女性陣があつい瞳で見つめている先には、燕尾服に身を包んだ水人さんがいました。急な仕事ができてしまったためにヘルプでやってきたのです。

「和むね~。あんなに丁寧に接してもらうと・・・なんか・・・」

「うん、うん!やっぱりいいよね、ね?」

いくら頑張って水人さんが動いていても女性陣がぼけーっとしいるために仕事の効率からしたらマイナスでした。
そして、そんな視線に気がついた水人さんが女性陣の前にやってきて頭を下げたのでした。

「どうかなさいましたか?なにか、わたくしにできることなら遠慮せずに・・・」

まさしく、その一言ですっかりハートを射止めたのでした。さらにはうきうきモードな藍音さんが今にも連れて帰りたくてしかたがないと言わんばかりに見つめているのでした。

「・・・あー、水人はこっちでやらせるから・・・」
黒崎さんが彼をつれていこうとすると、まさに犯罪者でも見るかのような目でみんなから見つめられてしまうのでした。黒崎さんは、すいませんと頭を下げて水人さんから手を話すのでした。

「あ~もう水人さんがこっちにきなよ!黒崎さんとチェンジしちゃお!」

・・・亜水弥さんの声はもちろん黒崎さんにも聞こえていました。うなだれるかれを見ながら、咲也君は衣装部屋へと戻ったのでした。


「早い話が・・・執事になれば、いいってことだろ?」

なぜか常備されている燕尾服に身を包んだ咲也君は、気合いをいれてまた部屋へと戻ったのです。

「・・・お嬢様がた、申し訳ないのですが・・・こちらにも手をかしていただけませんか?」

にこっと微笑む咲也君を見た女性陣が一瞬かたまったあとにみんなで一斉に大きくため息をついたのでした。
その雰囲気におされて怯える咲也君。

「ダメだね。まったくダメだね!」

「・・・亜水弥・・・うみねこ風にダメ出しすんなよ。」

ふっと亜水弥さんがニヒルに笑いながら咲也君の上着を引っ張るのでした。
そこに藍音さんも加わります。

「姿や、口調だけでは・・・冒涜になるんだよ、だよ♪」

「・・・藍音さん・・・ひぐらし風にダメ出ししないでください。」

ちなみに、藍音さんがひぐらし風なのは今に始まったことじゃないです。
二人は笑いながらダメ出しをするのでした。

「・・・水人さんを見習ったらぁ?」

「そうですね、勉強不足・・・だよ、だよ☆」

「お、お二人とも・・・」
言葉につまった咲也君は、涙を流しそうになりながら逃げ出していったのでした。

「・・・七海、コーヒーいれてくれ!」

「わかっ・・・て兄さん、なにその服は?」

別の部屋で作業をしていた七海ちゃんの前に執事な服のまま、咲也君はやってきたのでした。ちなみに足を組んでめちゃくちゃ偉そうにしています。

「執事だよ・・・なにが悪いんだよ」

「・・・なるほど、ね」

七海ちゃんは目の前で偉そうにしている「自称執事」をみてつくづく思ったのでした。せっかく燕尾服を着ているというのに俺様オーラがばりばりで・・・この人には一番にあわない仕事だろうなと。