～再会～

もうすぐあなたが帰ってくるのはわかっていたよ。何回も考えていたんだ。あなたを傷つけてしまった・・・私たちを許してくれるのかな？ドキドキしながら黒崎さんと病院の前にたっていた。今日は咲也兄さんも帰ってきて、今は先に話をしている。

「・・・大丈夫かな？」
正直、不安だった。なんて言ったらいいんだろ。大丈夫だよ。
ごめんなさい。
何かが違う。なんだか、泣きたくなってきた。

「大丈夫、大丈夫。落ち着いて、な？」

体を引き寄せられた。頭を心臓のあたりに押し付けられた。
・・・落ち着く。
大丈夫。その言葉が心を揺らした。
大丈夫。大丈夫だよね？

「おーぃ、なにを人がいない間にラブラブしてんだよ？」

兄さんの声に顔を向けると、そこには入院中の生活雑貨の詰まった荷物を抱えた咲也兄さんと・・・

「珱稚・・・せんせ」

やや顔を下に向けながら、もう一人の男の人が立っていた。しばらく見なかっただけで、なんだかもうずっと会っていなかったような気すらした。私の声に静かに顔を上げて、少しやせた頬を緩ませて小さく微笑んだ。

「珱稚さん・・・」

「・・・黒崎・・・」

二人は向かい合ったまま、何も言わなかった。だって言葉なんて必要ないんだよ。
私たちには、もっと強い絆があるんだから。
黒崎さんが頑張ってくれたから珱稚先生はこうやってまた私たちと一緒にいられるようになった。
いつだか、私たちはまるでFF7のキャラクターのようだねと話し合った。
黒崎さんはもちろんザックスで咲也兄さんがクラウド、珱稚先生はセフィロスで私がエアリス。
去年のクリスマス、まさにそれは現実となった。
それでも珱稚先生は、優しすぎたから私を本気で殺すことができなかった。

私は、約束を果たせなかった。心が死んでいてある意味体の痛みでやっと気がついた。

「・・・珱稚先生。」

少し困ったように、心優しい悪役が私を見た。
複雑そうな表情で、今にも泣き出しそうだった。

ー・・・おまえが夕奈になるんだ。ー

珱稚先生の狂気に染まった顔が浮かんで、少し怖くなった。もう一人の珱稚先生、恭介さんはどうなったのだろう。
・・・私は夕奈さんにはなれなかった。

ー復讐・・・させてくれよ。ー

追いつめられた珱稚先生の苦しみを私はうまく、受け取ることはできなかった。
珱稚先生は私の心を守ろうとして、自分の心を潰してしまった。

「…七海…俺…おまえになんて言ったらいいのか…」

どうしようもなく言葉に詰まった珱稚先生が必死に声を出していた。私は、必死になって泣きたいのを我慢した。
なんて答えたらいいの？私は、珱稚先生になんて言ったら…あなたの罪を消してあげれるの？

「七海…俺は…おまえにこんなことしたくなかったのに…。」

ザラッとした傷跡に手が触れる。傷は治ってもなかなか傷跡までは消えなかった。でも…珱稚先生の方が何倍も何十倍も痛かったはずだ。

「…大切だったのに…おまえのために医者になったのに…。」

珱稚先生の未来を縛ってしまったのは私の罪。本当なら彼にはもっと、もっと違う道があったはずなのに。
医者になったが為に…それをまた利用してしまった。

気がつけば、私たちは涙を流していた。許されない未来が…やっと繋がったんだ。

「珱稚先生…お帰りなさい。」

私は、やっと言葉を見つけることができたんだ。きっと、これ以上の言葉は必要なかったんだ。

ーお帰りなさい。ー

ずっと言いたかったんだ。この言葉を言いたかったんだ。

私と咲也兄さんと黒崎さんは、笑った。
そしたら珱稚先生もつられたように笑った。

「…ただいま。」

言葉が、キレイに重なった。なんて幸せな瞬間だったんだろう。

「帰ろうぜ、みんなまってるから！」

もう一度。私たちは家族として歩き出すことができる。
罪は消えないけど、新しい明日を歩むことはできる。
嬉しい。またみんなで頑張っていこう。私たちが集まったら無敵なんだから！