8月11日この日はみんなが何日も前から集まって話し合いをする大切な一日です。なぜならこの日は、涼風の中でもクールなお兄さんである信也君の誕生日だったのです。
しかし、この日にはもう一つの大切な日でもあるのです。

「じゃあ、七海は誕生日のケーキの準備をしてくれるか?」

咲也君は大切な弟の誕生日をお祝いするために七海ちゃんたちにそれぞれにできる一番向いている仕事を与えていったのでした。

「了解したよ!私に任せてください!」

自信満々に手を挙げながら七海ちゃんは勢いよく、太陽に照らされながら暑い道路を歩いていったのでした。

「・・・・若干不安だから、すいませんが藍音さんついて行ってもらえますか?」

なにやら七海ちゃんの元気の良さに不安を感じた咲也君はよりにもよって藍音さんに七海ちゃんのあとをついて行ってもらえるようにお願いをしたのでした。
残念ながら、これが・・・悲劇の発端だったのです。

「亜水弥、かざりとかできたか?」

「大丈夫!私こういうの好きだから。」

亜水弥ちゃんは案外器用なために、チョキチョキと折り紙などをつないできれいな飾りを作り上げていったのでした。ちなみにこういうのは、藍音さんと亜水弥ちゃんが組めば最高でした。

「渚さん、料理は?」

「・・・順調です。」

本来になら七海ちゃんに渚さんの役目をやってもらうべきだったことに気がついたのは、すでに遅かったのでした。
ちゃくちゃくと作られていくパーティーの準備は傍目から見てもかなり豪華なものでした。
これならクールな信也君だって気に入るはずです。

「兄さん、ケーキ買ってきたよ!」

パタパタと七海ちゃんはケーキの箱を抱えながらかけてきました。あんまり走るとどんくさい七海ちゃんのことだから絶対に転ぶので、咲也君は早めにとめたのでした。

「ちゃんと生クリームにしたか?」

「ばっちりなり!」

ちなみになぜか信也君は可愛らしく、ショートケーキが大好きだったので、チョコケーキが大好きな七海ちゃんが自分の趣味にはしらないかもちょっと心配だったのでした。

「じゃあ、渚さんを手伝ってあげてくれるか?」
「はーぃだよ、だよん。」

そのままパタパタとかけていった七海ちゃんの背中を見つめながら、ショートケーキがはいっている箱に視線をうつします。

「咲也君!安心していいんだよ、だよ。私も行ったんだから、ちゃーんとスペルもバッチ!」

「・・・スペル?」

普通にハッピー・バースデー信也とするならまさかお店の人がいつも書いているハッピー・バースデーを間違うはずなどはない。さらに信也についてはローマ字にするよりかは「しんや」と平仮名にするべきであろう。

「・・・・まさか!」

言いようのない不安におそわれて、咲也君は藍音さんの姿をさがしました。しかし、時はすでに少しばかり遅かったがために彼女の姿はなかったのです。

「・・・8月11日。」

不安ばかりがつのる。
確か・・・あいつの誕生日もそうだった。そして、あいつならスペルにすることも納得がいく。
咲也君は恐る恐る箱へと手を伸ばしていったのでした。

「!?やっぱり・・・」
咲也君は頭を抱えて、自分のおかしてしまった重大なミスに気がついてしまったのでした。
ケーキの上にはチョコレートにかかれた誕生日おめでとうのメッセージ。
「・・・ハッピー・バースデー・・・・クラウド・・・」

忘れていた。
七海ちゃんがメチャクチャ「クラウド」が大好きだったことを。
忘れていた。
確実に藍音さんも「クラウド」が大好きだったことを。
しかし、信也君のパートナーであった藍音さんがまさかこんなことをするとは思いたくなかったのでした。

「・・・どーやって、ごまかすかな。」

なんとかして、書き直すために咲也君は頭を悩ませながら今のうちに気がつくことができたことに安心をしたのでした。
しかし、心のどこかでは感じ取っていたのでした。

「・・・もしかしたら・・・このままでも信也は気がつかないかもしれない。」

だいたいその予想もあたっていました。そして咲也君のこの頑張りは悲しいことに続いていったのでした。
そして、ケーキをなおせたあとに彼は会場を見に行きまた肩を落としたのでした。

「あーすーみ!」

「は!?な、なによ?私、なにを間違ったわけ!?」

まぁ、大きく書かれたプレートにはもちろんわざとではないのですが・・・

「おいおい・・・だから、ハッピー・バースデー・・・クラウド・・・じゃないだろうが。」

咲也君は肩を落としながらしかたがなく、信也君の足とめと訂正に追われていくのでした。

咲也君は・・・本当は一番みんなのことを考えていた・・・とってもいい兄さんだったのでした。