団員たちが、楽しみで楽しみで仕方がない行事…そんなハロウィンを目前にひかえ…彼らはかなり浮き足立っていた。
(まぁ、日常的に他の人よりすでに浮き足立ってはいるんですけど、ね。)
断言できるのは彼らは、イベントを愛しすぎている。ということ。

「ねー!今年はね、体力に知力をかけたサバイバルにしちゃおうよ~!」

「あ、それいいね…そうなったら欠かせないのは…『小麦粉』かな、かな?」

楽しそうに、今回のイベントを発案し、そのまま製作担当になったノーストップな二人があまり関係無さそうな単語をあげている。
ハロウィンにむけて話し合いをしている亜水弥さんと藍音さん、さっそく構想を練っていたのでした。
いろんな衣装を前にして…わくわくしながら話し合いをしています。
その横で、往人さんと太陽君(実行委員補助)がなにやら紙に書いています。

「混ぜるな…危険…しかし!…あえて…混ぜる!」

「ゆ…往人さん、やる気満々すね?」

苦笑いをしながらも、それを止めたりしないのが太陽君の優しさです。



また、少し離れた場所でオレンジ色のカボチャをくりぬいている(飾り付け担当)シスコン、ブラコンコンビ。

「兄さん、兄さん!ハロウィンだから…公式で公衆の面前でコスプレしていいんだよね?」

「う…ん?いや、コスプレってより仮装だろ?というか、職質で呼び出されたくないから会場でるなよ?」

それ以前に常にコスプレしているような…という言葉をなんとか飲み込んで、器用に描かれた『W』の形に沿って刃をいれながら答えます。

「にゅふふ、なんか…燃えちゃうよね!!」

斜め右上を見ながら、目を輝かせる妹を見ながら…ただ一人、なんとも言えない不安を抱いていた咲也君なのでした。

「リアルに…誰か燃えないことを祈ろうか。」

最近、彼の予想は…たいてい当たる。さらに…悪い形で。

ーーー
ハロウィン当日。
いつもなら、各自勝手に変そうをしてくるのですが、なぜか今年はみんな私服での集合です。
マイクの前で、張り切っている亜水弥さん。カチッ…マイクの入る音に続いて声が響きます。

「涼風団員の諸君!よくぞハロウィンのために集まってくれた…しかし、今年はそんなに甘くないからね!」

最近、亜水弥さんの提案が某ライトノベルの団長さん並に無茶になってきたというのがここしばらくの涼風の流れです。

「んじゃ、みんなー!アメリカに行きたいかー!」

「いきたーぃ!」

…ハロウィンから早くもそれた(°Д°)
ツッコミいれたら敗けだ。
ちなみにまだテンションが上がりきっていないために対処に困っている団員の中で、七海ちゃんのみは、はい!はい!っとリアルに空気を読まず元気に手をあげて返事をしました。

「みんなー!咲也の真里亞ちゃんコスが見たいかー?きひひひ…魔女も女装もあるんだよ!」

「は!?」
「見たい、見たい!」
「…真里亞たんを…汚すな!」

上から、咲也、藍音、往人の声がだぶりました。
そしてすでに混ざっちゃいけないものを混ぜ始めました。
早くも嫌な予感しかしなくなってくる脱線ぷりでした。


「んじゃま、張り切ってトリックおぁトリック~!」

「「「トリックおぁトリック~」」」

このあたりにくると、みんなしかたないなぁ~と流れに順応できるのが涼風ミラクルです!

「選択肢ねぇ!!」

まぁ、咲也君がツッコミ入れないとどこまででも脱線できてしまいます。

「はい!そこの女装変態(仮)はおいといて、今年の衣装は…もぎ取ってもらうよ!あいにゃ宜しく!」

女装変態(仮)に反論する前に、あいにゃこと藍音さんがバーン!と後ろ方向へ手を向けます。

「う…運動会だぁ!」

まさしく。
もはや、ハロウィン関係なしに、「粉」やら「パン食い競争」やら「借り物競争?」の様な懐かしい定番的なものがセットされています。

「え~、今から問題を出すから答えられた人からスタートだよ、だよ?」

「ふふ~、あとはみんな各種目事に置いてある紙をとってゴール目指してね!」

なんだか、すごく壮大なことになっていました。

「「紙に書いてあった物体を渡すから、今年はそれがみんなの衣装だからね(だよ、だよ~!)」」

ちなみに、早く行っても中身はわからないために、どうなるかは完璧に『運』らしいです。

「…う…じゃぁ、俺も女装の可能性があるんすね…あ、じゃあみんながゴールし始めた頃に行ったら残りの傾向がわかるか…」
「もしれないっすね!って言おうとした太陽君の用な策略家さんには…はい!早速お菓子をプレゼントだよ、だよ?」

お菓子を渡すタイミングが明らかにおかしい…それに気がついていないのは、受け取った太陽君と
「あ~!いいなぁ、いいなぁ!」
と見ている七海ちゃんくらいです。

「はい、第一号のお菓子は、すぐに食べてね☆」

手渡されたクッキーを口に入れる太陽君。

「いただきます…………う!?」

直ぐ様、口を押さえてトイレの方向へと走っていったのでした。
呆然として見ていた団員たちをカメラにおさめながら…ここまで存在感がなかった暁羅さんが呟きました。

「なんや?定番のカラシかなんかいれたんか?」

ちなみに、司会の二人はそろって首をふります。

「ノン、ノン!」
「これはぁ…昨日の夜に咲也君に作ってもらったクッキーなんだよ、だよ!」

「「「な、なんだって~!?」」」

「トリックおぁトリック!頭を使うのは構わないけど…真剣にやらなかったら…トリックばっかしだから、頑張ってね~!」

大量にある咲也君作のクッキーを掲げています。
序盤からこのスピードですから、今年のイタズラは…相当に恐ろしいことになると全員が察知した瞬間でした。

確かに…団員たちをとりまいていた空気が変わった瞬間でした。

いきなり、ハチマキをしめなおしたり、暁羅さんもなにやら決意をした顔でカメラをおきにいきました。


「おい!ちょっと…おまえら全員失礼すぎだろ?」

頑張って作ったクッキーを罰ゲームに使われた不憫な咲也君に七海ちゃんが、光の消えた瞳をむけます。

「…負けられない戦いが…ここにあったんだよ、兄さん…」
「すまん…俺も笑顔でおまえのクッキーをほうばる自信、ないんや…」
「…生き残りたい…」
「そんなに、俺の料理への評価ヒドイのかよ?」

若干、めげてきた咲也君を見かねて亜水弥さんが言葉を足します。

「優勝した人は『トリックおぁトリック~!』でみんなにイタズラできる権利もつくからね~!」

選択肢がない悪魔のフレーズが出てきました。イタズラするためにはやるしかない!…そう不純なことを感じた咲也君もついには、決意を新たにしたのでした。

「んじゃ、みんな行くよ~せ~の!」

「「トリックおぁトリック~!!」」

こうして、みんながお菓子とイタズラに怯えながら…もはやハロウィンからかけ離れた負けられない戦いはスタートしたのでした。

「…まぁ、これ衣装決めるだけなんだけどね。」

どうやら、本当のハロウィンのイベントはまだまだ遠かったみたいでした。

ちなみに、トイレから戻ってきた太陽君が大きく出遅れることになったのは…言うまでもありません。

みんなで一緒に!
『トリックおぁトリック~!』
涼風と、恐怖のハロウィンを体験しませんか??