「好き好き大好き超愛してる。」・・・92点 舞城王太郎 | 『にゃんころがり新聞』

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ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

 

小説。作者は舞城王太郎。

恋人が死んでいくという、せつない話。笑いもあり、楽しんで読める。

本作品で芥川賞候補に。

中編です。
第一章は幻想的な話。
恋人の体内にASMAという寄生虫が巣くう。
ASMAは人体を少しずつ食べていくので、手術して除去しなければならないが、何度か手術しても、ASMAが恋人の体内を逃げ惑うせいで、恋人の体が無茶苦茶に荒らされるばかりで、50匹くらいいるASMAの数はあまり減らない。
「僕」は病院へ向かう道すがら不良3人組に襲われるが、逆に不良を退治する。警察に不良を引き渡してみると、そいつら不良が何人も通りすがりの人を襲ってきた連中だと分かり、「僕」は調布でちょっとしたヒーローになる。
不良のアジトである公園の公衆トイレを捜索してみると、そこは不思議な光景になっており、上下が普通の世界とは逆になっている。
天井から草が生え、地面に向かって花が咲いている。

病院の恋人のもとへ遅れて行くと、僕は何故こんなに遅刻したのかと恋人になじられる。

恋人が眠り込んでから、知らない女の子が勝手に病室に入ってくる。

女の子は天井に足をつけて歩いてきたので、僕はその女の子が不良のアジトで発見された女の子だと思う。

女の子はふわりと天井から降りてきて、不思議な言葉で僕の質問に答えたあと、恋人に体に手をかざす。

女の子が出て行ったあと、恋人の体内にいたASMAが全部光りだす。
ASMAが光を出すようになって、それまで居場所を探すのに大変だったが、ASMAが体の何処に潜んでいるのか容易に分かるようになる。

第一章はそこで話が終わっている。

第二章以降では、すでに「僕」の恋人は病気で死んでいる。
だけど設定が微妙に違っていて、恋人はASMAという寄生虫によって殺されたのではなく、体内で光る移動する蛍光灯により殺されたことになっている。

第一章が夢の中のデフォルメされた出来事のように読める。
第五章くらいまで話があるが、どれも女の子が死ぬ話で、それもおそらく僕が好きな女の子が死ぬ話になっている。

中にはエヴァンゲリオンのパロディみたいな話もあるし、そこでは僕が女の子を操り、神と戦わせる設定になっている。
またある章では僕は「夢荒らし」と対峙する。
夢荒らしが破けた夢から出て来て、人殺しをはじめるので、僕はそいつと対決する。

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 
 さてさて、このたび、にゃんくの書評集が本になりました!
 ブログ未発表のレビューがほとんどです。ブログ発表済みのレビューも、作品を読み直し、大幅に加筆修正しているものがありま
す。試し読みもできますので、お気軽にご覧下さい。
 
『小説道場』
 本書は、作家になりたいと考えているにゃんくが、体当たりで挑んだ作品の数々から得たものを、出し惜しみなく綴った闘いの記録でもあります。
 
 作品を書くことは、オリンピック選手などのアスリートたちの日々の訓練と同じ、とある作家は言いました。
 一文一文を練り上げ、構造を考え、バランスが悪ければ、また一から組み立て直す…。文章を綴ることは、簡単なように見えて、容易ではありません。
 選手たちには、合宿のような泊まりがけの訓練や、あるいは町道場など鍛える場があり、お互いに切磋琢磨しながら、自身の技を向上してゆけます。ところが、同じくらい大変な、作家になりたい人のための道場というのは、あまり聞いたことがありません(というか、ないでしょう、多分)。
 そこで、作家をめざす人のための道場で鍛錬する、というイメージで書いたのがこの書評集です。
 一週間で一作品群、三ヵ月でひととおりの訓練は終わります。
 もちろん、作家をめざすつもりのない人も、対戦試合を眺めているだけでも楽しめます。時には「このような読みもあるのか」とのサプライズもあるでしょう。
 皆さんも、作家志望者が真剣に取り組むこの「小説道場」に一緒に参加をしてみませんか?
 
 

 

『小説道場』目次

 

 

 

第一週 怪奇小説3本勝負

 

     坂口安吾『桜の満開の下』、『夜長姫と耳男』、『紫大納言』、       『青鬼の褌を洗う女』

第二週 リアリズム基本訓練
      志馬さち子『うつむく朝』、井岡道子『次ぎの人』、
      高倉やえ『ものかげの雨』
 
第三週 エンタメホラーで作風の幅をひろげる
遠藤周作『蜘蛛』
 
第四週 基本訓練 文学賞受賞作から文章力を学ぶ
     田中慎弥『共喰い』、前田隆壱『アフリカ鯰』、『朝霧のテラ』
 
第五週 戦争青春文学でテーマの大きな作品を書く
     シリン・ネザマフィ『白い紙』、『耳の上の蝶々』
 
第六週 奥義 風俗AV斡旋で人間の業の深さを知る
      野坂昭如『エロ事師たち』
 
第七週 あえて働かないことにより、見えた世界を描く
      葛西善蔵『子を連れて』
 
第八週 詩人から言葉の切れを学ぶ
      三木卓『砲撃のあとで』、『K』、『野いばらの衣』
 
第九週 童話で物語センスを鍛える
      アーノルド・ローベル『ふたりはともだち』、
      ファージョン『ムギと王さま』、『天国を出て行く』
 
第十週 漫才師の笑いのセンスを取り入れる
     又吉直樹『火花』
 
第十一週  私小説という圧倒的なリアリティ
        島尾敏雄『死の棘』
 
第十二週 外国文学で視野を広げる
        フィツジェラルド『冬の夢』、『お坊ちゃん』、
        ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
 
総仕上げ 歴史小説、自伝的小説で人間・おのれを見つめる
        井上靖『死と恋と波と』、『考える人』、『結婚記念日』、
      『波紋』、
『楼蘭』、『平蜘蛛の釜』、『しろばんば』、
      『信康自刃、』、『補堕落渡海記』
 

 

著者 : にゃんく
パブー
発売日 : 2015-05-17