だいたい六年くらい前のまだ暁羅さんが団長としての力を失っていなかったときのお話です。
親睦を深めるとの名目の元・・・彼は様々な迷惑きわまりない「イベント」を開いていました。
その中でも一番おそれられていたのが「借り物競争」だったのです。
「・・・うわ・・・路上でピンクの服着てブレイクダンスをしている坊主の男なんてどこにいるんだよ。」
「うー・・・今時電車の中でたまごっちをしている女子高生なんていないよぉ。」
「チラシを配る振りして、間違って手を握ってしまうメイドさん・・・ってなんすか?」
各自、自分のひいたくじを開きながら呟いていました。そう、この「借り物競争」はまずつれてこれないような「人間」が書かれているのでした。
「ほな、みんな健闘を祈っとるからな~」
ちなみに無理なものを渡した後に団長は「ゴール」となる地へと向かったのでした。
みながグチグチ言っているなか・・・一人だけ歩き出した女性がいたのにも誰も気がつきませんでした。
「・・・お父様。ごぶたさしております・・・はい、えぇ・・・では明日・・・」
部屋を出ると彼女は携帯を開きどこかへと電話をかけた後ににやりと不適に笑ったのでした。
「あー、今回も無理だな。」
「うん・・・これはあきらめたほうがよさそうだよ。」
「しかし、団長も暇だよなぁ。」
ため息をつきながら、一応参加しなくてはならないために、各自重たい腰を上げて思い思いの場所へと足を進めていくのでした。
与えられた一週間・・・彼らはベストを尽くすために前だけを見て戦うのでした。
ー最終日ー
「結局、今回もみんなリタイアか?」
団長のもとへとぞくぞくと人が集まっていきました。リタイアをした団員たちは口々になにかを話し合っています。
「あり?藍音さんがいないよぉ?」
終了まであと五分程度なのにまだ藍音さんは現れていませんでした。
「早くしないと・・・」
渚さんも心配そうに周りを見渡していました。しかたがないのです。
リタイアの場合であったとしても、時間切れは強制的に「罰ゲーム」なのでした。
時計が容赦なく進んでいきます。
「あ、藍・・・えぇ!」
手を振った藍音さんの後ろには厳しそうな表情をした男性がついてきていました。
「はぁ、ギリギリセーフだよね、ね?」
「・・・久しぶりだな。」
息をあげながら二人は、ゴールへとやってきたのでした。
「おぉ、藍音が一等賞やな!」
ぽかーんとしている他の団員たちの中から信也君だけが・・・走って逃げ出したのです。
「信也兄さんの・・・ぱぱさんだぁ。」
七海ちゃんが呆気にとられたように、目を丸くしてその二人を見ていました。
「七海さん・・・信也は良き兄をしていますか?」
「は、はい!」
自衛隊の幹部である、信也君のお父さんはとても厳しい人でした。みながついつい姿勢を正します。
「・・・信也の奴・・・すいません、連れてきます。」
「かまわない。」
咲也君が信也君を呼びに行こうとするのをぱぱさんが止めるのでした。
「今日は、藍音さんの借り物とやらにつきあっただけだからな。」
呆気にとられているメンバーたちに頭を下げると、ぱぱさんは帰って行ってしまったのでした。
「まーなんや、藍音には商品をやらなあかんな。」
「頑張ったんだよ、だよ!ありがとうございます。」
帰り道にみんなはこっそりと聞いたのでした。
「藍音さん、誰を連れてこいって書いてあったの?」
「・・・にはは、優しいお父さんだって。」
その意外すぎる言葉に、みな思わず笑ってしまったのでした。なるほど・・・確かになんだかんだ言いながらもたったこれだけの時間だったにも関わらず息子の成長を見に来たのだから・・・信也君のお父さんは確かに優しいお父さんだったのでした。
親睦を深めるとの名目の元・・・彼は様々な迷惑きわまりない「イベント」を開いていました。
その中でも一番おそれられていたのが「借り物競争」だったのです。
「・・・うわ・・・路上でピンクの服着てブレイクダンスをしている坊主の男なんてどこにいるんだよ。」
「うー・・・今時電車の中でたまごっちをしている女子高生なんていないよぉ。」
「チラシを配る振りして、間違って手を握ってしまうメイドさん・・・ってなんすか?」
各自、自分のひいたくじを開きながら呟いていました。そう、この「借り物競争」はまずつれてこれないような「人間」が書かれているのでした。
「ほな、みんな健闘を祈っとるからな~」
ちなみに無理なものを渡した後に団長は「ゴール」となる地へと向かったのでした。
みながグチグチ言っているなか・・・一人だけ歩き出した女性がいたのにも誰も気がつきませんでした。
「・・・お父様。ごぶたさしております・・・はい、えぇ・・・では明日・・・」
部屋を出ると彼女は携帯を開きどこかへと電話をかけた後ににやりと不適に笑ったのでした。
「あー、今回も無理だな。」
「うん・・・これはあきらめたほうがよさそうだよ。」
「しかし、団長も暇だよなぁ。」
ため息をつきながら、一応参加しなくてはならないために、各自重たい腰を上げて思い思いの場所へと足を進めていくのでした。
与えられた一週間・・・彼らはベストを尽くすために前だけを見て戦うのでした。
ー最終日ー
「結局、今回もみんなリタイアか?」
団長のもとへとぞくぞくと人が集まっていきました。リタイアをした団員たちは口々になにかを話し合っています。
「あり?藍音さんがいないよぉ?」
終了まであと五分程度なのにまだ藍音さんは現れていませんでした。
「早くしないと・・・」
渚さんも心配そうに周りを見渡していました。しかたがないのです。
リタイアの場合であったとしても、時間切れは強制的に「罰ゲーム」なのでした。
時計が容赦なく進んでいきます。
「あ、藍・・・えぇ!」
手を振った藍音さんの後ろには厳しそうな表情をした男性がついてきていました。
「はぁ、ギリギリセーフだよね、ね?」
「・・・久しぶりだな。」
息をあげながら二人は、ゴールへとやってきたのでした。
「おぉ、藍音が一等賞やな!」
ぽかーんとしている他の団員たちの中から信也君だけが・・・走って逃げ出したのです。
「信也兄さんの・・・ぱぱさんだぁ。」
七海ちゃんが呆気にとられたように、目を丸くしてその二人を見ていました。
「七海さん・・・信也は良き兄をしていますか?」
「は、はい!」
自衛隊の幹部である、信也君のお父さんはとても厳しい人でした。みながついつい姿勢を正します。
「・・・信也の奴・・・すいません、連れてきます。」
「かまわない。」
咲也君が信也君を呼びに行こうとするのをぱぱさんが止めるのでした。
「今日は、藍音さんの借り物とやらにつきあっただけだからな。」
呆気にとられているメンバーたちに頭を下げると、ぱぱさんは帰って行ってしまったのでした。
「まーなんや、藍音には商品をやらなあかんな。」
「頑張ったんだよ、だよ!ありがとうございます。」
帰り道にみんなはこっそりと聞いたのでした。
「藍音さん、誰を連れてこいって書いてあったの?」
「・・・にはは、優しいお父さんだって。」
その意外すぎる言葉に、みな思わず笑ってしまったのでした。なるほど・・・確かになんだかんだ言いながらもたったこれだけの時間だったにも関わらず息子の成長を見に来たのだから・・・信也君のお父さんは確かに優しいお父さんだったのでした。
