最近個人的に最も危機感を感じたのがAUのLTEのCM。ELTのやつではない。DAFT PUNKの「One More Time」のメロディーに合わせて次世代通信を宣伝するあれだ。未来を表現するのに10年代の素晴らしい音楽群からではなく、なぜ10数年前のダンスミュージックを持ってこなければならないのか。自分もDaft Punkは好きだけど、新しいものを取り入れないで古いものばかりじゃ未来がない。衆議院選挙とそっくりだ。また自民党をひっぱりあげてきて「One More Time」なんてもう沢山。
今作こそが2012年という時代の音楽を象徴しているのは間違いない。前作『Merryweather post pavillion』は09年以降のロックをサイケデリックでポップな方向へと決定づけ、かつてのフジテレビのコピーのような『面白くなければロックじゃない』という価値観を作り上げた。今作もそれは変わらない。サイケをさらに前進させ曲もポップだ。面白さに関しては文句のつけようがない。じゃあなぜ30位か。聴けば聴くほど何も残らない。完全に曲が現実と乖離してしまっていて、自分との共通性を見いだすことができない。これはショックだった。Animal Collective信者だった自分は数ヶ月新しい音楽を聴く行為を挫折してしまったぐらいだ。もっともそれが1位のバンドとの出会いへと導くことになるのだが。
29位Cero『My Lost City』 【日本(西東京):ロック(コンテンポラリー/エキゾチカ)】
青春時代ニルヴァーナを通過した人は特に必聴。USインディーが複雑な音楽が量産される中で反動としての起きたニルヴァーナ以前のグランジへの回帰現象。ストイックに直線的にカッコいいロックを演奏するカナダのバンド。そういえば今年の音楽にカナダは欠かせない。今年一のロックアンセム「The House That Heaven Built」のJapandroidsもカナダのバンドだし、Pitchforkのベストトラック1位に輝いた「Oblivion」のGrimesもカナダの少女。インディーのトレンドもNYからカナダに移行しているのだろうか。踊れるテイストがなくストイックに冷たいこの手のグランジは、UKロックを聴いて育った自分にはあまり口に合わないが、7曲目「Wet Blanket」とか縦ノリで多いに盛り上がるのもたまには悪くない。
16位Bat For Lashes『The Haunted Man』 【イギリス(ブライトン):フォークトロニカ/オルタナティヴ】
かつては保育士だった彼女がビョークやトム・ヨーク、デヴィットバーン、カニエ・ウエストから絶賛されベックともコラボとは、くるところまで来たのに何故か日本では話題にすらならない。ルックスの良い女性ヴォーカルだと可愛いさ先行でスケールが小さくなってしまうことが多々あるが、Bat For Lashesは荘厳なヴォーカルとピアノ主体のメロディーがそうさせない。今作では特に荘厳な音楽はそのままにドラムに重厚感のある楽曲が多かったりストリングス多様した複雑な楽曲に空気を読まず無味なビートが割り込んだり、なんだか前以上にRADIOHEADに似てきた。最初に書いた「かつて保育士だった」という情報は特に深い意味はないが、友達の彼女がそういえば保育士だったのでその友達が「聴いてみようかな」って思うかもしれないから書いただけである。
5位Mouse On Mars『Parastrophics』 【ドイツ(ベルリン):ジャーマンテクノ】
いやー香川がいなくなってもドイツには注目ですな。やれ清武のクロスは世界一だ、やれ乾も前半5点は及第点だ、やれ高徳だ、長谷部だ、岡崎だ、宇佐美だ、でも個人的に最もドイツで注目しているのはモンキータウン。ゴリラ顔酒井宏樹のことではない。MODESELEKTORも所属する前衛テクノレーベルMONKEYTOWNだ。ドイツのエレクトロニカの雄MOUSE ON MARSの6年ぶりの新作もこのレーベルからのリリースという地点でゲッツェとロイスのコンビを手に入れたドルトムントのようなもの。とにかく若い。最近の変態電子音楽家HUDSON MOHWAKEに近いグリッチでおもちゃ箱をひっくり返したような音なのだ。でもHUDSON MOHWAKEのようなアイデアの羅列だけじゃなくってさすがベテラン。ドイツ産らしくミニマルで飽きがくる前に心地よくなってくるという仕掛け。
4位TNGHT『TNGHT EP』 【イギリス(グラスゴー):グリッチ/エレクトロニカ】
「RADIOHEADのトム・ヨークが別バンドやってるじゃん。数年前見たじゃんフジロックで」「ああ、レッチリのフリーとやってる」「ATOMS FOR PEACE」「ああ」「平和の原子力とか今の日本にまずいやつね」「来年2月にデビューアルバムだすらしい」「RADIOHEAD本体のが良くない?」「デビューシングル「Default」聴いた?」「聴いてない。っていうかアルバム出すのも知らなかったし」「聴いたほうがいいよ」「イレイザーみたいな感じ?」「全然違う。今最先端の打ち込みやってるから」「どんなの?」「今、自分の中で一番面白い打ち込みのアーティストがTNGHTっていうんだけど」「知らない」「そいつみたいな音楽」「知らんなー」「今さ、フライングロータス周辺が盛り上がってて複雑な組み合わせの打ち込みが評価を受けてるじゃん」「フライングロータス聴かないから」「いやだから何か複雑だから聴きにくいじゃん。ジャズとか入ってるから。でもTNGHTはシンプルな笑えるピコピコした電子音をひたすらドープな方向に鳴らしてるわけ」「またよくわかんないし何ドープって」「とにかく、ヘンテコだけどくっそダークで、なのに一聴しただけで耳に残る強烈なキャッチさを持ってんのTNGHTは。で、ATOMS FOR PEACEのデビューシングルがまさにそういう音使ってるわけ」「すごいじゃん」「やっぱすごいわトム・ヨークは。今一番面白い音楽を取り入れてる」
41位Akron / Family 『S/T 2:The Cosmic Birth And journey of Shinju TNT』
死後残った音源から関係者が作り上げたnujabesの新作。声遊びを不特定性の中で行ったSalyu×SalyuやDirty Projectors+Bjork。アプリ、データ、CDなどもはや形態にとらわれず販売し、ipadでの作曲も行ったBjork。ゴキブリを食べる衝撃的なPVから攻撃開始したTyler the creator。音楽という表現への試行錯誤がいたるところで見られた。まだこれといったものが生まれてはいないのだけれども。
【40位~31位】
40位Real Estate『Days』
39位Yelle『Safari Disco Club』
38位Panda Bear『Tomboy』
37位The Naked & Famous『Passive Me , Aggressive You』
ウィッチハウスの影響下で生まれたAustra、ゆらゆら帝国の後継者Ogre You Asshole、2011年現在のRadiohead、シューゲイザーリヴァイバルの中心The pains of being pure at heart。20位以内になるとさすがに今の音楽を中心に選んだなぁ。特にDRAKE。POPミュージックがついにアングラに追いついた格好よさ。まさか自分がDrakeとRihannaとの共作なんてビルボード臭い音楽聴くようになるとは。
10位Burial & Four Tet & Thom Yorke『Ego / Mirror』
9位Metronomy『The English Riviera』
8位Friendly Fires『Pala』
7位Shabazz palaces『Black Up』
6位Destroyer『Kaputt』
5位Atlas Sound『Parallax』
4位Gill Scott-Heron & Jamie XX『We’re New Here』
3位James Blake『James Blake』
2位tUnE-yArDs『Who Kill』
1位Oneohtrix Point Never『Replica』
Animal CollectiveのとかMetronomyとか(日本なら、ゆらゆら帝国の『空洞です』)が出てきた00年代後半の音楽が、新しくて格好よくて本当に最高すぎて、それに引きずられすぎた1年になった気がする。もう何でもいいから面白い音楽が聴きたいと極端な方向に走った結果、ダブステップにもチルウェイヴにもウィッチハウスにも満足できず。心臓音(ビートミュージック)に飽きてきて結果として、呼吸音みたいなOneohtrix Point Neverの『Replica』を新鮮な音楽だと興奮して聴きこんで結果1位に選んだ。正直こんな大衆受けしないアルバム1位に選んでどうかと思ったけど、今日Ele-king Vol.4買ったら小山田圭吾の今年のベストアルバム10枚の中にも入ってた!!だから良し!!収録曲の"Sleep Dealer"をPitchforkが「スティーヴ・ライヒのポップ・ヴァージョンと例えてた。興味がある人は是非。
7/29(FRI) 1日目 11:30-12:30 NATSUMEN @ ORANGE COURT 12:30-13:10 THE VACCINES @ GREEN STAGE 12:50-13:20 ソウル・フラワー・ユニオン @ WHITE STAGE 13:55-14:40 THE PAINS OF BEING PURE AT HEART@ RED MARQUEE 15:10-16:00 GRUFF RHYS @ RED MARQUEE 15:40-16:20 THE NEW MASTER SOUNDS @ WHITE STAGE 16:30-17:20 DEERHOOF @ RED MARQUEE 18:50-19:40 LEE SCRATCH PERRY WITH MAD PROFESSOR @ WHITE STAGE 19:20-20:30 ARCTIC MONKEYS @ GREEN STAGE 20:30-21:30 CSS @ WHITE STAGE 23:00-00:00 WASHED OUT @PLANET GROOVE 01:00-02:15 FOUR TET@ PLANET GROOVE 01:45-03:15 DARREN EMERSON @ ALL NIGHT FUJI 05:00-06:00 SYSTEM 7 @ ALL NIGHT FUJI
注目 ◎FOUR TET ◯THE PAINS OF BEING PURE AT HEART ▲ARCTIC MONKEYS
7/30(SAT) 2日目 10:20-11:00 OKAMOTO’S @ RED MARQUEE 11:00-11:40 CLAMMBON @ GREEN STAGE 12:30-13:20 FOUNTAINS OF WAYNE @ GREEN STAGE 14:00-14:50 あらかじめ決められた恋人たちへ @ FIELD OF HEAVEN 14:40-15:30 やけのはら @ DAY DREAMING 15:10-16:00 BEST COAST @ RED MARQUEE 17:30-18:30 BATTLES @ GREEN STAGE 18:20-19:20 KIMONOS @ RED MARQUEE 19:00-20:10 TODD RUNDGREN @ FIELD OF HEAVEN 20:30 21:30 DIGITALISM @ RED MARQUEE 22:10-23:30 CONGOTRONICS vs ROCKERS @ ORANGE COURT 23:00-00:00 80KIDZ @TRIBAL CIRCUS 02:15-03:45 JAMES HOLDEN @ TRIBAL CIRCUS 03:45-05:00 TAKKYU ISHINO @ TRIBAL CIRCUS
注目 ◎CONGOTORONICS vs ROCKERS ◯FOUNTAINS OF WAYNE ▲BEST COAST
7/31(SUN) 3日目 11:30-12:20 ハンバートハンバート @ ORANGE COURT 12:50-13:30 GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION @ FIELD OF HEAVEN 13:55-14:40 WARPAINT @ RED MARQUEE 15:40-16:30 NO AGE @ WHITE STAGE 16:40-17:40 加藤登紀子 @ ORANGE COURT 16:30-17:20 BEACH HOUSE @ RED MARQUEE 17:30-18:20 MOGWAI @ GREEN STAGE 19:20-20:20 YMO @ GREEN STAGE 20:30-21:30 ATARI TEENAGE RIOT @ RED MARQUEE 21:30-22:50 THE CHEMICAL BROTHERS @ GREEN STAGE 22:20-23:30 WILCO @ WHITE STAGE 23:00-00:00くるり @ SUNDAY SESSION 23:40-00:40 THE MUSIC @ GREEN STAGE 01:30-02:30 SOIL & PIMP SESSIONS @ SUNDAY SESSION
2010年発売されたアルバムの中でランクインさせなかったものにUNDERWORLDの新作がある。妙にキラキラしててUNDERWORLD的には新しいけど曲郡はださかった。一方のケミカルブラザーズは新しさを捨て99年の全盛期曲まんまな曲群をリリース。10年前の自分たちに回帰するという行為自体が一見後ろ向きだが、当時のような「誰もが盛り上がれる1曲」のない2010年に改めて彼らが作るような音楽が必要であると再認識させてくれた1枚。Hey Boy Hey Girl 2はあくまでも2だが2でも全然いい。
44位Nice Nice『Extra Wow』
WARP RECORDSの2010年の新人は頭がよすぎなエリートタイプなのか、VOREDOMSとANIMAL COLLECTIVEとBATTLESとGANG GANG DANCEのいいとこどりをしちゃえばと思って本当にそれが作れてしまう憎らしい末恐ろしい奴ら。でも上記の4バンドのアルバムのが好きなのは何故だろう。 ただ『SEE WAVES』って曲は彼らの名曲群とはれる、いいとこどりを完璧に成し遂げてる感あり。
43位Yearsayer『Odd Blood』
フジロック10出演のブルックリン勢の一角。柔軟だ。前作はGANG GANG DANCEみたく中東路線だった音が、DIRTY PROJECTORSが昨年リリースしたアルバムあたりから影響受けてかサイケでそれでいて削ぎ落とされたポップになってるし。MGMTの1STみたいな強烈なトラックはないものの、ブルックリン勢随一のポップミュージックに。わかりやすいしカッコいい。でもなんでだか耳に残りづらい。なぜだろう。
7年ぶりのMassive Attackの新作はEP聴いての予想通り、エレクトロニカ前面の前作よりもさらに前に回帰したビートミュージック。ただ、わかりやすいトリップホップにはならず毎曲ビートのパターンや質感が地味にかわってるからイチイチ印象に残るし楽しくなってくる、やばい。やはりMassive Attack最高。フジロック10のライヴも壮絶だった。お気に入りは4曲目Girl I Love You、1曲目Pray For Rain、10曲目Atlas Air。YMOの坂本龍一&高橋幸宏のREMIXも収録されている。
2010年話題になった新ジャンルの一つ、チルウェイヴ/グローファイにくくられるアーティスト。Animal Collectiveが流行らせたサイケな音とリヴァーブのかかったヴォーカルをとろけるようなゆったりしたBPMで聴かせてくれる感じ。その説明で全て事足りてまう、それが全てだ。09年発売のAnimal Collectiveの『Merryweather Post Pavillion』の様な音がまだまだ聴きたいと思うファン達(自分ももちろん!)の要望に答えつつ、同じじゃない。曲自体も粒ぞろいで、こういうアーティストが注目されている限りではチルウェイヴが批判の的に成る事もなかったように思うのだが。