前回は「ドラクエ」によってRPGというジャンルが一般に浸透しだし、他のメーカーもRPGを作り出すところまで述べましたが、今回は1990年2月11日に発売した「ドラクエIV」ソロに触れたいと思います。ロト3部作DQⅢ勇者♂から天空シリーズへとバトンタッチすることになるけど、「FF」チョコボなどといったライバルの存在も。

ロト3部作は「III」DQⅢ勇者♂で完結しており、その時点で手本としてきた「ウィザードリィ」に並んでしまったんです。一方、後にライバルとなる「FF」チョコボはというと一作目で「ウィザードリィ」に並んでしまったものの、「FF2」フリオニールではRPGでは常識だった経験値を排し、プレイヤーがとった行動でキャラクターを強化することで「ウィザードリィ」や「ドラクエ」との差別化を図りました。しかし、RPGの代名詞といわれているドラクエも黙ってはいませんでした。

「III」で完成形をみた「ドラゴンクエスト」だけど、前作では発売日に行列ができるなど社会現象となってしまうほどの人気になってしまいました。それを後押しするかのように「ドラクエIV」ソロは開発されました。そこで堀井雄二さんが着目したのは主人公=あなたではなく、冒険の仲間といった登場人物。確かに前作にあたる「III」にも旅の仲間はいましたが、途中で出会うこともなければ話すこともなかったりといわゆる主人公である勇者を支える味方でしかありませんでした。そこで、ドラクエIVではアリーナアリーナ姫やトルネコトルネコといった7人の仲間がいるがそれぞれが母国から旅立つまでのストーリを用意するなどして「冒険の仲間にもそれぞれ人生がある」ことを強調しました。ちなみに、「IV」ソロは全5章からなるオムニバス形式で主人公である勇者が出るのは第5章だけで第1章から第4章までの主役たちが第5章の途中で仲間になるというわけ。とりわけ、トルネコトルネコに関しては金儲けがメインという独特のシナリオとその後「トルネコの大冒険」シリーズでスピンアウトするなど 人気キャラになったんですね。また、馬車システムを導入したのも勇者を含めた8人で冒険するために設けられたとか。なお、1991年にスーパーファミコンで発売した「FFIV」カインでは最大5人で戦闘できるが、「ドラクエIV」はというとファミコン向けである以上、スプライトの最大同時表示数の課題などがあったが馬車を用いることでそれを解決したとか。なお、さくまあきらさんの作品でPCエンジン向けであるが「桃太郎伝説II」(ハドソン)桃太郎では最大20人の隊列を一度に並んで冒険するという当時では考えられないことをしたみたいです。

そして、本作の売りであると同時に問題点をたたきつけたのがAI(人工知能)戦闘ではないでしょうか。そもそもAI戦闘はというと勇者以外の導かれし者たちが指定された6種類の作戦に従って、人工知能に自動的に行動するといったもので、本作では「V」トンヌラ以降では標準装備となった「めいれいさせろ」がないうえに戦闘経験を積んでいくことでモンスターの弱点や特性を記憶しておく学習機能が搭載されているという代物。これに関しては雑魚モンスター戦でいちいち命令を出さなくて済むと同時に仲間とともに戦うことを意識させるに貢献したが、一度しか対戦しないボスモンスターに対して馬鹿げた行動を引き起こしたことも。とりわけクリフトクリフトに関してはこれが顕著で効くはずのないボスモンスターに対して「ザラキ」を連発したりとリメイク版や「モンスターバトルロード」でネタにされてしまうほどでした。そんなこともあって、「V」以降では学習機能を排したうえで「めいれいさせろ」で任意性にしたんですね。なお、「IV」のリメイク版にもこれらは受け継がれているのでご安心を。

一方、仲間だけでなく敵サイトにもスポットが当てられたのもこの作品の特徴ではないでしょうか。ロト3部作にも敵サイトはいたけど、「II」のハーゴンがムーンブルクムーンブルグを襲ったほかは敵の城に居座っている存在にすぎませんでした。しかし、「IV」ではピサロが恋人であるロザリーが人間によって殺されてしまい、悲しみと復讐のために悪に走ってしまいました。このようなバックストーリがあるがゆえにハーゴンなどと違って根からの悪役ではなく、悲劇の悪役という他のドラクエでは一線を画することになったんですね。そういうこともあり、ラスボスであるデスピサロを倒してもピサロを殺したという後味の悪い結末となってしまいました。ただ、本当はロザリーを殺したエビルプーリストを悪役にしたかったみたいでこれについてはリメイク版で成就されることになります。

自由に冒険するという前作とは違って、シナリオ中心となってしまった今作だが、この作品ではアリーナアリーナ姫などといった今でも人気のあるキャラクターを輩出したりとキャラクター中心のゲームというもう一つの側面を生み出したのも事実です。ただ、悲劇のヒーローをラスボスに添えたのは間違いだったかなと思います。といっても、「FF」では「FF2」フリオニール以降キャラクターにスポットを当てるような作りになっており、中にはレオンハルトやFF4のゴルベーザSFCゴルベーザという悲劇のヒーローはいるけど、その裏には皇帝皇帝(EXモード)やゼロムスという絶対的な悪がいるように勧善懲悪という聖域だけは絶対に揺らぎませんでした。ということで、次回は「ドラクエV」トンヌラまでの話を進めてみたいと思っています。