~似た者同士?~

「おじゃまします…ってなんじゃこりゃ!!」

久々にやって来た咲也君が七海ちゃんの部屋を見て、声を失った瞬間でした。

「えっへん( ̄^ ̄)その本棚、私が組み立てたんだよ、すごぃー?」

確かに、以前はなかった緑色の本棚が、はんだごてを与えたらすべてを溶かすレベルの七海ちゃんにしてはうまく組み立てられていた。しかし、力尽きたのか…はたまた涼風名物こたつむりんでも飼っているのかこたつは出したままになっていた。

「すごいな、うん…でもさ、おまえ…なんだこのぬいぐるみの量!?ベットの上寝るとこないじゃん!?」

「ふっ…あまいのにゃ、よーく、ベットの下を見るのだ!!」

「…長座布団にふかふかの毛布が敷いてあるな…」

ドヤ顔でそこに寝転がる七海ちゃん。つまり、ぬいぐるみにベットの上をとられたため、自身は床にふかふかの部分を作り出して寝ているらしい。
突っ込むべきか…頭を抱えていると…自分の横をポンポンと叩きながら

「結構気持ちいいんだよ~ほらー兄さんもごろごろしてみよ~☆」

「…お、確かに落ち着く~」

…簡単に納得させられてしまったのだった。
そしてなんとはなしに、無駄に狭い空間で二人揃ってごろごろしている。

「おーい、二人ともそろそろ準備しないと、また暁羅さんすね……って何やってんだよ…」

呆れた様子でごろごろしている二人を見下ろしながら黒崎さんが思い出したようにビニール袋を掲げる。

「あと、ほら七海にお土産。」

「やったー!!くーちゃん優しい、太っ腹だよ~!!」

「おまえ…まさかこうやって七海を手なづけてるんじゃないんだろうな」

ギロリと睨んでくる咲也君にちょっと身を引きながら、過去の例から考えてもどっちがだよ?と聞きたくて仕方がない黒崎さんだった。

「って、俺もお土産あったんだった…ほら、なな!」
「…前言撤回を求めたくなるよな…」

「やったー!!今日は咲也兄さんも太っ腹だよ、なんだろ、なんだろ~………あっ………」

反応しずらそうな声をあげた七海ちゃんに二人が目を向けると、二つの袋から出てきたのは全く同じ色の全く同じぬいぐるみだった。それだけでも気まずいというのに…

「…えへへ、実はこれ、私も…」

七海ちゃんがゴソゴソとベットの中から取り出したのはこれまた全く同じ色の全く同じぬいぐるみだった。
「ゲーセンで見て七海が好きそうだなぁって思って。」
「俺も、この色が一番可愛いと思ったんだよな~。」「私もだよ、頑張ってとったのふかふか~!!」

三個あっても七海ちゃんは嬉しそうだったが…なんとなく彼らが行ったであろうゲーセンが気の毒になった瞬間だった。

「どうすんの、これ?さすがに増えすぎだろ…」

「え、やだ!?可愛いから進撃のラスカル部隊にするぅ!!」

いっせいに転がってくる三匹のみどり色のラスカルを想像すると確かに可愛い。

「…確かに可愛いけどどうせまた箱からもったいなくて出せなくて大変なことになるだろ?」

そんな感じで、狭くなってしまった部屋を見渡しながら咲也君がため息をつく。
「…さすがに、俺はひきとれないしなぁ…」

以前、駅前から帰れなくなった七海ちゃんから大量のキュゥべえやらを引き取ったために部屋が「契約してよ!!」祭り状態になった黒崎さんが苦しそうに呟く。ちなみに、以外と彼はこういうのが好きなので、本心では一体くらいは欲しいとか思っていたりもする。

チャララランチャチャチャララララーチャチャンチャチャラララー♪

「げっ…携帯鳴ってる!!この音は…」

「「暁羅お父さん!?」」

…そう…本日は、元団長とか、誘拐魔とか…そうじゃなくて「お父さん」と呼ばないと…いい年になった彼が泣いてしまう日だった。
「…いいこと思い付いた」「…私も」
「…たぶん、俺も…」

無駄な時間を過ごしたために、準備に出遅れた三人の子供たちはそれぞれのラスカルに自分のイメージカラーのリボンをまきはじめた。


~~~~~~

「「「暁羅お父さん、いつもありがとう!!これを俺(私)たちだと思って大切に育ててください!」」」

珍しく、息が揃いすぎている咲也、黒崎、七海のトリオがラスカルをそれぞれの胸に抱いている。


「おぉ、なんや三人でおそろいにしたんか?仲良しやなぁ~可愛いやないか。おまえらの名前つけて可愛がるで!」

嬉しそうにそれぞれのラスカルに頬をすりよせる暁羅お父さん…果たして暁羅お父さんがキラキラきらめく満面の笑顔の下に隠された三人の子どもたちのあまりにも似すぎてしまっていた本心に気がつけたかどうかはまた、別のお話しだったりしたりする。


その後、パーティの傍らでは

「とりあえず…ゲーセンでなんかとりたいときは話し合うようにしようぜ…」

「了解したなり…」

「はぁ…なんでかぶるかねぇ…」

そんな密談も交わされていたとかいないとか。