久しぶりに、涼風のメンバーが集まる家に泊まっていた咲也君は、疲れからもありすっかり懐かしい部屋で眠っていた。(と言うよりも大学生まで住んでいたアパートは大学院に行くために引っ越してしまって今では、引き払ってしまったからである。)


「・・・ちゃーん!遅刻だよ!お兄ちゃん!起きて、起きてー!」

腹のあたりに、なにかと懐かしさを帯びた重さを感じてゆっくりと重い瞼を開けていくと月明かりの中に、妹・・・こと七海ちゃんの顔とプラスアルファが浮かんでいた。

「・・・これは・・・」

疲れからか、頭がイマイチ回っていない。一時的に、自分がまだ高校に通っていた時期のことが頭をよぎる。しかし・・・さすがに、それはない。
必死になって状態を把握しようとする。すると、七海ちゃんの顔が赤くなっていく。

「そんな、そんな!凝視するなんてー!」

・・・寝ている人の腹の上に乗って、真夜中に起こしている上に、特に見たいとかそう言う選択しもなく「見えてしまっている」部分に関して、いきなり「見るな!」と言われても対応に困る。

「あ・・・ごめんな?」

「うー・・・!」

そのまま、床に降りると、まくれあがったスカートを整えながら七海ちゃんが呟くのだ。その姿はこれまた、懐かしいものだった。
どうやら、これのためだけにわざわざ昔の制服をきているみたいだ。
・・・やや、無理がある。

「あ、ありがたく思ってよね・・・その、15分もお兄ちゃんのこと、起こしてあげたんだから!」

プィッとそっぽをむく。
あー、困った・・・頭を抱えたくなった瞬間だった。恐らく、往人がなにかのキャラになるように設定をしたんだということは、わかるのだが・・・しばらく、そう言った媒体に触れていなかった咲也君は、どう対応するのか検討もつかなかったのだ。
とりあえず、まだ眠たくてしかたがない。
何時なんだろうか?
時計がわりにしていた携帯電話を手にとり、時間を確かめる。

「色々言いたいことはあるんだけど・・・七海、あのな・・・。」

時間がわかったとたんに、ひどい眠気が襲ってきた。なにしろ、高速道路を運転してはるばる帰ってきたのだから・・・眠くて当たり前なのだ。

「お兄ちゃん・・・さすがに夜中の2時に・・・学校には行かないから・・・な・・・おやすみ・・・」

そのまま、感覚に身を預けていく。もはやシチュエーションにノルだけの元気もない自分の体力に・・・年をとったなと笑ってしまいたくなった。

「あ、あー!兄さん、兄さん起きてくださいよぉ!これじゃ、また往人さんにおこられるー!にーさーん!」

なにやら、ひたすらに騒いでいるのは感じた。
あぁ・・・次に目が覚めたときには、いったいなんのマネなのかを突き止めなくてはならない。
そしてなによりも少しいなかったうちに「うちの妹の救いようのなさ」が遥かに、レベルアップしてしまったことに明日から、なんとか更正させないといけないと・・・薄れゆく意識のなかで、兄としての使命を強く思ったのだった。