~スパルタん~
ホワイトデーを目前として、涼風男子が珍しいことに体育館で練習をしています。スピードが早い組と体力的に厳しい組で、早くも調和がとれずにいます。
手拍子をしながら、カウントを数える藍音さんの目が変に血走っていたり…
歌の音程をはずすと容赦なく、ダメ出しをする渚さん。
瞬間瞬間の表情や指先にまで、厳しくチェックをいれる亜水弥さん。
ピアノで伴奏をこなす明音さん…と女性陣のやる気も並み半端ではありません。
ちなみに…『ベア◯リーチェに屈伏してる戦人』
『ゴスロリのアル◯君』
『KAT-T◯N』
『タブル◯』
などと、あまりにも無理難題なテーマを提案し続けた七海ちゃんは今回発言権があまりなく、ちょっぴりいじけていたりします。
「…っと、暁羅!!お前そこのタイミングズレてるだろ?」
ちなみに容赦のなさなら、黄色を担当している咲也君もかなりのものです。
彼は、彼なりのかっこよさに対して絶対に妥協しないナルシストっぷりを久しぶりに発揮しています。
「む…無理やっ…おま…あらふぉ…の父親に…んな…無茶を…」
思わず、座り込んでしまい息も絶え絶えな暁羅さん。
「…年齢を言い訳にすんな!」
「せ…せやけど…な?」
下手したら干支一周を越えるくらいのジェネレーションギャップがあるわけで、筋肉痛が遅れてくる☆なお年頃は隠せないのでした。座り込んだ暁羅さんを見下ろす咲也君。
…まわりのメンバーは、ここぞとばかりに休憩を堪能しています。
「っ…甘ったれたこと…言うな!!」
…拳を握りしめ、顔を伏せた咲也君。
一瞬、彼の声が響き渡り空気が止まりました。
「暁羅…俺はあんたの背中を…追ってきたんだ!!なのに、勝手に…勝手にこんなふうに…」
絞り出したかのような声にきつく握りしめた手を心配して、七海ちゃんが咲也君に駆け寄ります。
まわりの団員たちも、呼吸をすることを忘れてしまったかのようにその様子を見守っています。
「こんなふうに…俺に追い越されないでくれよ!!『父さん』!」
「さ…咲也…今…なんて」
呟いた言葉。
「俺は…まだ『父さん』の背中を追いたいんだよ!!」
角度的にも完璧に、毛先の動きまでも計算したかのような印象すら受けるように振り返り、やや潤んだ視線で暁羅を見つめています。
交錯する視線。
ー『父さん』ー
昔あったチワワと目があったCMみたいになっている暁羅さん。
「さ…咲也…おおきに…よし!!みんな、張り切ってやるでー!!」
ごしっと、目を袖でぬぐいながら暁羅さんが立ち上がります。
咲也君の歌う主旋律に、暁羅さんの声が重なる瞬間。
「声に集中すんな!!ダンスのテンポ遅れてる!!」
「お…う!」
「今度は、高音部外れてる!!重心もっと前にして、声だせ!」
「…お…ぅ」
「ダメだ!もう一回!!」
「……ぅ」
まさしく、スパルタ。
「…えっと、あれほっといていいんすかね?」
完璧に二人の世界に入り込んでいる姿を見ながら、渡されたドリンクを口にして太陽君が苦笑いをしています。
「…きぶ…あっぷ」
珍しく、表役をやることになり、疲れきっていた往人さんは床に転がりながら、絶対に声をかけるなよ!と念をおしています。
「ごめん…俺も限界みたいだ」
ただでさえ白い珱稚先生の顔は、最早赤くなり、青くなりを繰り返しています。いつもなら、暁羅さんを見捨てることがない彼すらも…立ち上がることを諦めました。
「はい、太陽兄さんも、新しいタオルどーぞ!」
「サンキューっす~咲也、張り切ってるっすね~。」
「うん!兄さん水をえた秋刀魚みたいになってる!」
「…なぜに秋刀魚なんすか?」
雑用係になった七海ちゃんがタオルやらを配っているとカラッと何かが落ちる音がしました。
「?七海…これ…めぐす?」
何気なく拾ってしまった太陽君にしーっと、人差し指をたてて七海ちゃんは落下した目薬を回収します。
「…なるほどっす。」
なんとなく、さっきの咲也君の潤んだ瞳の意味を…知ってしまった太陽君は、苦笑いを浮かべながら頑張る父さんを見つめたのでした。
~~~
練習後。
「兄さん、お疲れ様~」
さすがに疲れたのか、床に座って柔軟体操をしている咲也君の背中に飛び付く七海ちゃん。
「おー…七海、さっき太陽にちゃんと見せたか?」
「もちばちだよ、兄さん♪」
にししっとドヤ顔で、目薬を取り出す七海ちゃん。
よくやった!とよしよしと頭を撫でる咲也君。
「でも…兄さんも、素直じゃないね…こんな面倒なことしちゃって」
「なんのことだー?」
「父さんを思って、本当に泣いてたくせに…にょわ!」
最後らへんで、急に立ち上がった咲也君に巻き込まれてころんと転がった七海ちゃんに月明かりをバックに怪しく微笑み、口元で
『秘密』
と合図をされたので、素直じゃない咲也君の本当の涙のわけは…まさしく秘密となってしまったのでした。
~~~
「父さん!!…父さんやで!!あの咲也が俺を…」
「よ…よかったっすね!!それはともかく、電柱から離れてくださいっす!」
酒を飲んでいないのに、そこらへんの酔っぱらいを軽く越えるテンションで電柱に満面の笑みでしがみつく暁羅さんを前に、心中穏やかでない太陽君なのでした。
ホワイトデーを目前として、涼風男子が珍しいことに体育館で練習をしています。スピードが早い組と体力的に厳しい組で、早くも調和がとれずにいます。
手拍子をしながら、カウントを数える藍音さんの目が変に血走っていたり…
歌の音程をはずすと容赦なく、ダメ出しをする渚さん。
瞬間瞬間の表情や指先にまで、厳しくチェックをいれる亜水弥さん。
ピアノで伴奏をこなす明音さん…と女性陣のやる気も並み半端ではありません。
ちなみに…『ベア◯リーチェに屈伏してる戦人』
『ゴスロリのアル◯君』
『KAT-T◯N』
『タブル◯』
などと、あまりにも無理難題なテーマを提案し続けた七海ちゃんは今回発言権があまりなく、ちょっぴりいじけていたりします。
「…っと、暁羅!!お前そこのタイミングズレてるだろ?」
ちなみに容赦のなさなら、黄色を担当している咲也君もかなりのものです。
彼は、彼なりのかっこよさに対して絶対に妥協しないナルシストっぷりを久しぶりに発揮しています。
「む…無理やっ…おま…あらふぉ…の父親に…んな…無茶を…」
思わず、座り込んでしまい息も絶え絶えな暁羅さん。
「…年齢を言い訳にすんな!」
「せ…せやけど…な?」
下手したら干支一周を越えるくらいのジェネレーションギャップがあるわけで、筋肉痛が遅れてくる☆なお年頃は隠せないのでした。座り込んだ暁羅さんを見下ろす咲也君。
…まわりのメンバーは、ここぞとばかりに休憩を堪能しています。
「っ…甘ったれたこと…言うな!!」
…拳を握りしめ、顔を伏せた咲也君。
一瞬、彼の声が響き渡り空気が止まりました。
「暁羅…俺はあんたの背中を…追ってきたんだ!!なのに、勝手に…勝手にこんなふうに…」
絞り出したかのような声にきつく握りしめた手を心配して、七海ちゃんが咲也君に駆け寄ります。
まわりの団員たちも、呼吸をすることを忘れてしまったかのようにその様子を見守っています。
「こんなふうに…俺に追い越されないでくれよ!!『父さん』!」
「さ…咲也…今…なんて」
呟いた言葉。
「俺は…まだ『父さん』の背中を追いたいんだよ!!」
角度的にも完璧に、毛先の動きまでも計算したかのような印象すら受けるように振り返り、やや潤んだ視線で暁羅を見つめています。
交錯する視線。
ー『父さん』ー
昔あったチワワと目があったCMみたいになっている暁羅さん。
「さ…咲也…おおきに…よし!!みんな、張り切ってやるでー!!」
ごしっと、目を袖でぬぐいながら暁羅さんが立ち上がります。
咲也君の歌う主旋律に、暁羅さんの声が重なる瞬間。
「声に集中すんな!!ダンスのテンポ遅れてる!!」
「お…う!」
「今度は、高音部外れてる!!重心もっと前にして、声だせ!」
「…お…ぅ」
「ダメだ!もう一回!!」
「……ぅ」
まさしく、スパルタ。
「…えっと、あれほっといていいんすかね?」
完璧に二人の世界に入り込んでいる姿を見ながら、渡されたドリンクを口にして太陽君が苦笑いをしています。
「…きぶ…あっぷ」
珍しく、表役をやることになり、疲れきっていた往人さんは床に転がりながら、絶対に声をかけるなよ!と念をおしています。
「ごめん…俺も限界みたいだ」
ただでさえ白い珱稚先生の顔は、最早赤くなり、青くなりを繰り返しています。いつもなら、暁羅さんを見捨てることがない彼すらも…立ち上がることを諦めました。
「はい、太陽兄さんも、新しいタオルどーぞ!」
「サンキューっす~咲也、張り切ってるっすね~。」
「うん!兄さん水をえた秋刀魚みたいになってる!」
「…なぜに秋刀魚なんすか?」
雑用係になった七海ちゃんがタオルやらを配っているとカラッと何かが落ちる音がしました。
「?七海…これ…めぐす?」
何気なく拾ってしまった太陽君にしーっと、人差し指をたてて七海ちゃんは落下した目薬を回収します。
「…なるほどっす。」
なんとなく、さっきの咲也君の潤んだ瞳の意味を…知ってしまった太陽君は、苦笑いを浮かべながら頑張る父さんを見つめたのでした。
~~~
練習後。
「兄さん、お疲れ様~」
さすがに疲れたのか、床に座って柔軟体操をしている咲也君の背中に飛び付く七海ちゃん。
「おー…七海、さっき太陽にちゃんと見せたか?」
「もちばちだよ、兄さん♪」
にししっとドヤ顔で、目薬を取り出す七海ちゃん。
よくやった!とよしよしと頭を撫でる咲也君。
「でも…兄さんも、素直じゃないね…こんな面倒なことしちゃって」
「なんのことだー?」
「父さんを思って、本当に泣いてたくせに…にょわ!」
最後らへんで、急に立ち上がった咲也君に巻き込まれてころんと転がった七海ちゃんに月明かりをバックに怪しく微笑み、口元で
『秘密』
と合図をされたので、素直じゃない咲也君の本当の涙のわけは…まさしく秘密となってしまったのでした。
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「父さん!!…父さんやで!!あの咲也が俺を…」
「よ…よかったっすね!!それはともかく、電柱から離れてくださいっす!」
酒を飲んでいないのに、そこらへんの酔っぱらいを軽く越えるテンションで電柱に満面の笑みでしがみつく暁羅さんを前に、心中穏やかでない太陽君なのでした。
