試合のお話を少し。
ただの感想文です。
今季のSP、「序奏とロンド・カプリチオーソ」。
スワンでお馴染みの作曲家サンサーンスが、サラサーテのために作った曲です。なので、本来ヴァイオリン曲。そしてスペイン風味。
後にビゼーがピアノバージョンを編曲していますが、結弦さんのロンカプは、清塚信也さんが結弦さんのためだけに新たに編曲、演奏した唯一無二の一曲。
馴染み深いヴァイオリンのロンカプは、なんというか物憂げで哀愁を帯びた旋律のイメージが強く、ピアノバージョンでもそういう感じになるのかなと思っていました。
が、全然違った( ̄▽ ̄;)
結弦さんのロンカプは、やはり羽生結弦にしか出来ないロンカプでした。
良く言えば王道、悪く言えば使い古された曲。
今季はオリンピックシーズンであり、フリーが「和」の世界を体現するオリジナリティの強いプログラムであることを思えば、ショートは王道というのは、まあ定石。勝ちに行くなら、バランスや認知度は大事です。
でもね、結弦さんのロンカプは王道のナナメ上を行ってました。
新し過ぎる!!!
儚げとか物憂げとか、そっち系のイメージどこ行った?
こんな強そうなロンカプ、ありか!こういう解釈もありか!
結弦さんがピアノバージョンを選択したのもスゴイけれど、清塚さんのピアノがまたスゴかった。
結弦さんは「粒立ち」のことをお話ししていらっしゃいましたが、ヴァイオリンよりもピアノの方が、楽器の特性上一音一音の粒が際立ちます。(あくまでもドシロウトの私の感想ですけれど。)
どんな楽器でも基本は粒を揃えることが出来ないと、自在に音を操ることは出来ないのでしょうけれど。
粒を揃えるというのは、音の質を揃えることでもあります。私も子供の頃、ハノンを散々やらされました。
(ちょっと話が逸れました。)
上手く言えませんが、清塚さんの音の粒の種類というのか?その豊富さ豊かさ。一音一音が立ち昇って来るような感覚。
音楽を聞いて、音を拾って拾って拾いまくってぴたりとジャンプの着氷を決める。ステップを踏む。結弦さんのスケートにぴったりハマる感じがスゴイ。まるで結弦さんのスケート靴から音が立ち昇って来ているかのよう。
音ハメお化け←褒めてますw
始まった時は、確かに物悲しく切なげな雰囲気でしたが、だんだん音に力がこもって行き、結弦さんの滑りも儚げな柔らかな雰囲気から力強さが際立ち始めます。
冒頭の4Sを降りてからコンビネーションジャンプの手前辺りから曲調が変わって、スペイン風の情熱的な旋律になる。
スピンの後、更に力強さを増すピアノと共鳴するように熱を帯びるスケーティング、ステップ。
この辺りからが羽生結弦の真骨頂。
見る者を引き込み翻弄するような、吸引力。カリスマ性。
得意の3Aと回転速度の速いスピンに、釘付け。
からのキメポーズ。
何という凛々しさ、力強さよ!
あとはもう激情にまかせて思うままに舞う。
まさにカプリチオーソ(気紛れ)。
その世界に引き摺り込まれ、気紛れな情熱に翻弄される。
あれよあれよと言う間に巻き込まれて、いきなり迎えるフィニッシュ。
なんとも印象的なプログラム。
コロナ禍で一人、コーチもいない中、ひたすら先の見えない未来を手探りで探す。
平昌オリンピック以降、どれほど努力を重ねても報われない苦しさを味わい続けた。
長く暗いトンネルの中、一人出口を探して彷徨う。
そんな日を過ごして来て、それでもまだ自分の夢を諦めきれず、希望を掴もうともがき手を伸ばす。
暗闇の中に見えた小さな光は、4A成功への道だったのでしょうか?
それがなんなのかわからないけれど、結弦さんは、このプログラムで確かに何かを掴んだのだと感じました。
要するに、名作、神プロ✨✨