晴一という誰よりも大人で、誰よりも優しかった人の代わりに入ってきた青木太陽という青年。
それは晴一が生前に、団長へと頼み込んでいた願いでした。
「七海ちゃん、今日の夕飯は・・・」
「あ、太陽兄さん。」
二人が会話をしようとするとわざとらしく咲也君が割り込みます。
「・・・邪魔だ。」
ストレートかつシンプルな嫌がらせ。
とにかくみんなが新しい出会いに喜んでいる中、気に入らなかった人が二人いました。
それは晴一の恋人だった亜水弥ちゃんと晴一を兄として慕っていた咲也君。
特に咲也君はなにかとつっかかっていました。
そんな日々が1ヶ月も続きました。ある日ひょんなことから二人は殴り合いを始め、暁羅さんの家の障子を何枚も犠牲にしました。さすがに怒った暁羅さんは二人を屋根裏部屋に閉じこめたのでした。
「反省するまでださんからな。」
珍しく暁羅さんは強硬手段に出ました。ところが二人は狭くて暗い部屋に入れられてなお喧嘩をやめませんでした。
「おまえが・・・悪い。」
「・・・あんただって悪いっすよ。」
小さな部屋で二人は背中を向けていました。どうせ夕食の時間には出してもらえると思ったから仲直りする気なんてありませんでした。
ところが、夕食の時間を何分過ぎても二人に声はかかりませんでした。
夜も二時を回るとさすがにおなかが空いて言い争う気にもなりませんでした。
「・・・はらへった。」
「・・・同感っす。」
考えてみたら今日は忙しくて満足に昼も朝も食べていません。空腹はマックスでした。二人はそれでもそっぽを向いていました。
トントン・・・小さくドアがなりました。二人はやっと解放されると息を吹き出しました。
「兄さんたち、大丈夫ですかぁ?」
聞こえてきたのは七海ちゃんの声でした。どうやら心配になって秘密で様子を見に来たみたいです。
「・・・七海?」
「七海ちゃん?」
二人の声を確認すると七海ちゃんは少しだけドアをあけて、お盆を差し出しました。どうやらこの部屋は外からしか鍵をはずせないみたいです。
「おなかすいただろうなって思って・・・おにぎり作ってきました。」
ばれたら七海ちゃんも怒られてしまうため、声はだいぶ落としています。
「気がきくっすね!ありがたいっす。」
太陽君が手を伸ばそうとした瞬間に咲也君の手がお盆ではなく七海ちゃんをつかみました。
「俺はおにぎりよりななたんが欲しい!」
バカとか声がでかいとか突っ込みはたくさんありましたが、七海ちゃんは瞬間的に真っ赤になってお盆を落としました。
部屋には音が響きわたりました。
「兄さんの・・・ばかー!」
その叫びとともに再び鍵は閉められ・・・食料も七海ちゃんもいなくなりました。
呆然とする二人。
「・・・あほっすね。」
太陽君の呟きとじと目ににさすがの咲也君も頭を下げました。
「スイマセンでした。」
しばしの沈黙・・・。
どちらからともなくぐーっとお腹の音が鳴りました。
二人ははじめて顔を合わせて笑いました。
「あ、確か・・・。」
太陽君が制服のポケットをあさりました。そこには小さなチョコレートが2つ。バサッと生徒手帳が落ちたことには気がついていません。
拾い上げた咲也君は気がつきました。
「チョコレート、食べるっす・・・」
ハッと咲也君の手元を見る太陽君。そしてしまったと顔をしかめました。
「それは・・・その・・・」
無言で咲也君は自分のポケットから生徒手帳を取り出して渡しました。
「・・・あれ?」
二人の手帳にはそれぞれの「本当の名前」が書いてありました。
びっくりして二人はまた笑いました。二人は似すぎていたのです。
「まぁ、いろいろあるよな。」
「本当っすよね。」
二人は笑いました。
頭がおかしくなったんじゃないかってくらい笑いました。
「悪かったな。」
「気にしないでほしいっす。ただしこれからは・・・」
スッと太陽君は拳をだしました。ちょっと考えたあと咲也君は自分の拳をコツンとぶつけました。
「「親友だな。」」
こうして二人は一緒の道を歩んでいくことになりました。時には影となり光となり・・・今では誰もがうらやむような最高の友だちになったのです。
それは晴一が生前に、団長へと頼み込んでいた願いでした。
「七海ちゃん、今日の夕飯は・・・」
「あ、太陽兄さん。」
二人が会話をしようとするとわざとらしく咲也君が割り込みます。
「・・・邪魔だ。」
ストレートかつシンプルな嫌がらせ。
とにかくみんなが新しい出会いに喜んでいる中、気に入らなかった人が二人いました。
それは晴一の恋人だった亜水弥ちゃんと晴一を兄として慕っていた咲也君。
特に咲也君はなにかとつっかかっていました。
そんな日々が1ヶ月も続きました。ある日ひょんなことから二人は殴り合いを始め、暁羅さんの家の障子を何枚も犠牲にしました。さすがに怒った暁羅さんは二人を屋根裏部屋に閉じこめたのでした。
「反省するまでださんからな。」
珍しく暁羅さんは強硬手段に出ました。ところが二人は狭くて暗い部屋に入れられてなお喧嘩をやめませんでした。
「おまえが・・・悪い。」
「・・・あんただって悪いっすよ。」
小さな部屋で二人は背中を向けていました。どうせ夕食の時間には出してもらえると思ったから仲直りする気なんてありませんでした。
ところが、夕食の時間を何分過ぎても二人に声はかかりませんでした。
夜も二時を回るとさすがにおなかが空いて言い争う気にもなりませんでした。
「・・・はらへった。」
「・・・同感っす。」
考えてみたら今日は忙しくて満足に昼も朝も食べていません。空腹はマックスでした。二人はそれでもそっぽを向いていました。
トントン・・・小さくドアがなりました。二人はやっと解放されると息を吹き出しました。
「兄さんたち、大丈夫ですかぁ?」
聞こえてきたのは七海ちゃんの声でした。どうやら心配になって秘密で様子を見に来たみたいです。
「・・・七海?」
「七海ちゃん?」
二人の声を確認すると七海ちゃんは少しだけドアをあけて、お盆を差し出しました。どうやらこの部屋は外からしか鍵をはずせないみたいです。
「おなかすいただろうなって思って・・・おにぎり作ってきました。」
ばれたら七海ちゃんも怒られてしまうため、声はだいぶ落としています。
「気がきくっすね!ありがたいっす。」
太陽君が手を伸ばそうとした瞬間に咲也君の手がお盆ではなく七海ちゃんをつかみました。
「俺はおにぎりよりななたんが欲しい!」
バカとか声がでかいとか突っ込みはたくさんありましたが、七海ちゃんは瞬間的に真っ赤になってお盆を落としました。
部屋には音が響きわたりました。
「兄さんの・・・ばかー!」
その叫びとともに再び鍵は閉められ・・・食料も七海ちゃんもいなくなりました。
呆然とする二人。
「・・・あほっすね。」
太陽君の呟きとじと目ににさすがの咲也君も頭を下げました。
「スイマセンでした。」
しばしの沈黙・・・。
どちらからともなくぐーっとお腹の音が鳴りました。
二人ははじめて顔を合わせて笑いました。
「あ、確か・・・。」
太陽君が制服のポケットをあさりました。そこには小さなチョコレートが2つ。バサッと生徒手帳が落ちたことには気がついていません。
拾い上げた咲也君は気がつきました。
「チョコレート、食べるっす・・・」
ハッと咲也君の手元を見る太陽君。そしてしまったと顔をしかめました。
「それは・・・その・・・」
無言で咲也君は自分のポケットから生徒手帳を取り出して渡しました。
「・・・あれ?」
二人の手帳にはそれぞれの「本当の名前」が書いてありました。
びっくりして二人はまた笑いました。二人は似すぎていたのです。
「まぁ、いろいろあるよな。」
「本当っすよね。」
二人は笑いました。
頭がおかしくなったんじゃないかってくらい笑いました。
「悪かったな。」
「気にしないでほしいっす。ただしこれからは・・・」
スッと太陽君は拳をだしました。ちょっと考えたあと咲也君は自分の拳をコツンとぶつけました。
「「親友だな。」」
こうして二人は一緒の道を歩んでいくことになりました。時には影となり光となり・・・今では誰もがうらやむような最高の友だちになったのです。
