『焼却炉行き赤ん坊』西村賢太・・・78点 | 『にゃんころがり新聞』

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 『焼却炉行き赤ん坊』西村賢太・・・78点




 『小銭をかぞえる』と同じような構成だ。ラストで彼女に悪態の限りをつくすという落ちだ。
 両作品に登場する彼女は同一人物のようだけど、やっぱりかわいそう。
 こういう男と絶対くっついちゃいけないという典型例。

 こうまでして好きだったのか。
 私ならすぐ別れる。
 でもこれは私小説だから、モデルとなる女性がいるはずで、今や芥川賞作家となっ た作者の作品は知名度も高く、これを読んだ本人は何と思うだろう?
 勿論実名では書いてない。
 でも、自分の恥だけ晒すのならまだいいけど、他人の知られたくない秘密までばらすやり口はどうかな~?とすこし思ってしまう。
 それが私小説だと言われればそれまでだけど、うまい具合にフィクション化して、実在の人物を傷つけないやり方もあると思う。


 本人は嘘一割をまぜて書くと言っていますが、もしかしたら、女性の妊娠できない体、というのは嘘かもしれない。

 でも、嘘っぱちを読んでいったい何になるんだろう? と思ってしまう

 嘘の中に真実がある、っていうのならいいと思うけど。


 それと、ある対談記事を読んだのですが、作者は自分の作品を悪く言われると、

相手をぶん殴りたくなるのだそうです。


 作品をオープンにしている以上、いろいろ言われるのは私は当たり前だと思う。

むしろ、議論される方がその作品も幸せなぐらいだと思う。




<あらすじ>

 私は長らく彼女がいなかったが、ようやくできた。
 はじめのうちは彼女と仲良くしていたが、彼女が避妊をしないでセックスしたがるので、奇妙に思っていたところ、ある日、何気なく覗いたゴミ袋の中から総合病院のレシートが見つかり、女が妊娠できるよう治療しているらしいことが分かる。
 また、それより前、女が犬を飼いたいと言い出したが、賃貸アパートのため飼えないことが分かると、犬のぬいぐるみが欲しいと言い出し、私はけっこうな値段でそれを女にプレゼントしてやっていた。
 私は妊娠ができない体質の女が気を紛らわせるためにぬいぐるみを赤ん坊代わりにしているのではないかと勘ぐる。

 そんなある日、女が手元を誤り、私が大事にしている古書を二度までも床に落としたことから私は激怒し女が持っていた犬のぬいぐるみを八つ裂きにし、二度と修復できぬようゴミ袋にマヨネーズなどと一緒にぶちまけ、女に悪態の限りをつくす。

   (『小銭をかぞえる』所収)