前回は「V」トンヌラについて語ってみましたが、その続きから。ということで、ロト3部作で国民的RPGの地位をものにしたドラクエスライム2だが、ライバルだって負けてはいませんでした。とりわけ、スクウェアの社運にかけて出発したFFシリーズチョコボは「FF3」ルーネスで100万本を達成するどころかプラットフォームがスーパーファミコンスーファミに移っても快進撃が続けられ1994年に発売した「FFVI」ティナ(アナザーモード)に至っては255万本も売り上げるだけでなく、聖剣伝説シリーズやロマサガシリーズといったFF以外のRPGも大ヒットになるなど黄金時代を迎えました。その一方、ドラクエはというと「III」DQⅢ勇者♂で社会現象になるなど無敵の快進撃を続けていましたが、「IV」ソロのころからか堀井さんの目指すものとユーザーが望むものと間でギャップが生じ始めるようになったんです。堀井さんは「III」で完成したRPGの形にメスを入れようとしたが、皮肉なことにユーザはAI戦闘の不自由さや後味の悪い結末に批判が向けられました。次の「V」トンヌラはというと結婚を取り入れるなど人生にスポットを当てたが、おおもとのシステムはというと「めいれいをさせろ」で切り替えることができるようになったほかは「IV」とほとんど変わりませんでした。その一方、FFはというとシナリオ重視でありながら「FFIV」セシルのATBや「FFV」バッツのアビリティシステム、「FFIV」ティナ(アナザーモード)の魔石システムといったように目新しいシステムを導入することでドラクエに肉薄したことも否めません。しかも、「FFVI」ではスーパーファミコンの限界に挑戦したグラフィックを提示したということも衝撃でした。

このままではFFに抜かれてしまうということでドラクエのプライドを守るために「IV」、「V」のシナリオ重視からロト3部作にあった謎解きの楽しさに再び舵を切ろうとしたんです。「IV」アリーナ姫から続いた天空シリーズの完結編である「VI」DQ6主人公では発見をテーマにしたとか。それだけでなく、「III」にあった転職システムを復活。ただ、「III」とは違って転職してもレベル1にならないうえにこれまで習得した呪文や特技も忘れることがなく、いつでも使えるようにしたとか。その結果、自分だけのキャラクターを作る楽しさが復活したが、「IV」トルネコからあったキャラクターの個性は失われてしまうことになったんです。確かにハッサンは戦士タイプ、バーバラは魔法使いタイプという印象があるが、特技をある程度覚えてしまうとMPをいらないうえに強力な全体攻撃が使えたりとすべてが同じようなキャラになってしまい、戦略的に面白みがかけてしまうことも。ただ、クリアする分にはいわゆる万能キャラになってしまうほどのレベルに達することはまずないため面白さが失われてしまうことはないと思います。

こうして「V」の発売から4年後の1996年12月に「VI」DQ6主人公が発売されたが、「III」を超えることはできなかったものの、300万本の大台を回復するに至りました。これ以来、300万本を下回ることなくなったばかりか8年後に発売した「VIII」DQ8主人公では「III」を超える売り上げをたたきだすなど安定期に入ることに…。
堀井雄二さんと中村光一さんがファミコン初の本格的なRPGを作ろうと動き出したドラクエスライム2だが、「III」DQⅢ勇者♂で完成を見出したかと思えば、天空シリーズアリーナ姫ではRPGは何かというのを問われてきたと同時に試行錯誤し続けたシリーズだといえます。その答えや方向性が見出したのが「VI」DQ6主人公ではないかなと思います。つまり、謎解きや発見の楽しさこそがドラクエの本質であると過言ではありません。むろん、「VI」の転職システムも没個性になってしまうという批判を受けましたが、すべての職業を極めるという目標を掲げてプレイするというやりこみも提示してくれたし、「VII」DQ7主人公でも受け継がれました。

ということで、次回はいよいよ「VII」へと進みます。