROMになり、「I」から続いていた容量不足から解放された代わりに読み込みによるタイムラグという新たな問題に直面することに。そこでハードビート(当時)の山名学さんはCD-ROMのバッファメモリにキャッシュしたり、マップデータを先読みするなど特殊な技術を用いることでCD-ROMの読み込みによるタイムラグを最小限に抑えようとしました。ただ、読み込みによるストレスがなくなった代わりに読み込み処理時にフリーズしてしまうという副作用を起こしてしまうこともしばしば。(ただ、ドラクエVIIに限らずPS全般に言えることだが、長時間稼働するとなぜかフリーズしやすかったとか)また、PSの特徴を活かしてムービーを取り入れたり、町やダンジョンを3Dで表現しLRボタンを使って視点を変えなければ発見することができない階段や宝箱と3Dならではのギミックを取り入れたものの、分かりづらいうえに石版を集めなければ先に進めないことも相まってか手こずった人もいたのではないかなと思います。それでも、「VI」に引き続き転職システムを取り入れたり、カジノや小さなメダルだけでなく、モンスター図鑑を導入したりとやり込み要素を拡充しているし、「ドラクエ」らしさは健在だったりします。
64DDの大容量の書き込み領域を使って自由に冒険できるドラクエを目指したとは裏腹に当時売れているハードであったPSへと移ってしまったかゆえにある意味問題を抱えてしまった「VII」だが、最終的には約417万本とこれまで最高だった「III」を抜いてしまうぐらいの大ヒットでした。ただ、その時代で一番売れているハードで出すというポリシーを捨ててまでもN64(64DD)で出すとこだわり続けていたとしたら違ったものになっていたと思うと口惜しかったかもしれませんね。
ということで、次回は「VIII」を話したいと思います。