咲也君がいなくなったために新たな団長となった黒崎さん。しかし、みんな順応はしているのですが残念ながらかなりパワーバランスは崩壊しました。だいたい、そんなことは予測できていました。咲也君もそのことを危惧していたために・・・とあるかたに白羽の矢がたつことになったのでした。

「うー・・・今回は無理かも・・・」

「確かに、仕方がないからやめるか?」

「やめちゃおー!やめちゃおー!」

「そうだな!みんなに連絡するかー。」

「うぃーだよー。」

現団長黒崎さんと、今回係りが変更されたことによってみんなへの「連絡する」人事を扱うことになった七海ちゃんがめちゃくちゃ重要なことをあっさり決断しようとしています。
具体的には、次の講演をどうするか・・・「脚本」がまだできていない。「テーマ」すら決まっていない。さらには「役者」がたりない。
七海ちゃんも黒崎さんもすぐに無理だと判断をして、さっさと連絡をしようとメーリングを作り始めたのでした。

「・・・おーぃ、咲也から連絡だぞ。」

横で黙ってみていたのが帰ってきた涼風の良心こと珱稚先生でした。二人はパソコンから目をはなすことなく返答をしました。

「なんだー?」

「うんぅん・・・兄さん元気だってー?」

珱稚先生は少し考えた後に静かにメールを読み出しました。瞳から光が消えたような気がして、二人はそれを静かに見つめることになりました。

「黒崎団長、七海、それから涼風のみなさんに連絡があります。」

なんだか気味が悪いのでした。やけに堅苦しく書かれた手紙。

「なんだよ・・・改まって。」

「・・・おまえらのやっていることはすべて全部まるっと・・・」
「にゃー!じしゅきせー!」

慌てて七海ちゃんが珱稚先生の口をふさぎました。そんな絶賛上映中の超大作のセリフを引用・・・というかパクってはいけません。

「・・・とにかくわかりきっている。二人が今、パソコンをたちあげ・・・恐らく『緊急連絡』と打ち込んでいることくらい。」

二人は止まりました。確かにメールの題名には「緊急連絡」あまりにもタイミングが良すぎでした。あとから考えたら「二人がパソコンを立ち上げたらこのメールを読め」と指示を受けていたのかもしれませんが、瞬間的に二人は部屋の中を確かめ始めました。

「やっぱり監視カメラがあるんだよー!」

かなり取り乱している七海ちゃんは、わざわざ押入の中の小さな隙間まで手を突っ込んでいます。
「イヤ・・あいつなら六感かもしれない。」

「こーわぃ、無駄に怖い!」

パニックを起こしています。もはや最近彼らにとっての咲也君はなにか超人的な人物とかしていました。そんな二人を少しみた後に珱稚先生は微笑みました。

「咲也は`い`るんだよ。」

・・・いい加減にパクリをやめた方がいい。いつか訴えられるから。でも彼らにとっての「水無月咲也」はあまりにも完璧すぎたために、「魔女」だと言われてもなんだか納得なのでした。

「うー・・・間男だよ・・・。」

「・・・七海、それは意味が果てしなく違うからな。」

一応、ちゃんとつっこむあたりは黒崎さんもだんだん「保護者」らしくなってきました。
うつむく二人に珱稚先生は言葉を続けました。

「・・・暁羅さんとも話した結果として、今後はまじめに劇をしてもらいます。」

なんでいきなり?二人は首を傾げながら続きを聞いています。一時は劇をやめてつぶそうとさえ考えられていたのだからなんだか納得はいきません。

「なぜならば・・・これを見てください。」

そこにあったのは赤文字ばかりで書かれた「予算」でした。黒いところなんて数えられるくらいしかありません。そして何重にも線が書かれているスポンサーの文字。二人にはその意味が十分に伝わりました。

「・・・虚偽の報告がどうなるかは、おそらくお前が一番わかるだろ?」
せっかく弁護士になったのにこんなところで犯罪になったらもはやすべてが意味をなさなくなります。ついでにこのスポンサーさんがいなくなったりしたらもはややっていけなくなるのは明らかでした。

「劇やるぞ!七海信也に連絡して、練習場所の確保を頼む。珱稚は往人さんに連絡頼む!」

「りょーかぃ!」
「御意。」

やっとまともに動き出した彼らをどこからか見ながら咲也君は静かに笑っていたそうです。

「ったく、まーでも単純で助かるよ。」

まだまだ彼の苦労がなくなる日はかなーり遠い未来のようでした。
本当にお疲れさまとしか言いようがありません。
「にゃー!メールがたまってるぅ!」

「往人・・・すぐに切られました。」

ついでに彼らが遠方からの見えない力で操作されているのや、咲也君の手の上で踊らされているのに気がつくのもまだまだ先のようでした。