今日も続いてゆく
吉野寿
どっか遠くの方から吹いてくる
風のようで風じゃねぇ なんかしらん透明な
目に見えん 触れられん それで確かにそこにあって
そんな正体不明な淋しさのようなものが
いつだって 今だって いつかあの朝にだって
吹き荒んで やがて止んで 日が落ちて
現れる影絵の谷間
口に出した途端に みんな木っ端微塵さ
あばよで日々を折り重ねて
青白い鉄塔が今日も光っている
単純な感情で今日も笑っている
なんだ かんだ どうした そんな風じゃ まるでダメだお前
そうか それが どうした しるか いくぜ 俺は
どんな風だって なにがどうで どうなったってよ
歩き出してしまえば もう行くしかねえんだ
朝日に夜を縫い付けて
バス停と信号が今日も突っ立っている
淡々と日常が今日も流れてゆく
ＩＣカードの電子音の連続が／単調な行動に読点を打ち込んで
曇天と晴天に翻弄されまくって／４番線ホームから鳥が飛び去っても
シカト 踵 翻して雑踏へ／逃れ 逃れて 逃れ得ぬ生活の
交差点で すれ違って 生きてゆく人間たち
俺たちの現実は今日も続いている
人間の毎日は今日も続いてゆく
青白い鉄塔が今日も光っている
バス停と信号が今日も突っ立っている
『ｅａｓｔｅｒｎ ｙｏｕｔｈ／２０２０』より
