「見習いサンタ募集中⑥」↓あなたには、私が何に見えますか?
あなたの目にうつる私は、果たして人間の姿をしているのでしょうか?
あなたが、私を見る度に、私は、自分がなにであるのか
ワカラナクナッテシマウノデス。
私は、何に?
声が響き渡る。それ以外はなにも聞こえてはこない。・・・どちらも動くことができないから。
沙羅はひどくうろたえている。きっと命令が下されたのだろう。
曲がった因果をもとに戻せ。もしもそれに、歯向かうようであるのなら・・・
私を、消せという。
「聖羅、渡して?・・・お願いだから!私があとは・・・絶対に、なんとかするから!」
もちろん彼女が渡せと言っているのは「彼の命」のことでしかない。
あの瞬間に、消されるはずだった彼の因果を私が曲げたのは確かだ。一瞬で彼はこの惑星の生命の輪から外れたのだ。
「もう・・・無理だよ。」
「無理じゃない!だから・・・」
「契約したから。」
「契約」その言葉に、沙羅の顔は真っ青になった。
確かに、私は彼とすでに「契約」をかわしてしまったのだ。そこに嘘はない。
その証拠として、彼の髪は淡い光をおびはじめている。
暖かな光。
それこそが、仮にとはいえ契約をしたことの証である。沙羅が焦っているとおり、完璧な契約をかわす。
それには、絶対的な拘束力がある。
「・・・口頭でしょ?」
「えぇ。今は・・・ね」
そうなのだ。まだ、私たちの「契約」は口頭によるものでしかない。
彼が完璧に、サンタクロースになるためには「契約書」へのサインがなくてはならない。しかし、そのための書類はここにはないのだ。だから、私は彼を連れて戻る途中だったのだ。
「本人と・・・話したい・・・06はどこにいるの?」
06・・・おそらく、それが彼の「命」を示す数なのだろう。だとすればあの場所で、最低でも5人は幸せだった時間を絶ちきられたのだろう。
「ダメよ。」
「でも・・・これは私の義務でもあるの!」
「わかるわ・・・だからこそ、ダメよ。」
サンタクロースの私が、見つかりそうになったときに姿を消したり、プレゼントを作り出す能力があるように、沙羅・・・死神の補佐にも特殊な力がある。
・・・いきなり「未来」を絶ちきられた人たちを納得させること。
言うなれば「話術」だ。
沙羅たちの「話術」は、「魔法」のようなものだ。
どんなに、「終わり」を拒んだとしても・・・最終的にはみな「運命」として受け入れる。
・・・いや、受け入れなくてはならないのだ。
だからこそ、沙羅と会話をさせるわけにはいかない。
「・・・私、聖羅と戦いたくないの!!だから!」
沙羅は手を高くかかげ、空中から巨大な鎌を取り出す。・・・これが最終手段なのだろう。脅してでも、奪い取る。
確かに、力では私は彼女にかなう余地はない。
でも・・・。
「・・・私だって、できることなら戦いたくなかった。」
「っ!?」
さすがだ・・・話術を得意とするだけある。
沙羅は私の言葉の意味に気がついたみたいだ。
ー戦いたくなかったー
そう。私はすでにそれを「過去形」にしたのだ。
たったそれだけの・・・ニュアンスの違いなんだ。
しかし、そこには「決別」の意味を込めた。
沙羅が泣いてる。
・・・ごめんね。ごめんね。私だって、沙羅と戦うなんて嫌だよ。
ーチリーンー
その時、鈴の音が鳴り響いた。それは今日の活動の終わりを示す音。
「せい・・・らぁ・・・次に会うときには、私はあなたの友じゃない・・・」
絞り出したような声。
・・・泣かないで、私の大切な友だち。
そして、次からは私たちは敵となる。
今なら、間に合う。
沙羅は、最後の望みをこめて私を見ていたんだろう。
「・・・さようなら。」
次の鈴の音で、沙羅はすっと消えた。私は、ただそこだけを見つめていた。
いなくならないで・・・私だって本当は、一緒にいたかった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
気がつくと、私が助けた男の子が後ろに立っていた。それに気がつかないくらいまで、私は・・・追い詰められていたらしい。
「・・・大丈夫よ。」
「でも・・・」
「・・・なに?」
「・・・泣いているから。」
・・・私は、頬に手を添えてようやく、自分が泣いていることに気がついた。
あぁ・・・まだ、私の中にもそんな感情があったんだ・・・それは、嬉しくもあったけど・・・ひたすらに辛かった。
あなたの目にうつる私は、果たして人間の姿をしているのでしょうか?
あなたが、私を見る度に、私は、自分がなにであるのか
ワカラナクナッテシマウノデス。
私は、何に?
声が響き渡る。それ以外はなにも聞こえてはこない。・・・どちらも動くことができないから。
沙羅はひどくうろたえている。きっと命令が下されたのだろう。
曲がった因果をもとに戻せ。もしもそれに、歯向かうようであるのなら・・・
私を、消せという。
「聖羅、渡して?・・・お願いだから!私があとは・・・絶対に、なんとかするから!」
もちろん彼女が渡せと言っているのは「彼の命」のことでしかない。
あの瞬間に、消されるはずだった彼の因果を私が曲げたのは確かだ。一瞬で彼はこの惑星の生命の輪から外れたのだ。
「もう・・・無理だよ。」
「無理じゃない!だから・・・」
「契約したから。」
「契約」その言葉に、沙羅の顔は真っ青になった。
確かに、私は彼とすでに「契約」をかわしてしまったのだ。そこに嘘はない。
その証拠として、彼の髪は淡い光をおびはじめている。
暖かな光。
それこそが、仮にとはいえ契約をしたことの証である。沙羅が焦っているとおり、完璧な契約をかわす。
それには、絶対的な拘束力がある。
「・・・口頭でしょ?」
「えぇ。今は・・・ね」
そうなのだ。まだ、私たちの「契約」は口頭によるものでしかない。
彼が完璧に、サンタクロースになるためには「契約書」へのサインがなくてはならない。しかし、そのための書類はここにはないのだ。だから、私は彼を連れて戻る途中だったのだ。
「本人と・・・話したい・・・06はどこにいるの?」
06・・・おそらく、それが彼の「命」を示す数なのだろう。だとすればあの場所で、最低でも5人は幸せだった時間を絶ちきられたのだろう。
「ダメよ。」
「でも・・・これは私の義務でもあるの!」
「わかるわ・・・だからこそ、ダメよ。」
サンタクロースの私が、見つかりそうになったときに姿を消したり、プレゼントを作り出す能力があるように、沙羅・・・死神の補佐にも特殊な力がある。
・・・いきなり「未来」を絶ちきられた人たちを納得させること。
言うなれば「話術」だ。
沙羅たちの「話術」は、「魔法」のようなものだ。
どんなに、「終わり」を拒んだとしても・・・最終的にはみな「運命」として受け入れる。
・・・いや、受け入れなくてはならないのだ。
だからこそ、沙羅と会話をさせるわけにはいかない。
「・・・私、聖羅と戦いたくないの!!だから!」
沙羅は手を高くかかげ、空中から巨大な鎌を取り出す。・・・これが最終手段なのだろう。脅してでも、奪い取る。
確かに、力では私は彼女にかなう余地はない。
でも・・・。
「・・・私だって、できることなら戦いたくなかった。」
「っ!?」
さすがだ・・・話術を得意とするだけある。
沙羅は私の言葉の意味に気がついたみたいだ。
ー戦いたくなかったー
そう。私はすでにそれを「過去形」にしたのだ。
たったそれだけの・・・ニュアンスの違いなんだ。
しかし、そこには「決別」の意味を込めた。
沙羅が泣いてる。
・・・ごめんね。ごめんね。私だって、沙羅と戦うなんて嫌だよ。
ーチリーンー
その時、鈴の音が鳴り響いた。それは今日の活動の終わりを示す音。
「せい・・・らぁ・・・次に会うときには、私はあなたの友じゃない・・・」
絞り出したような声。
・・・泣かないで、私の大切な友だち。
そして、次からは私たちは敵となる。
今なら、間に合う。
沙羅は、最後の望みをこめて私を見ていたんだろう。
「・・・さようなら。」
次の鈴の音で、沙羅はすっと消えた。私は、ただそこだけを見つめていた。
いなくならないで・・・私だって本当は、一緒にいたかった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
気がつくと、私が助けた男の子が後ろに立っていた。それに気がつかないくらいまで、私は・・・追い詰められていたらしい。
「・・・大丈夫よ。」
「でも・・・」
「・・・なに?」
「・・・泣いているから。」
・・・私は、頬に手を添えてようやく、自分が泣いていることに気がついた。
あぁ・・・まだ、私の中にもそんな感情があったんだ・・・それは、嬉しくもあったけど・・・ひたすらに辛かった。
