なんてことない夏休みのある日、七海ちゃんと咲也君はいつものようにぐだぐだしていました。
すると、黒崎さんが走っています。

「遅刻する!!真面目に、遅刻する!!」

二人は、夏休みだから忘れていましたが社会人な黒崎さんはまだまだお仕事がたくさんあったのでした。
あわてふためく彼をみながら、二人はのんびりしてました。

「咲也、咲也、咲也!」

「・・・一回で聞こえてるっーの。」

「シェーバーかせ!!」

「・・・や・だ。」

「死活問題なんだよ!真面目に貸してください。」

じーっとそんな不毛なやりとりを見ていた七海ちゃんは黒崎さんの顔をしげしげと見ていました。

「おー、黒崎さんが髭男爵~♪」

「それいいな、髭男爵~♪」

二人集まると、ますますたちが悪いと思った瞬間だったのでした。とにかく、さっさとしないと仕事に行けないと嘆き悲しむ彼をみながら、しかたがないので咲也君はシェーバーを貸したのでした。
黒崎さんがなんとか出ていくとすぐに、七海ちゃんは咲也君をじーっと見つめました。

「なんだ?お兄ちゃん成分の補給か?」

・・・若干嬉しそうな咲也君に七海ちゃんは聞いたのでした。

「・・・兄さんって、髭生えるの?」

思わず転びそうになりながら、咲也君は七海ちゃんを見たのでした。

「そりゃ、俺だって髭くらいは生えるさ。」

「・・・何色?」

何年も共にいたはずだと言うのに・・・今さらな疑問と言えば、疑問だったのですが、なぜか七海ちゃんには髭を剃る兄さんの記憶がないのでした。

「何色って、まぁ髪と同じくらい・・・」

改めて聞かれると困るなと呟きながら、咲也君は色素の薄い髪を引っ張って見せたのでした。

「えー、髭男爵さんな兄さんが見たいよぉ!」

なんとなく予測はしていた反応でした。
ちなみに、髭が似合わないことくらい咲也君自身が一番よくわかっていたのでした。

「・・・生えたら、一時間ひたすらに頬擦りするぞ?」

「いいよ~♪」

「・・・マジかよ?」

「まじなり♪」

・・・予想外に楽しそうな七海ちゃんの反応を見てしまったために、彼は心を決めて髭を伸ばしたとか、のばしてなかったとか。

ちなみに結論としては、

「兄さん、髭いらなかった!ディカプリオ様くらいになったらまたやってね♪・・・それまでは、剃ってください。」

・・・とのことでした。
つまりは似合わなかったとのことです。
毎度のことなのですが、ひたすらにお疲れ様でした。