兄さんの話はいつだっておもしろい。兄さんは私が知らないことをたくさん、たくさん知っている。でも今日の兄さんはいつもとは少し違っていた。そして本を開きながら・・・私にそこにあった歴史を教えてくれました。
「ヴェルディヴっていうのはな、屋内競技場だったんだ。・・・そこに1942年7月16日にユダヤ人たちは集められた。」
「フランスなのに?」
私は考えてみたが、どうしてもアンネフランクに代表されるようなポーランドなどでの「悲惨な事件」ばかりが頭に残ってしまっていたためか、まさかフランスでもユダヤ人を探し出していたことは知らなかった。
「そうだよ・・・しかもフランスにきたドイツの軍隊の人たちがつれていったんではなく・・・フランスの警察が捕まえたんだ。」
言葉に詰まってしまった。兄さんはずーっと写真を見ていた。フランス語の先生がフランス人は国を愛する、自国民を非常に大切にすると言う特徴があると言っていた。
私が知らないフランスがそこにはあった。
「フランス人たちにはそれをタブー視する人もたくさんいた・・・それに、時が過ぎればみな忘れていく。本にすらほとんどが残っていない。授業でも教えない。」
きっと兄さんだってそんなことは調べなかったのならきっとわからなかったことだろう。しかし兄さんはそこで何人の人が連れて行かれ・・・どんな悲劇が起こったのかを知っていた。自国の恥は授業にはとりあげない。それは日本だって同じなんだ。
「忘れちゃいけないんだよな。・・・なのに人は時間が過ぎれば忘れてしまう。」
私はフランスの良い面しか見てこなかったのだ。フランスは、綺麗な国でみんながちゃんと「自由に生きている」と感じていた。
戦争は人の心を変えていってしまう。それはドイツだけに起こったことではなかったんだ。
汚いものは消せばいい?暗い歴史は隠せばいい?
そんなのは違うって・・・・私だってちゃんとわかっていた。
「いいか・・・人は人を憎んでしまったときに戦いを望んでしまうんだ。・・・でも、目を背けてはいけない。」
「・・・目を背けない?」
少しではあったけど、写真の中にはなんとかしたいともがく人たちの姿や、必死に生きることを望んだ人たちがうつっていた。そう言えば・・・どこにでも正義を守るために戦う人たちはいた。
「だからやっぱり・・・ただいくんじゃなくて・・・行く前に勉強していこうな。」
「はーい!」
「せっかくだから、おまえにはちゃんと歴史的なものを見せてやりたいしなー。」
兄さんは楽しそうに普通なら、見に行かないような場所の名前をあげていった。
確かに勉強になりそうな気はした。でもすごく役に立つお話だったというのにだんだん・・・なんだか何かが違う気がしてきた。
これではまるで、父親や先生に勉強をするように促されているような気持ちだ。
「はい!兄さんー・・・やっぱり新婚旅行は熱海で良いです!」
ビシッと手を挙げた七海ちゃんの様子を見て、慌てながら咲也君は聞き返したのでした。
「こんなに話したのに、いまさら?なに、おまえはそんなに熱海が好きなのか?」
別に熱海にこだわる必要も特に張り切って行く気はなかったんだけど・・・確かにあなたといれたらそれだけで幸せなんだって思っていたけど・・・なにかが・・・なにかが違うんです。
「兄さん・・・私、それは修学旅行で行きたいです。旅のしおりとかを作って行きましょう!」
「・・・確かに。楽しくないな。」
「と言うわけで、熱海でいいですよね?」
「おー、むしろ熱海のが新鮮かもな。」
せっかくの途中までのお勉強にもなるはずだった良いお話な感じが結論としたらなんだかだめになってしまった瞬間だったのでした。
ちなみに七海ちゃんがせっせとしおりを作り始めたのはもはや言う必要性はないだろう。
「ヴェルディヴっていうのはな、屋内競技場だったんだ。・・・そこに1942年7月16日にユダヤ人たちは集められた。」
「フランスなのに?」
私は考えてみたが、どうしてもアンネフランクに代表されるようなポーランドなどでの「悲惨な事件」ばかりが頭に残ってしまっていたためか、まさかフランスでもユダヤ人を探し出していたことは知らなかった。
「そうだよ・・・しかもフランスにきたドイツの軍隊の人たちがつれていったんではなく・・・フランスの警察が捕まえたんだ。」
言葉に詰まってしまった。兄さんはずーっと写真を見ていた。フランス語の先生がフランス人は国を愛する、自国民を非常に大切にすると言う特徴があると言っていた。
私が知らないフランスがそこにはあった。
「フランス人たちにはそれをタブー視する人もたくさんいた・・・それに、時が過ぎればみな忘れていく。本にすらほとんどが残っていない。授業でも教えない。」
きっと兄さんだってそんなことは調べなかったのならきっとわからなかったことだろう。しかし兄さんはそこで何人の人が連れて行かれ・・・どんな悲劇が起こったのかを知っていた。自国の恥は授業にはとりあげない。それは日本だって同じなんだ。
「忘れちゃいけないんだよな。・・・なのに人は時間が過ぎれば忘れてしまう。」
私はフランスの良い面しか見てこなかったのだ。フランスは、綺麗な国でみんながちゃんと「自由に生きている」と感じていた。
戦争は人の心を変えていってしまう。それはドイツだけに起こったことではなかったんだ。
汚いものは消せばいい?暗い歴史は隠せばいい?
そんなのは違うって・・・・私だってちゃんとわかっていた。
「いいか・・・人は人を憎んでしまったときに戦いを望んでしまうんだ。・・・でも、目を背けてはいけない。」
「・・・目を背けない?」
少しではあったけど、写真の中にはなんとかしたいともがく人たちの姿や、必死に生きることを望んだ人たちがうつっていた。そう言えば・・・どこにでも正義を守るために戦う人たちはいた。
「だからやっぱり・・・ただいくんじゃなくて・・・行く前に勉強していこうな。」
「はーい!」
「せっかくだから、おまえにはちゃんと歴史的なものを見せてやりたいしなー。」
兄さんは楽しそうに普通なら、見に行かないような場所の名前をあげていった。
確かに勉強になりそうな気はした。でもすごく役に立つお話だったというのにだんだん・・・なんだか何かが違う気がしてきた。
これではまるで、父親や先生に勉強をするように促されているような気持ちだ。
「はい!兄さんー・・・やっぱり新婚旅行は熱海で良いです!」
ビシッと手を挙げた七海ちゃんの様子を見て、慌てながら咲也君は聞き返したのでした。
「こんなに話したのに、いまさら?なに、おまえはそんなに熱海が好きなのか?」
別に熱海にこだわる必要も特に張り切って行く気はなかったんだけど・・・確かにあなたといれたらそれだけで幸せなんだって思っていたけど・・・なにかが・・・なにかが違うんです。
「兄さん・・・私、それは修学旅行で行きたいです。旅のしおりとかを作って行きましょう!」
「・・・確かに。楽しくないな。」
「と言うわけで、熱海でいいですよね?」
「おー、むしろ熱海のが新鮮かもな。」
せっかくの途中までのお勉強にもなるはずだった良いお話な感じが結論としたらなんだかだめになってしまった瞬間だったのでした。
ちなみに七海ちゃんがせっせとしおりを作り始めたのはもはや言う必要性はないだろう。
