おそらく女の子なら一度は憧れたことがあるであろうロリータ風味なフリルたくさんのふわふわしたスカートのいわゆる甘ロリファッション。まぁ、例外じゃなく例のあの子もふりふりなお姫様ファッションに夢を抱いていたのでした。

「わー、こういうのいいなぁ!可愛い~ふわふわしてるよぉ!」

雑誌に載っていたロリータの女の子にいつになく目を輝かせながら、ふわふわした洋服を見つめていたのでした。隣で見ていた咲也君はふーんっと考えたのでした。
そしてそこから、例の兄バカをはっきした彼は、そういうのも良いかもしれないと考えたのでした。

「藍音さん、あのさぁ・・・ロリータっぽい服かしてくれない?」

「・・・ロリータ?えぅ!もちろんだよ、だよー!」

二つ返事で藍音さんはすぐに可愛いもので溢れかえった部屋の中に戻っていったのでした。なんとなくピンク色あたりを期待しながら、咲也君は待っていました。
するとすぐに満面の笑みを浮かべた藍音さんが何着かのワンピースを持ってきたのでした。

「えーっとね、色が白いし透明感があるから、こういうのが似合うと思うんだよ、だよ!」

取り出したのは柔らかな桜の花のようなピンクのワンピースに白のパニエにお揃いの大きなリボンでした。

「お、確かにいい感じだな。柔らかくて一見したら普通にもきれそうだし・・・」

「初心者さんだから気をつけてみたんだよ~!それからね、ね!せっかくだからちょっと丈は長めなのも、アクセントだよ、だよー!」

丈が長め?確かに長いかもしれないと思いながら見ていたらなにやら違和感に気がつき始めたのでした。
・・・七海にロングスカートは少し合わないのではないのだろうか・・・?膝丈くらいでふわふわしていたほうが、可愛いような・・・。

「ん?・・・これってデカすぎませんか?」

気がついたらなぜか自分に、あわせられていたその洋服は・・・下手したら男が着るくらいで小柄な七海ちゃんを考えたらあまりにもサイズが大きいのでした。
明らかにサイズのミスだと言うことになったのですが、彼女はあくまで「間違ってなんかいない」って、主張するのです。
「でも、これじゃ引きずるだろ!」

「もーー、私はそんな単純なミスはしないんだよー。」

なんだか話がかみ合ってないということに気がついたときには遅かったのでした。咲也君にしては珍しく大きな失敗をしていたのでした。

「身長185センチ・・・体重68キロ、スリーサイズは上からぁ♪」

「藍音さん!あなたなんで俺のことについて俺以上に知ってるんですか!」

まさしく、藍音さんは咲也君のためにロリータちゃんの衣装を準備していたのでした。
というか、まさか自分のスリーサイズなんか咲也君自身が知らないことでした。

「早く着てみてよ!ね、ねー私頑張って作ったんだからぁ♪」

衣装担当の彼女は裁縫が得意なのでなるほど、咲也君にぴったりなサイズで作られていたのでした。

「違う・・・俺は七海に・・・着せたくて・・・」

びっしょりと冷や汗をかいたために、咲也君の肌にはシャツが張り付いていました。

「うん、うん、大丈夫・・・七海ちゃんのぶんは他に準備してあるんだよ・・・だから、ね?」

まるで天使のような笑顔。

「うわぁぁぁぁ!」




「藍音さーん、咲也兄さん見なかっ・・・」

兄を訪ねて三千里な七海ちゃんが藍音さんの部屋へとやってきました。
部屋の中には金髪のお姫様が物寂しげに、瞳を潤ませながら座っていたのでした。

「あら?七海ちゃん、いらっしゃいだよ~。」

「わぁ、すごい!これお人形さん?」

七海ちゃんは怖々と「お姫様」に近づいていきました。気のせいか、少し「お姫様」が動いたように見えました。

「・・・七海ちゃんのよく知ってる人だよ~。」
じーっと「お姫様」を見つめた七海ちゃんは恐る恐る口にしてしまったのでした。

「咲也・・・兄さん?」
「っ!」

「やっぱりそうだ!・・・兄さんズルい!自分だけ可愛いの着て!」

そのまま、ものすごいスピードで走り去った七海ちゃんの後ろ姿を見つめることしかできなかったのでした。

「待て七海!あ・・・着替えていいですか?」

まさかこのまま追いかけるわけにはいかない。
にっこり。

「ダメだよ!」

しばらくの間、藍音さんの部屋にはそれはそれは綺麗な「お姫様」がいたそうです。