人間は、守りたいものがあるから強くなれるんだって・・・教えてくれたのは、いつだって、私の大切な人たちだった。
なんにもできない私にも、できることがあるよって、笑いながら、頭を撫でてくれたのはあなたです。
人間は、どんなことも思い出にかえる「強さ」を持っているって、教えてくれたのは、やっぱりあなたで、私の思い出を輝かせてくれたのも・・・あなたです。


幼い頃、交わした約束なんて、私は覚えてすらいなかった。
なのに、あなたは一人ぼっちの私を約束通りに迎えに来てくれた。
手をさしのべてくれた。
『おかえり』って、言ってくれた。

いつも、背中をおってるよ。あなたみたいになりたくて・・・あなたに誉めてもらいたくて。
笑顔で迎えてくれた。
あなたが、私に帰る場所をくれたんだよ。

だから・・・

「・・・私たち、図太いから、きっとひょっこり帰ってきます。」

大きな地震が起きた。
目が覚めたら、夢だったって隣にいてくれることを祈ったのに・・・目が覚めて、何日たってもあなたがいない。
必死になって、生き延びた。なんでかな?いつもは、逆なのに、生きなくちゃって思ったよ。
はじめて・・・『死にたくない』って思った。
テレビがついて、ゾッとした。私たちも、被災者となっていた。
涼風も、バラバラで中には・・・信じたくないような現実もたくさんあった。
帰ってこない兄さんは、声すら届かない場所で頑張っているって聞いた。
・・・会えないときはあったけど、こんなにもあなたの声が聞けないのが不安だったのははじめてで・・・泣いたら、来てくれるんじゃないかって密かに期待したりして・・・でも、来てくれなかった。

私は、もう前すらわからなくて、ぐちゃぐちゃになった・・・みんなと過ごしたおうちの、兄さんの部屋で泣きながら、眠ってしまった。


夢を見た。
兄さんが、涼風のみんなが、帰る場所を探して・・・迷っている夢。
私は、ここだよ!って言いたいのにどうしてか声にならなくて・・・

~~♪
携帯の音で飛び起きた。
兄さんかもしれない!
必死になって通話ボタンを強く、強く、おした。

「七海?大丈夫か?」

「くろ・・・さきさん。」
それは、大切な人にかわりはなくても・・・私が今一番に探していたあなたからではなかった。
それに黒崎さんも気がついてくれていた。

「・・・こっちにくるか?いろいろと不安だと思うし・・・迎えにいくよ。」

一瞬、甘えてしまいそうになった。
でも、すぐに夢の中でのみんなの不安そうな顔が頭に浮かんだ。

そうか・・・ここは、私たちの帰る場所。

「・・・まもら・・・きゃ。」

「七海?」

「みんなの場所・・・守らなくちゃ!」

私は、こぼれ落ちる涙を何回も何回も袖で拭いながら決意した。

「ありがとうございます・・・でも、私逃げないです。不安だけど、怖いけど・・・ここがなかったら・・・みんな、迷っちゃいますから。」

言い切ったあとに、なんだか・・・不思議と力がわいてきた。
私は、強くなれたかな?
私は、「守る場所」を見つけた。みんなが帰ってきたときに安心できるように・・・

「私の任務は・・・ここを守ること・・・ダメですか?」

「いや、七海・・・頼む。おまえなら大丈夫だ。」

黒崎さんはひとつ咳払いをしながら、声のトーンを落として言い切った。

「七海、おまえには涼風の笑顔を守る任務を与える。・・・辛くても、おまえが安心させてやれ。」

私は、大きくうなずいた。
「了解しました!」

ねぇ、みんな・・・私がここを守るから、いつだって「ただいま」って帰ってきてね。
今度は、私が伝えるよ。
みんなに
「おかえりなさい」って。