「第何回かわからんけど…福を呼び込むための鬼退治や~!」
「「おー!!」」
寒さに震えながら…なぜか雪のふる駐車場に集まるイベント大好きな涼風団員たち。
今日も静かな街のどこかでこっそりと恐怖のイベントが開催されるのです。
「寒みぃから早くやろうぜ…今年の鬼は誰だよ?」
「そんなこといってもなんだかんだで律儀に東京から帰ってくるっすよね。」
めんどくさそうにしながらも、豆を握っている咲也君を太陽君がからかっていたりします。満更でもないのはつくづく『家族行事』を咲也君が大切にしているからです。でも、今回は…さらにもう一つ心配があるのです。
「まぁ…危険な行事だしな。」
「…確かに…鬼だけは勘弁っす。」
二人揃ってため息をつきます。当たり前ですが、このメンバーが集まってまともな節分が行われるわけがありません。
…たかが豆。
…されど豆。
恵方巻きではないけど、一心に食べている信也君はさておき、それぞれに鍋ふたなどを装備しています。
涼風の力がプラスされたなら、なんでもない行事もなにかが起こるのがお約束です。
「今年の鬼は…今から雪合戦をして、中にはいっている赤いペイントが見事にヒットした人やで!」
よくみると暁羅さんお手製の雪玉があたりにはたくさんおいてありました。
父さんが夜なべをして作ったんや…と迷惑きわまりないアピールまでしています。
早い話、鬼をやるとひどいめにあうため、誰も鬼役をやりたがらなくなったためなんとか楽しく鬼を決めよう!ということらしく、その雪玉のうちに赤いペイントが仕込まれたものがあり、それに当たってしまった人が、はえある今年の生け贄となるそうです。
「無駄に…めんどくせぇ」
節分の前に体力勝負な雪合戦をするという事態に咲也君は多少げんなりとしていました。
「なんなら、咲也が鬼をやってもいいんやで?」
べちょ!
次の瞬間に暁羅さんの顔に、見事に雪玉がクリーンヒットしたのでした。
「…ちっ。ただの雪玉か。」
過去に鬼になって、真面目に外に閉め出されたり、元高校球児の豆をぶつけられたり、ウインドミルで豆をバラマク妹をとめたり、年の数を軽く飛び越える豆を食べさせられたり…様々な思い出から先手をとって投げつけたのでした。
「ふ…まぁ、ええ…せっかくの雪も楽しまなあかんからな…鬼決め対決スタートや!…主に咲也をねらえー!」
顔の雪をはらいもせずに、雪玉をつかみながら高らかに開会宣言。
「マジかよ!?きたねぇ!」
「問答無用や!」
先に手をだした咲也君への仕返しもかねて、それを合図に雪玉が飛び交い始めました。しかし、持ち前のたぐいまれな反射神経を発揮しはじめて咲也君にはなかなか当たらない。
その内、誰に誰のが当たっているのかわからないくらいに、白熱し始めました。
「…大人しく…あたってください…」
「これは、譲れないんだよ、だよ!!」
「あ!可愛い魔女っ子!」「…なに!?」
「うっそ~!」
「寒い…寒い…寒い…死ぬ…こたつ…」
「変化球っす!!」
「打ち返させてもらう!」
白熱している団員たちを横に見ながら、七海ちゃんは一人雪玉をころころと転がしていました。こうなった時に、自分が狙われることはほとんどないため、大雪も楽しまなきゃ損!とばかりに勝負がついたら遊んでもらう準備に取りかかっています。
「雪だるま~雪だるま~♪」
年がいもなく雪だるまやかまくらを作るために咲也君が帰ってきてくれるのを楽しみにしていたのです。
大きくなりすぎた雪玉がなかなか持ち上がりません。仕方なく、立ち上がって手伝いを頼もうとした瞬間、何かが視線にはいりこみました。
それがなにかを理解するのは容易かったのですが…
いけない!?よけられ…
「七海!!」
「きゃ!!」
ぐいっと体を引き寄せられ、誰かに抱き締められたのを感じた次の瞬間、真っ白な雪のかけらがハラハラと舞ってきました。舞い散る桜のように、二人を包み込みます。
でも、それがいつからか…赤に染まっていくのです。
「え…え…」
どうやら、流れ弾から咲也君が身をはって助けてくれたようなのですが…ミラクルなことに彼が腕ではじいた雪玉が、キレイにくだけて白いかけらとなって幻想的に舞ったのです。
それだけなら…ロマンティックだったのですが…
「赤い…インク」
「…ってことは…」
二人はキョトンと雪とインクに染まってしまったお互いの姿をみて、そう呟いたあとに…背後から嫌な気配を感じて振り返ったのでした。
「今年の鬼は…咲也と七海や!」
「イヤー!!」
「勘弁してくれよ!!」
二人の嘆きが許されるような涼風ではなく…手に豆を隠しながら笑みを浮かべた団員たちが近寄ってくるのでした。
「に…兄さん!あれだよ!鳩!!鳩出して!!」
「そ、そんな昔のインチキ手品を今さらやれって言われても…」
あわてふためく。
とりあえず、気持ち咲也君が七海ちゃんを庇うように前に立ちます。
「鬼は~外だよ、だよ~」「ひぃぃ…!」
「さっきの雪玉の恨みや…咲也には赤の全身タイツもあるからな」
「全身タイツってはじめから、俺を鬼にする気じゃねぇか!?暁羅、大人げないぞ!」
「…七海には…ラムちゃんがある…」
「なぜに!?似合わないし、なにより寒い!!それ、絶対に寒いよ!?」
豆がパラパラと投げる準備をされています。
なんとなく…瞳のハイライトが消えているような気がします。
泣き出しそうな顔をした七海ちゃんの手を決意を決めた咲也君が握りしめました。
「しかたない…逃げるぞ!!」
「あいあいさ~!」
即座に七海ちゃんを抱き抱えて逃走を図る咲也君。 それを追いかける他の団員。
「暁羅さんこんなデッカイのまで作ってたのか…なら使わないとだよな!どっこぃしょ~いち!」
それに気がついたときには遅かった。間抜けな掛け声とともに七海ちゃんが作っていた雪だるまの片割れを黒崎さんが、投げつけてきたのでした。
視界がまた真っ白にそまる。
「な!?」
「あー私のー」
悲痛な叫び。
よく投げつけたな…としか言えないデカさ。
もちろん、避けることはかなわず、加速した足も止まらず…
重なる悲鳴。
「おー…見事な衝突事故になったな。」
「…玉突きですね。」
離れた位置で見ていた珱稚さんと渚さんは冷静に、実況していたのでした。
雪だるまの片割れを投げた黒崎さんに突撃した咲也君と七海ちゃん。そこに更に豆を抱えた団員たちがなだれ込んでいったのでした。。咲也君が潰さないように七海ちゃんを支えているのがかろうじてわかるのですが、一番下の黒崎さんの安否は不明です。
「下手に動いたら…セクハラになります…」
「見事なからまりだな。」
もはや、誰から動いたら助かるのかもわからずに団子状になった団員たちに苦笑いをしながら
「…助けにいきますか?」
「…そうですね」
「滑ったら、焦らず騒がず…」
「「ドカンと行こう!」」
昔、暁羅さんが作った標語を二人同時に呟いて、笑いながら救出へとむかったのでした。
黒崎さんを掘り出すために頑張っていた横で、早くに脱出した信也君がひそかに雪だるまも完成させて
「…だるま…っと。」
と楽しそうに笑っていたのも、お忘れなきよう。
「「おー!!」」
寒さに震えながら…なぜか雪のふる駐車場に集まるイベント大好きな涼風団員たち。
今日も静かな街のどこかでこっそりと恐怖のイベントが開催されるのです。
「寒みぃから早くやろうぜ…今年の鬼は誰だよ?」
「そんなこといってもなんだかんだで律儀に東京から帰ってくるっすよね。」
めんどくさそうにしながらも、豆を握っている咲也君を太陽君がからかっていたりします。満更でもないのはつくづく『家族行事』を咲也君が大切にしているからです。でも、今回は…さらにもう一つ心配があるのです。
「まぁ…危険な行事だしな。」
「…確かに…鬼だけは勘弁っす。」
二人揃ってため息をつきます。当たり前ですが、このメンバーが集まってまともな節分が行われるわけがありません。
…たかが豆。
…されど豆。
恵方巻きではないけど、一心に食べている信也君はさておき、それぞれに鍋ふたなどを装備しています。
涼風の力がプラスされたなら、なんでもない行事もなにかが起こるのがお約束です。
「今年の鬼は…今から雪合戦をして、中にはいっている赤いペイントが見事にヒットした人やで!」
よくみると暁羅さんお手製の雪玉があたりにはたくさんおいてありました。
父さんが夜なべをして作ったんや…と迷惑きわまりないアピールまでしています。
早い話、鬼をやるとひどいめにあうため、誰も鬼役をやりたがらなくなったためなんとか楽しく鬼を決めよう!ということらしく、その雪玉のうちに赤いペイントが仕込まれたものがあり、それに当たってしまった人が、はえある今年の生け贄となるそうです。
「無駄に…めんどくせぇ」
節分の前に体力勝負な雪合戦をするという事態に咲也君は多少げんなりとしていました。
「なんなら、咲也が鬼をやってもいいんやで?」
べちょ!
次の瞬間に暁羅さんの顔に、見事に雪玉がクリーンヒットしたのでした。
「…ちっ。ただの雪玉か。」
過去に鬼になって、真面目に外に閉め出されたり、元高校球児の豆をぶつけられたり、ウインドミルで豆をバラマク妹をとめたり、年の数を軽く飛び越える豆を食べさせられたり…様々な思い出から先手をとって投げつけたのでした。
「ふ…まぁ、ええ…せっかくの雪も楽しまなあかんからな…鬼決め対決スタートや!…主に咲也をねらえー!」
顔の雪をはらいもせずに、雪玉をつかみながら高らかに開会宣言。
「マジかよ!?きたねぇ!」
「問答無用や!」
先に手をだした咲也君への仕返しもかねて、それを合図に雪玉が飛び交い始めました。しかし、持ち前のたぐいまれな反射神経を発揮しはじめて咲也君にはなかなか当たらない。
その内、誰に誰のが当たっているのかわからないくらいに、白熱し始めました。
「…大人しく…あたってください…」
「これは、譲れないんだよ、だよ!!」
「あ!可愛い魔女っ子!」「…なに!?」
「うっそ~!」
「寒い…寒い…寒い…死ぬ…こたつ…」
「変化球っす!!」
「打ち返させてもらう!」
白熱している団員たちを横に見ながら、七海ちゃんは一人雪玉をころころと転がしていました。こうなった時に、自分が狙われることはほとんどないため、大雪も楽しまなきゃ損!とばかりに勝負がついたら遊んでもらう準備に取りかかっています。
「雪だるま~雪だるま~♪」
年がいもなく雪だるまやかまくらを作るために咲也君が帰ってきてくれるのを楽しみにしていたのです。
大きくなりすぎた雪玉がなかなか持ち上がりません。仕方なく、立ち上がって手伝いを頼もうとした瞬間、何かが視線にはいりこみました。
それがなにかを理解するのは容易かったのですが…
いけない!?よけられ…
「七海!!」
「きゃ!!」
ぐいっと体を引き寄せられ、誰かに抱き締められたのを感じた次の瞬間、真っ白な雪のかけらがハラハラと舞ってきました。舞い散る桜のように、二人を包み込みます。
でも、それがいつからか…赤に染まっていくのです。
「え…え…」
どうやら、流れ弾から咲也君が身をはって助けてくれたようなのですが…ミラクルなことに彼が腕ではじいた雪玉が、キレイにくだけて白いかけらとなって幻想的に舞ったのです。
それだけなら…ロマンティックだったのですが…
「赤い…インク」
「…ってことは…」
二人はキョトンと雪とインクに染まってしまったお互いの姿をみて、そう呟いたあとに…背後から嫌な気配を感じて振り返ったのでした。
「今年の鬼は…咲也と七海や!」
「イヤー!!」
「勘弁してくれよ!!」
二人の嘆きが許されるような涼風ではなく…手に豆を隠しながら笑みを浮かべた団員たちが近寄ってくるのでした。
「に…兄さん!あれだよ!鳩!!鳩出して!!」
「そ、そんな昔のインチキ手品を今さらやれって言われても…」
あわてふためく。
とりあえず、気持ち咲也君が七海ちゃんを庇うように前に立ちます。
「鬼は~外だよ、だよ~」「ひぃぃ…!」
「さっきの雪玉の恨みや…咲也には赤の全身タイツもあるからな」
「全身タイツってはじめから、俺を鬼にする気じゃねぇか!?暁羅、大人げないぞ!」
「…七海には…ラムちゃんがある…」
「なぜに!?似合わないし、なにより寒い!!それ、絶対に寒いよ!?」
豆がパラパラと投げる準備をされています。
なんとなく…瞳のハイライトが消えているような気がします。
泣き出しそうな顔をした七海ちゃんの手を決意を決めた咲也君が握りしめました。
「しかたない…逃げるぞ!!」
「あいあいさ~!」
即座に七海ちゃんを抱き抱えて逃走を図る咲也君。 それを追いかける他の団員。
「暁羅さんこんなデッカイのまで作ってたのか…なら使わないとだよな!どっこぃしょ~いち!」
それに気がついたときには遅かった。間抜けな掛け声とともに七海ちゃんが作っていた雪だるまの片割れを黒崎さんが、投げつけてきたのでした。
視界がまた真っ白にそまる。
「な!?」
「あー私のー」
悲痛な叫び。
よく投げつけたな…としか言えないデカさ。
もちろん、避けることはかなわず、加速した足も止まらず…
重なる悲鳴。
「おー…見事な衝突事故になったな。」
「…玉突きですね。」
離れた位置で見ていた珱稚さんと渚さんは冷静に、実況していたのでした。
雪だるまの片割れを投げた黒崎さんに突撃した咲也君と七海ちゃん。そこに更に豆を抱えた団員たちがなだれ込んでいったのでした。。咲也君が潰さないように七海ちゃんを支えているのがかろうじてわかるのですが、一番下の黒崎さんの安否は不明です。
「下手に動いたら…セクハラになります…」
「見事なからまりだな。」
もはや、誰から動いたら助かるのかもわからずに団子状になった団員たちに苦笑いをしながら
「…助けにいきますか?」
「…そうですね」
「滑ったら、焦らず騒がず…」
「「ドカンと行こう!」」
昔、暁羅さんが作った標語を二人同時に呟いて、笑いながら救出へとむかったのでした。
黒崎さんを掘り出すために頑張っていた横で、早くに脱出した信也君がひそかに雪だるまも完成させて
「…だるま…っと。」
と楽しそうに笑っていたのも、お忘れなきよう。
