昔からのコンプレックス。誰にだってコンプレックスっていろいろありますよね。
それは顔だったり、体型だったり、たくさんありますね。
これはかなりのレベルのコンプレックスを抱えた不幸な少年(当時はまだ少年だった)のお話です。
「俺の名前は、黒崎です。宜しくお願いします。」
彼は決して、これ以上のことを語りませんでした。それは涼風の中でだけでなく・・・学校でも、なにかの集まりでも同じでした。
「黒崎さんの下の名前ってなんなのかなぁ?」
みんなが不思議に思っていたこと・・・そうなのです彼はなぜかなにがあっても下の名前を言わないのでした。
なんだか、影があってミステリアスでカッコいいよね!なんてなぜか女子からはモテていました。しかし、彼がもてることが気に入らない人がいました。
「・・・どーせ、太郎とかそんな感じなんだぜ。」
明らかに不機嫌な雰囲気を全身から発している咲也君に対して女の子たちは「それはそれで可愛い!」なんてまた騒ぐのでした。
早い話、それを隠していると言うことがカッコいいというのです。
「・・・確かめてやる。」
咲也君がたまに大人気なくなる瞬間です。それから彼はなにげなく黒崎さんのところへといきました。
「あれ?なんだよ、咲也が来るなんて珍しいな。」
勉強中の黒崎さんの教科書をなにげなくとる咲也君。あくまでバレないようにパラパラと教科書をめくります。
「いや・・・ちょっと気になることがあったから資料をさがしててさぁ。」
「お?法律系だったらそこらにあるから持ってっていいぞ。」
いや、彼がさがしているのは「法律」の資料ではなく「黒崎さん」の名前なわけなんですが、まぁ、空気を読めない黒崎さんがそんなことに気がつくわけもないので咲也君はこっそりとさぐりをいれます。
しかし、なにを見ても出てきません。だんだんイライラがつのってきた咲也君はついに強硬手段にでました。
「ちょ?さ、咲也?なにすんだよ!」
「うるせー、黙ってとまってやがれ!」
「まじなんなんだよ?おまえ今日おかしぃって!」
二人がもつれあうように倒れたあたりで、ドアが開きなぜかフラッシュがたかれました。
「はぅ、なんてなんて素敵な光景なのなの!これは絶対えーきゅーほぞんだよー!」
高らかに響く、甲高い女の人の声に二人は思わずそのまま固まっていました。
ドアの前で藍音さんが鼻血を吹きかねない勢いでカメラや携帯をピコピコといじっていました。
「あ、どーぞどーぞ!私なんか気にしないで進めて良んだよ?」
瞬間的に、今までに見せなかったほどの心のシンクロが発生した二人は声をそろえて叫びました。
「「だれがつづけるんですか!!」」
そうして、二人はもうそれ以上なにかをしようという気にはならなかったのでした。確かに火に油を注ぐだけ・・・二人の判断は正しかったのです。
「それで、兄さん?黒崎さんのお名前は何だったの?」
疲れ切った兄を心配するよりも好奇心が勝ってしまった妹は瞳を光らせながら彼を見つめていました。
「・・・・知らない。奴はテストにすら名字しか書いていなかった。」
そして咲也君は思ったのでした。自分だって本当の名前を隠しているのだから、黒崎さんを攻める権利なんてないんだということに・・・。
そうして、なぜか七海ちゃんはその結論に何かを言うわけでもなく静かにマジックペンを取り出しました。
「っと・・・黒崎・・・ごんべー・・・」
書き書き。
何かの書類に七海ちゃんは口で言ったとおりに「黒崎ごんべー」と記入していました。
「なんだよ、それ?」
咲也君が書類を見るとどうやらなにかに公表するための資料のようでした。
「うんとねー、これに名前が欲しいからもしわかんなかった時のためにみんなで名前を考えたんだよー。」
楽しそうに、何回も何回も「ごんべー」と繰り返す七海ちゃんを見て咲也君は静かに確信したのでした。
「・・・絶対に数日後にはあいつの名前がわかる日が来るな・・・。」
そしてそのつぶやきは、そのままの結果として数日後に現れることになったのでした。
ひとりの少年がしばらくの間人知れず涙に暮れていたというのは・・・まぁ、そのうちに嫌でも・・・いつかわかるお話です。
それは顔だったり、体型だったり、たくさんありますね。
これはかなりのレベルのコンプレックスを抱えた不幸な少年(当時はまだ少年だった)のお話です。
「俺の名前は、黒崎です。宜しくお願いします。」
彼は決して、これ以上のことを語りませんでした。それは涼風の中でだけでなく・・・学校でも、なにかの集まりでも同じでした。
「黒崎さんの下の名前ってなんなのかなぁ?」
みんなが不思議に思っていたこと・・・そうなのです彼はなぜかなにがあっても下の名前を言わないのでした。
なんだか、影があってミステリアスでカッコいいよね!なんてなぜか女子からはモテていました。しかし、彼がもてることが気に入らない人がいました。
「・・・どーせ、太郎とかそんな感じなんだぜ。」
明らかに不機嫌な雰囲気を全身から発している咲也君に対して女の子たちは「それはそれで可愛い!」なんてまた騒ぐのでした。
早い話、それを隠していると言うことがカッコいいというのです。
「・・・確かめてやる。」
咲也君がたまに大人気なくなる瞬間です。それから彼はなにげなく黒崎さんのところへといきました。
「あれ?なんだよ、咲也が来るなんて珍しいな。」
勉強中の黒崎さんの教科書をなにげなくとる咲也君。あくまでバレないようにパラパラと教科書をめくります。
「いや・・・ちょっと気になることがあったから資料をさがしててさぁ。」
「お?法律系だったらそこらにあるから持ってっていいぞ。」
いや、彼がさがしているのは「法律」の資料ではなく「黒崎さん」の名前なわけなんですが、まぁ、空気を読めない黒崎さんがそんなことに気がつくわけもないので咲也君はこっそりとさぐりをいれます。
しかし、なにを見ても出てきません。だんだんイライラがつのってきた咲也君はついに強硬手段にでました。
「ちょ?さ、咲也?なにすんだよ!」
「うるせー、黙ってとまってやがれ!」
「まじなんなんだよ?おまえ今日おかしぃって!」
二人がもつれあうように倒れたあたりで、ドアが開きなぜかフラッシュがたかれました。
「はぅ、なんてなんて素敵な光景なのなの!これは絶対えーきゅーほぞんだよー!」
高らかに響く、甲高い女の人の声に二人は思わずそのまま固まっていました。
ドアの前で藍音さんが鼻血を吹きかねない勢いでカメラや携帯をピコピコといじっていました。
「あ、どーぞどーぞ!私なんか気にしないで進めて良んだよ?」
瞬間的に、今までに見せなかったほどの心のシンクロが発生した二人は声をそろえて叫びました。
「「だれがつづけるんですか!!」」
そうして、二人はもうそれ以上なにかをしようという気にはならなかったのでした。確かに火に油を注ぐだけ・・・二人の判断は正しかったのです。
「それで、兄さん?黒崎さんのお名前は何だったの?」
疲れ切った兄を心配するよりも好奇心が勝ってしまった妹は瞳を光らせながら彼を見つめていました。
「・・・・知らない。奴はテストにすら名字しか書いていなかった。」
そして咲也君は思ったのでした。自分だって本当の名前を隠しているのだから、黒崎さんを攻める権利なんてないんだということに・・・。
そうして、なぜか七海ちゃんはその結論に何かを言うわけでもなく静かにマジックペンを取り出しました。
「っと・・・黒崎・・・ごんべー・・・」
書き書き。
何かの書類に七海ちゃんは口で言ったとおりに「黒崎ごんべー」と記入していました。
「なんだよ、それ?」
咲也君が書類を見るとどうやらなにかに公表するための資料のようでした。
「うんとねー、これに名前が欲しいからもしわかんなかった時のためにみんなで名前を考えたんだよー。」
楽しそうに、何回も何回も「ごんべー」と繰り返す七海ちゃんを見て咲也君は静かに確信したのでした。
「・・・絶対に数日後にはあいつの名前がわかる日が来るな・・・。」
そしてそのつぶやきは、そのままの結果として数日後に現れることになったのでした。
ひとりの少年がしばらくの間人知れず涙に暮れていたというのは・・・まぁ、そのうちに嫌でも・・・いつかわかるお話です。
