~犯人は誰だ!?容疑者①編~

さて周りも真っ暗を通り越した深夜二時、咲也君の捜査はいよいよ佳境に入ってきました。犯人を追いつめるための一人一人との事情聴取が始められたのです。


「さぁ、七海・・・ゆっくりあの時になにをしていたかを話してみろ。終わったら腕枕でもなんでもしてやるからな。」

まず最初の事情聴取は満場一致で容疑者としてあげられてしまった七海ちゃん。眠いと連呼していたのにも関わらずミーティングルームのとなりにある個室へと連行されていきました。本人は眠さがピークをこしたためになんだかいつも以上に頭の中身がお花畑を通り越してぽわぽわしています。

「腕枕より・・・はらどけー・・・うー・・・わかりました白状します・・・ねむぃです。」

はらどけー?もはやなんの白状をしているのかは果てしなく謎でした。
咲也君はため息をつきながら、少しずつなにかを引き出すために質問を続けていきました。

「あの時・・・一番にきたのは七海だったよな。」

「うにゅー。」

「その時に・・・誰かをみたか?」

「う・・・にょー。」

「そうか、じゃあおまえはなんにも見てないんだな。」

「にゅ・・・」

・・・もはや言葉にもなっていないようなこの会話がきちんと通用しているのはもはや長年一緒に過ごした日々のたわものとしか言いようがありません。二人には言葉なんていらないのかもしれません。

「じゃあ、話をかえるか・・・盗むとしたら、俺と太陽のどっちがいい?」

本当に変わりすぎです。もはや「犯人」ではなくてちょっと太陽君と仲が良すぎることに不安になっていた咲也君からの「浮気調査」になっているのでした。

「・・・むしろ・・・黒崎さん・・・」

ちなみにこの何気ない発言が数年後の悲劇へとつながっていくことなど、まだ誰も気がついていなかったのでした。

「とりあえず・・・黒崎は一回しっかりとしめておくか。」

「おー・・・しめしめ・・・るん。」

もはや思考能力が完璧に停止した七海ちゃんの一言により、なにかあらたな事件がおこりそうです。全力で黒崎さんに逃げてくださいっと言いたくなるような状態でした。
「・・・ちなみにななちゃんの今日の下着の色は?」

完璧睡眠モードにはいりつつあるのでこれをきにどうどうとセクハラをしてみることにしたお兄さん。

「うー・・・はいてな・・・い・・・」

「マジか!?」

「・・・うっ・そぴょーん・・・にははは。」

勢いよく立ち上がった後に勢いよくまたテーブルに頭をぶつけた咲也君でした。
今回に関しては可愛い妹を疑ったんですから自業自得ですよ。

「・・・次のやつにいくか。」

そのまま完璧に眠りに落ちた七海ちゃんのことはそのまま無視したまま、咲也君は次の「容疑者」を呼ぶことにしたのでした。
ちなみに彼はいまだにタオルを巻いたままの完璧な変質者のままだったのでした。

「・・・けーさつ・・・兄さ・・・ん・・・へーん・・・たー・・・」

七海ちゃんの途切れ途切れの寝言こそがまさに今、わかる最大の「真実」だったのでした。

「俺も眠いっすよー。」
ちなみに一言も話さなかったのですが、かわいそうなことに太陽君もずーっとそこにいたのでした。