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毎年恒例のマイベストアルバム選評。

新しい海外のロックバンドが本当に流行らない昨今。洋楽雑誌もロックフェスも15年前と同じでいまだにオアシス・レッチリ万歳。もちろん売り上げに直結するからいいのかもしれないが、若い世代は「洋楽ロック=おっさんの聴く音楽」と思ってしまって当然。自分たちのリアルタイム音楽ではないのだから。

最近個人的に最も危機感を感じたのがAUのLTEのCM。ELTのやつではない。DAFT PUNKの「One More Time」のメロディーに合わせて次世代通信を宣伝するあれだ。未来を表現するのに10年代の素晴らしい音楽群からではなく、なぜ10数年前のダンスミュージックを持ってこなければならないのか。自分もDaft Punkは好きだけど、新しいものを取り入れないで古いものばかりじゃ未来がない。衆議院選挙とそっくりだ。また自民党をひっぱりあげてきて「One More Time」なんてもう沢山。

ということで今年の50枚を選んだ。50位~31位はオススメというより「これもちゃんと聴いたけど上位には入れてない」的な辻褄合わせ感があるものが多いので、レビューは30枚にしぼった。でも正直1位のアルバムさえ聴いてくれたら、もう他のレビューなんてとばしてもいい。今年は1位のアーティストがぶっちぎりだったので。

ちなみによく聴いたシングルはこちら→Youtube

年間ベストアルバム50

50位Sigur Ros『Valtari』
49位POP ETC『POP ETC』
48位Japandroids『Celebration Rock』
47位Orbital『Wonky』
46位Godspeed You Black Emperor『Allelujah! Don't Bend! Ascend!』
45位Battles『Dross Glop』
44位Black Dice『Mr.impossible』
43位The Shins『Port Of Morrow』
42位Squarepusher『Ufabulum』
41位Clark『Iradelphic』
40位Clinic 『Free Reign』
39位Howler『American Give Up』
38位Ty Segall Band『Slaughterhouse』
37位Mac Demarco『2』
36位My Best Fiend『In Ghostlife Fading』
35位Here We Go Magic『A Different Ship』
34位Monolake『Ghosts』
33位Four Tet『Pink』
32位Fiona Apple『The Idler Wheel Is Wiser Than The Drive』
31位Vitalic『Rave Age』

30位Animal Collective『Centipede Hz』
【アメリカ(ニューヨーク):ロック(エクスペリメンタル/サイケデリック)】

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今作こそが2012年という時代の音楽を象徴しているのは間違いない。前作『Merryweather post pavillion』は09年以降のロックをサイケデリックでポップな方向へと決定づけ、かつてのフジテレビのコピーのような『面白くなければロックじゃない』という価値観を作り上げた。今作もそれは変わらない。サイケをさらに前進させ曲もポップだ。面白さに関しては文句のつけようがない。じゃあなぜ30位か。聴けば聴くほど何も残らない。完全に曲が現実と乖離してしまっていて、自分との共通性を見いだすことができない。これはショックだった。Animal Collective信者だった自分は数ヶ月新しい音楽を聴く行為を挫折してしまったぐらいだ。もっともそれが1位のバンドとの出会いへと導くことになるのだが。

29位Cero『My Lost City』
【日本(西東京):ロック(コンテンポラリー/エキゾチカ)】

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今年ランクインした日本のバンド2組のうちの1組。スティールパンとかマリンバみたいな多様な音を使ったエギゾチカバンドなんだけども、同じ方向性のVampire WeekendあたりのUSインディーに共鳴してなくて、むしろ醸し出す幸福感だったり日本人臭さが10年代のポストFishmansの筆頭というような印象を受ける。そこがいい。10年代の音楽でかつ日本の音楽だと実感できる数少ないバンド。今年フジロックに見に行けなかった事が本当に悔やまれる。フィールドオブへブンで聴くための音楽といっても過言ではないだけに。

28位METZ『METZ』
【カナダ(トロント):ロック(グランジ/オルタナティヴ)】

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青春時代ニルヴァーナを通過した人は特に必聴。USインディーが複雑な音楽が量産される中で反動としての起きたニルヴァーナ以前のグランジへの回帰現象。ストイックに直線的にカッコいいロックを演奏するカナダのバンド。そういえば今年の音楽にカナダは欠かせない。今年一のロックアンセム「The House That Heaven Built」のJapandroidsもカナダのバンドだし、Pitchforkのベストトラック1位に輝いた「Oblivion」のGrimesもカナダの少女。インディーのトレンドもNYからカナダに移行しているのだろうか。踊れるテイストがなくストイックに冷たいこの手のグランジは、UKロックを聴いて育った自分にはあまり口に合わないが、7曲目「Wet Blanket」とか縦ノリで多いに盛り上がるのもたまには悪くない。

27位Death Grips『Money Store』
【アメリカ(サクラメント):ハードコアパンク/ブレイクコア/ダブステップ】

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今年一番の問題作。ボアダムスだったり、PREFUSE73のスコットヘレンだったり面白いアーティストとよくコラボするドラマー「ザック・ヒル」が中心人物にいるオルタナヒップホップ。古藤の好物中華の胡麻団子とソフトクリームとキャラメルを合わせたような味濃いアルバム。ダブステップとブレイクコアとハードコアパンクが合体するということで、ラウドなものでもどんとこいな自分でも強烈すぎて最初拒否反応が出てしまった。慣れたらProdigyを20年進化させた音楽って具合に軽く聴けるようになるので、一聴では懲りずに聴きこむことオススメ。

26位Eli Walks『Parallel』
【日本(東京):テクノ(ニューエレクトロニック)】

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モードセレクターの来日公演を見た時、前座でライヴをやっててすごいよかった。日本人のトラックメイカーで、音はまんま海外の前衛テクノの主流というかCLARKまんまだったりするけど、主体としてわかりやすいシンセのメロディを入れてきたりするので耳に残る。日本の市場に入り込む余地は十分にある。去年年間チャートに入れた日本人トラックメイカーSerphが今年になってCMに楽曲提供したりで話題になったりしたので、Eli Walksも続いてほしい。

25位Electric Guest『Mondo』
【アメリカ(ロサンゼルス):ロック(エレクトロポップ/ソフトロック)】

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IKEAの北欧家具のようなバンドだ。エレポップなんだけどシンプルでレトロ。そんなレビュー書くぐらいだから北欧のバンドなんだろうな?ごめんなさいロサンゼルスのバンドです。でもそのレトロフューチャーなバンドサウンドの根源にナールズバークレーのプロデューサー「デンジャーマウス」が関わっていると知れば納得だろう。適度にお洒落で適度に前衛と中途半端だからか、海外の音楽雑誌や音楽サイトでの評価はなぜだか低い。

24位Kendrick Lamar『Good kid M.A.A.D City』
【アメリカ(ロサンゼルス):ヒップホップ】

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今年のPitchfork年間ベストアルバム第1位の作品。このロサンゼルスの25歳のラッパーがセールスと評価をともに勝ち取っているところが、国産の音楽ジャンル【ヒップホップ】を保持しているアメリカだからこそと言うべきか。今年のエレグラでフライングロータスがケンドリック・ラマーをプレイしたことが何よりその象徴かもしれない。個人的にはメアリーJブライジとの共作曲あたりの華やかな曲よりもストイックにラップを聴かす「Backstreet Freestyle」がクールではまる。

23位Frank Ocean『Channel Orange』
【アメリカ(ニューオリンズ):R&B】

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ラッパーのタイラーザクリエイターで有名なLAのヒップホップ集団「オッドフューチャー」の一員のR&Bシンガーのソロプロジェクト。今年最も全世界で評価されたアルバム。オーソドックスなR&Bがメインなんだけども要所要所メランコリックで繊細な印象が、自分のような斜にかまえがちな人間の心もがっちりつかんでしまう。ライヴ映像を探して見てみたらRadioheadのFake Plastic Treesをカバーしてた。どうりで!

22位Passion Pit『Gossamer』 
【アメリカ(ケンブリッジ):ロック(エレクトロポップ/シンセポップ)】

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PASSION PITが他のUSインディーバンドと一線を画すのは、パフューム大好き中田ヤスタカ大好き日本のエレポップ・アイドル大好きという彼らの独特なルーツの賜物だろう。前作収録で09年を代表する曲となった『Sleepyhead』のような超強力アンセムは今作にはないが、その分BPMもドラムも前作以上に変幻自在に、そして一貫して切ないメロディー。そして日本人にしか作れない様なロックをアメリカ人にやられてしまうこの現状もまた切ない。

21位Burial『Kindred』
【イギリス(ロンドン):ダブステップ】

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風営法でクラブで踊る事が規制されているというのに小学校ではダンスが必修科目になり、最もクラブミュージック界で敬意を払われているアーティストBurialがクラブでは全くプレイをしないアーティストでだったり、よくわからない時代だ。Burialの新作に関して謎で、何ら新しさを感じない例のいつものBurialである。ピッチを変更したソウルボーカル、強烈なダブ・エフェクト、金属的なサンプリング音。だが不思議な事に全く使いふるされた感じがしない。いつ聴いてもクールだで、まるで美術館に保管され、風化しないようになっているかのようなのだ。もしかしたら現場に出て行かない事で鮮度を保っているのかもしれない。

20位Lotus Plaza『Spooky Action At A Distance』
【アメリカ(アトランタ):ロック(ニューゲイザー)】

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DEERHUNTERのギタリスト、ロケットのソロプロジェクト。ここ数年自分にとってDEERHUNTERと、そのフロントマンでATLAS SOUNDとしても活動しているブラッドフォード・コックスの存在があまりに大きかった。何せマイ年間チャートで2009年Atlas Soundの『Logos』が1位、2010年Deerhunterの『halcyon digest』が5位、2011年Atlas Soundの『Parallax』が5位と年間の五本の指に常に挙げられてきたバンドなのだ。そのDEERHUNTERにもう一人天才がいるとは今作を聴いてはじめて知った。幻想的なリバーブとキャッチーなメロディー。気づけば全編夢遊病的内容の中毒になってしまう。ブラッドフォードコックスとロケット・パント。この両翼は、もはやトム・ヨークとジョニーグリーンウッドという二人の天才がいるRADIOHEADに勝るとも劣らない。

19位John Talabot『Fin』 
【スペイン(バルセロナ):テクノ(ポストバレアリック)】

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バルセロナのアーティスト。面倒くさいから某レコードショップのレビューを引用。「LindstromとBorder Communityのサウンドを融合させたかの様なサイケデリックでポップなポスト・スローモーション・ディスコ/バレアリック・サウンドを展開する彼の作品は、チルウェイヴやウィッチハウス等最新インディーモードにも通じるアトモスフィックでドリーミーなサウンドが融合した今最もアップデートされたポスト・バレアリック/ニューディスコサウンド!! 」カタカナ語が多いからわかりにくいか。個人的な感想を言うと、フジロックの常連さんとかでがっつりバンド見ないでグリーンステージの奥でシートしいてのんびりしてる人みたいな感じだ。レジャーに対する「遊ぶぞー」っていう初々しさがない感じのあれだ。それをダウナーなハウスでやってる感じだ。これがまた最高なのだ。

18位Flying Lotus『until the Quet Comes』
【アメリカ(ロサンゼルス):グリッチ/エレクトロニカ/ジャズ/ソウル】

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2010年のマイベストアルバムだった前作に比べ、一聴してのインパクトは薄い。それが退化なわけではなくって、むしろ完全に自分の作りたい音楽を作る方向にシフトしただけな印象。相変わらずジャズを主体としたクラブミュージックだけども、コズミックな世界観は前作以上に。何よりエレグラでのライヴが圧巻だった。ブースの前後に二枚の幕使って立体感だして、さらにそこに3D映像流して立体感だして、凄まじく圧倒的だった。そりゃあステージ演出に3D映像最大限に活用しなきゃ10年代じゃないってもの!ライヴ・演劇など舞台に携わる人には一度見ておく事オススメ。

17位The XX『Coexist』
【イギリス(ロンドン):ポストポップ/ポストダブステップ】

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相変わらず20歳になったばかりのロックバンドとは思えない暗さ。ラース・フォン・トリアー監督映画の様なメランコリックな世界観が漂う。何で映画に例えたんだろ。邦画『告白』でもThe XXの楽曲が使われたし、空間を漂うような音が映画的なのだろうか。あと前から思ってたがダウナーな男女ヴォーカルが交差するあたりが10年以上前にブランキージェットシティの浅井健一とUAが組んだAJICOってバンドになんとなく空気感が似てる。もちろんAJICOよりもよりメランコリックで使う音も少ないけど。今回は打ち込みを駆使した曲も収録だが、バンドが作る世界観は打ち込みだろうが生音だろうがほとんど変わらない。

16位Bat For Lashes『The Haunted Man』
【イギリス(ブライトン):フォークトロニカ/オルタナティヴ】

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かつては保育士だった彼女がビョークやトム・ヨーク、デヴィットバーン、カニエ・ウエストから絶賛されベックともコラボとは、くるところまで来たのに何故か日本では話題にすらならない。ルックスの良い女性ヴォーカルだと可愛いさ先行でスケールが小さくなってしまうことが多々あるが、Bat For Lashesは荘厳なヴォーカルとピアノ主体のメロディーがそうさせない。今作では特に荘厳な音楽はそのままにドラムに重厚感のある楽曲が多かったりストリングス多様した複雑な楽曲に空気を読まず無味なビートが割り込んだり、なんだか前以上にRADIOHEADに似てきた。最初に書いた「かつて保育士だった」という情報は特に深い意味はないが、友達の彼女がそういえば保育士だったのでその友達が「聴いてみようかな」って思うかもしれないから書いただけである。

15位Jack White『Blunderbuss』
【アメリカ(デトロイト):ロック(ガレージ/ブルース)】

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ホワイトストライプスのアルバムと何ら遜色ない。変わってほしいとも思わない。確かに轟音ギターが少なくなってよりカントリーでフォーキーな質感の楽曲は増えたかもしれないが、本質はあくまでもブルースロック。ジャックホワイトにはいつまでも泥臭いロックンロールを奏でていてほしい。もはや彼こそが00年代のロック史の殿堂第一号。今年一年間純粋なロックンロールバンドが見当たらない中、唯一ともいっていい良作。

14位Zazen Boys『すとーりーず』
【日本(東京):ロック(オルタナティヴ)】

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前作で打ち込みを通過したことで「何でもあり」なロックバンドへと変貌。それが10年代USインディー周辺のサイケの時代感とマッチ。これでナンバーガールのようなローファイ録音だったらまんまUSインディーになってしまうがそうはしてくれなくてありがたい。国産ロックが聴きたいんです。ゆらゆら帝国が解散した今、自分の中でZazen Boysへの期待の比重は本当に大きい。

13位Dirty Projectors『Swing Lo Magellan』
【アメリカ(ニューヨーク):ロック(エクスペリメンタル)】

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相変わらず好きだわ、このバンド。世界中の楽器をずらりと並べて「これ使って好きな音楽奏でてみて」って言われて演奏したような、音楽にジャンルや国境を取っ払って純粋に楽しい音を奏でてみようって意思が感じられる。一曲目でまったりした変拍子音楽が突然豹変したようにハードコアパンクになったりするところがPoint期のコーネリアスがアンビエントとヘビメタ融合させたのとすごい印象がかぶる。友達のバンドやってる女の子が「DIRTY PROJECTORSみたいな音楽目指してるから」と言ってたけど、ホントにこんなバンドが日本にいたらファンになるよ。

12位Django Django『Django Django』
【イギリス(ロンドン):ロック(ニューエキセントリック)】

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フジロック2012出演。ロックンロールが全く流行らないこの状況で出てきたイギリスのバンドもやっぱりというべきかUSインディーに右にならえで変な音。しかも西部劇とかカントリー風なところもあってアメリカの田舎くささが出ていて、ロンドンって感じがまるでしない。ただUSインディー周辺と決定的に異なるのはダンスロックであるところと楽しいところ。さすがロックンロールの国。

11位Ariel Pink’s Haunted Graffiti『Mature Themes』
【アメリカ(ロサンゼルス):ロック(エクスペリメンタル/フリーフォーク)】

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ホント最近の自分はわかりやすいキャッチな音楽を求めているのだなぁと実感。アリエルピンクと言えば10歳から曲作りをはじめ、500曲一貫して自宅録音で作り上げたという宅録エクスペリメンタルロックの元祖。宅録脱却直後の初のスタジオアルバムとなった前作が「名盤」と呼ばれていてあくまでもこのアルバムは「その次」である。でも、自分的にはわかりにくいローファイな前作に比べて聴きやすくて要所要所で見られるヘンテコな意図もわかりやすくくらえる今作を評価。アリエルピンクの社会復帰賛成!

10位Beach House『Bloom』
【アメリカ(ボルチモア):ロック(ニューゲイザー)/ドリームポップ】

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前作は甘美すぎて、会社に向かう途中聴いたらそのまま近くの公園に立ち寄ってしまいそうになる内容だった。それに比べたらポップなメロディになったので一般人としては大分聴きやすい。もっともコアなファンからは評価を落としそうな印象だけども。それにしてもBeach Houseは聴く環境を選ぶ。車を運転中に聴いてたら最高だったのに、自宅で聴いても全然よく聞こえない。これは運転中の評価。車中一人でキャッキャ言ってました。

9位Purity Ring『Shrines』
【カナダ(モントリオール):ドリームポップ】
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フジロック2012出演。カナダの21歳と24歳の男女デュオ。幼稚園児みたいな体系で、幼稚園児が着そうなドレス着て、幼児性のある跳ねる声の女性ヴォーカルが打ち込み中心の楽曲を歌うドリームポップ。童話の世界の住人のようなアーティスト然だが、音は生温かさとは対極。Dommune出演時にヒップホップセットを披露した通りルーツはアーバンであり、音もWashed Outのようなチルウェイヴな感覚があったり。ビョークっぽい?ああ、言われてみれば。

8位Spiritualized『Sweet Heart Sweet Light』
【イギリス(ラグビー):ロック(スペース/サイケデリック)】

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スピリチュアライズドというと97年に英NMEで『OK COMPUTER』を抑えて1位になった『宇宙遊泳』やシューゲイザーの始祖で前身バンドSpaceman 3のこともあってもはや伝説扱いされてるけど、やっていることは実はシンプル。間口は広くわかりやすく、じょじょに攻めてくる。「Hey Jane」から王道すぎるロックンロールナンバーかと思ったら8分もあって徐々にクラウトロック化していく。んでその曲が終わったらいい曲風のバラード。と思ったら・・・といった具合だ。サイケデリック音楽全盛の10年代以降だと、こういう広い間口から入ってこれる音楽は目立つ。

7位Schoolboy Q『Habits & Contradictions』
【アメリカ(ロサンゼルス):ヒップホップ】

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これぞ10年代だからこそ生まれてきたアルバム!!世界中で話題のソロシンガー「ラナデルレイ」のデビューアルバムが発売される前に彼女の楽曲をサンプリング。違法ダウンロードが横行し発売日以前にひいきのバンドのアルバム音源を聴ける光速時代らしいスタイルといえる。と思えば古典ポーティスヘッドもさらりとサンプリング。ヒップホップはロックに比べて形態の自由度が低い分、アイデアが重要だと改めて思わされた力作。

6位Sepalcure 『Sepalcure』
【アメリカ(ニューヨーク):ダブステップ/エレクトロニカ】

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マシーンドラム名義で活動するTravis Stewartと友人でもあり音楽プロデューサーのPraveen Sharmaによるユニット。SCUBA主宰レーベル・HOTFLUSHからのリリースということで、ダブステップなのかと思って聴いてみたらエレクトロニカが出自の彼らだけあって柔らかくはじける音を多様。トライヴァルな生音も入ったりソウルフルなヴォイスサンプルが入るんだけどもその選び方が丁寧。ああ、また当たり障りないこと書いて、全然良さを伝えられてない。このアルバムの素晴らしさを伝えるのってホントむずいんだよな。特にクセがないから。今年の上半期最も聴いたアルバムなのに。

5位Mouse On Mars『Parastrophics』
【ドイツ(ベルリン):ジャーマンテクノ】

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いやー香川がいなくなってもドイツには注目ですな。やれ清武のクロスは世界一だ、やれ乾も前半5点は及第点だ、やれ高徳だ、長谷部だ、岡崎だ、宇佐美だ、でも個人的に最もドイツで注目しているのはモンキータウン。ゴリラ顔酒井宏樹のことではない。MODESELEKTORも所属する前衛テクノレーベルMONKEYTOWNだ。ドイツのエレクトロニカの雄MOUSE ON MARSの6年ぶりの新作もこのレーベルからのリリースという地点でゲッツェとロイスのコンビを手に入れたドルトムントのようなもの。とにかく若い。最近の変態電子音楽家HUDSON MOHWAKEに近いグリッチでおもちゃ箱をひっくり返したような音なのだ。でもHUDSON MOHWAKEのようなアイデアの羅列だけじゃなくってさすがベテラン。ドイツ産らしくミニマルで飽きがくる前に心地よくなってくるという仕掛け。

4位TNGHT『TNGHT EP』
【イギリス(グラスゴー):グリッチ/エレクトロニカ】

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「RADIOHEADのトム・ヨークが別バンドやってるじゃん。数年前見たじゃんフジロックで」「ああ、レッチリのフリーとやってる」「ATOMS FOR PEACE」「ああ」「平和の原子力とか今の日本にまずいやつね」「来年2月にデビューアルバムだすらしい」「RADIOHEAD本体のが良くない?」「デビューシングル「Default」聴いた?」「聴いてない。っていうかアルバム出すのも知らなかったし」「聴いたほうがいいよ」「イレイザーみたいな感じ?」「全然違う。今最先端の打ち込みやってるから」「どんなの?」「今、自分の中で一番面白い打ち込みのアーティストがTNGHTっていうんだけど」「知らない」「そいつみたいな音楽」「知らんなー」「今さ、フライングロータス周辺が盛り上がってて複雑な組み合わせの打ち込みが評価を受けてるじゃん」「フライングロータス聴かないから」「いやだから何か複雑だから聴きにくいじゃん。ジャズとか入ってるから。でもTNGHTはシンプルな笑えるピコピコした電子音をひたすらドープな方向に鳴らしてるわけ」「またよくわかんないし何ドープって」「とにかく、ヘンテコだけどくっそダークで、なのに一聴しただけで耳に残る強烈なキャッチさを持ってんのTNGHTは。で、ATOMS FOR PEACEのデビューシングルがまさにそういう音使ってるわけ」「すごいじゃん」「やっぱすごいわトム・ヨークは。今一番面白い音楽を取り入れてる」

3位Grizzly Bear『Shields』
【アメリカ(ニューヨーク):ロック(エクスペリメンタル)】

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1位2位のアルバムはおとなもこどもも、おねーさんも聴いてもらいたいアルバムだが、これはむしろ音楽好き仲間たちに聴いてもらいたい。Animal Collectiveが切り開いた個性の時代は終わり、USインディーに残った没個性。自分は面白ければという音楽が無味に感じるようになって、でもMETZみたいなグランジに回帰した音楽を賞賛するほどニルヴァーナが体に染み込んではいない。その中で最も琴線に触れたのがこのバンド。音の強弱が特徴でクラシックの様なとにかく高度なロックという前作からの印象からは変わらないが、その専売特許をさらにひとつ上の段階に昇華させた印象。とにかく「ブラボー!」とクラシックコンサートの会場でスタンディングオベーションをするような今年度最も完成度の高いアルバム。

2位Grimes『Visions』
【カナダ(バンクーバー):ウイッチハウス/ドリームポップ】

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例えるならきゃりーぱみゅぱみゅがAnimal Collectiveと同じ機材を使って独学で作曲を覚え、自宅にひきこもってゾンビやドクロをモチーフにしたゴシックな楽曲を宅録し発表した具合。もっとも、きゃりーぱみゅぱみゅはステージに上げられている存在でレディーガガ同様商業的な00年代中期のエレクトロを今だにやっていて新しさがない。一方のGrimesは手作りだから10年代のウィッチハウスを吸収したエッジのある音楽で面白い。個人的に惹かれたのはバランスの取り方が絶妙でクレバーなところ。儀式めいた雰囲気やメタルバンドのようなゾンビをモチーフにした古くさいゴシック臭を持ちながらもアングラなイメージを持たれすぎるのを嫌い、前髪をざっくり切って可愛くしたり、曲のタイトルにハートマークを入れたりとあくまでも女の子としてのポップ要素を保持。アイドル全盛の日本。こういうDIYアイドルも現れてよいのでは。

1位Tame Impala『Lonerism』
【オーストラリア(パース):ロック(サイケデリック/ニューゲイザー)】
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今日本屋で何冊かロック雑誌の年間ベストアルバム特集をペラペラとめくったのだが愕然とした。ロック雑誌の1位が軒並みFrank Ocean(R&Bのアーティスト)。アメリカならR&Bもまあわかる。日本のロックファンが求めているものではない。アメリカの音楽サイトPitchforkという権威に合わせただけにしか思えない(pitchforkで今年最高の9.5点)。記事を読んでもこのアーティストを日本でも売っていきたい、みんなにも聴いてほしい感が感じられない。自分がロック雑誌の編集長だったら間違いなくTame Impala!

表紙もTame Impalaで表題も「Tame ImpalaがThe Beatlesを公開処刑」とかでいい。曲もヴォーカルもビートルズ級に美しくて、それでリボルバー期のビートルズを遥かに凌駕するサイケデリック。10年代のぐにゃぐにゃでそれでいてシューゲイザー入ってるサイケデリック。もっとも10年代のサイケなんてAnimal Collective以降どっさり転がっている。決定的なのはその曲の美しさだけども。だから「Tame ImpalaがAnimal Collectiveを公開処刑」でもいいのかもしれないけど、それだとアニコレ知らない人には?だし。ただ一つ言える事は、自分たち10年代を生きる人間には「The Beatlesのアルバムと並べても遜色ないどころか勝利してしまうような素晴らしいアルバムと出会える」ということだ。


最後に2013年の音楽を紹介。
来年2月発売のATOMS FOR PEACEのデビューアルバムからの一曲

Atoms For Peace - Default

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