帰りたい。と思った。
明日には出発しないといけないのだから、そろそろ本格的に準備をしなくてはならない。それに別に永遠のお別れじゃ…ないんだから。
「…そろそろ」
お開きにしようぜ。何度も言いかけては、口を閉じていた。だって、なんかその言葉を言おうとするとみんなが悲しそうに俺を見るから…。
ため息をつくしかない。嬉しいけど、正直ここまできちゃうと迷惑だよ。なんてことは、秘密だけど。
「…咲也ちょっと…。」
「亜水弥?どうしたんだよ?」
この会が始まったと同時に平手打ちをしてくれた亜水弥が俺を隅っこの方へと導いた。みんなの視線を感じながら、俺はあとに続いた。
「…咲也…頑張って来てよね。」
七海のためにも…って言われるんだと思ったら、亜水弥は少し止まって、小さく付け足した。
「みんなのために…頑張って。」
亜水弥の視線にあわせて、俺も後ろを振り返った。
「あ…。」
言葉がでないってのはこういうことなんだと思った。俺の後ろでは、みんながそれぞれに小さな桜の花を持っていた。まだこの辺では咲いていない、桜。俺たちの思い出には必ずこの花があった。
「咲也…ほんまはな、おまえの名前は神話の中の咲耶姫にかけとったんや。」
いつの間に帰ってきたのか暁羅が一歩前にでた。それと同時に、どこからか桜の花びらが舞ってきた。電気が消され、ひらひらと舞う花びらだけが色を持っていた。
「…折り紙?」
よくよく見ればそれは蛍光トリオの塗ってあった折り紙だった。しかも小さく一枚一枚に励ましの言葉が書いてある。それが何枚も…何枚も…降ってくる。
「…寂しかったり、負けそうなときには…一枚を見てください…。」
渚さんの声だった。男は嫌い。特に俺を苦手だと言った、渚さんの声が優しかった。
「じゃ、みんないくよ~。」
明音さんが声を張り上げたあとに静かなピアノの音が響き渡った。
そこに七海が声を乗せる。そして太陽、信也と声が重なっていく。それは咲也のお母さんが作った子守歌。
「…なんで…?」
言葉が出なかった。
驚いたのと、その旋律に心が揺れた。みんなが笑いながら一つのメロディーを奏でる。
緩やかで…優しくて…穏やかな…どこまでもきれいな歌。
あとで聞いたのだが、この曲は咲也のお母さんが来たときに七海が習ったそうだ。お母さんは参加したかったのだけど、いけないから…とたくされたそうだ。
「~♪」
歌が終わった瞬間に、電気がついて…やっと自分が泣いていることに気がついた。拍手が巻きおこって、みんながそれぞれに激励の言葉を口にしてくれた。
頑張れよ。
ナンパはダメだよ!
ちゃんとご飯食べてね。たまには電話しろよ。
たくさんの優しい言葉が、かけられた。
「あ…ありがとうございます。」
他に言葉が見つからなかった。ありがとう…俺に居場所をありがとう。
帰る場所があれば、人は頑張れる。
だから…ありがとう。
涼風にとって…咲也はそれだけ大切だったんです。
「…咲也知っとるか?木花咲耶姫は富士山の女神なんや…おまえも俺たちにとっては、姫なんや。」
いや、姫は七海だろっとかって言うこともなく話を聞いていた。
「兄さん、さくやひめって桜があるんだよ!みんなで見に行こうね!」
「あぁ。行こう!」
これはさよならなんかじゃない。旅立ちなんだ。俺たちは、また一緒に桜を見上げる。そして思い出を…重ねていくんだ。
きっと…幸せな明日になるな…。
朝におびえなくてすむ日が来たことに、俺は本当に…感謝しています。
明日には出発しないといけないのだから、そろそろ本格的に準備をしなくてはならない。それに別に永遠のお別れじゃ…ないんだから。
「…そろそろ」
お開きにしようぜ。何度も言いかけては、口を閉じていた。だって、なんかその言葉を言おうとするとみんなが悲しそうに俺を見るから…。
ため息をつくしかない。嬉しいけど、正直ここまできちゃうと迷惑だよ。なんてことは、秘密だけど。
「…咲也ちょっと…。」
「亜水弥?どうしたんだよ?」
この会が始まったと同時に平手打ちをしてくれた亜水弥が俺を隅っこの方へと導いた。みんなの視線を感じながら、俺はあとに続いた。
「…咲也…頑張って来てよね。」
七海のためにも…って言われるんだと思ったら、亜水弥は少し止まって、小さく付け足した。
「みんなのために…頑張って。」
亜水弥の視線にあわせて、俺も後ろを振り返った。
「あ…。」
言葉がでないってのはこういうことなんだと思った。俺の後ろでは、みんながそれぞれに小さな桜の花を持っていた。まだこの辺では咲いていない、桜。俺たちの思い出には必ずこの花があった。
「咲也…ほんまはな、おまえの名前は神話の中の咲耶姫にかけとったんや。」
いつの間に帰ってきたのか暁羅が一歩前にでた。それと同時に、どこからか桜の花びらが舞ってきた。電気が消され、ひらひらと舞う花びらだけが色を持っていた。
「…折り紙?」
よくよく見ればそれは蛍光トリオの塗ってあった折り紙だった。しかも小さく一枚一枚に励ましの言葉が書いてある。それが何枚も…何枚も…降ってくる。
「…寂しかったり、負けそうなときには…一枚を見てください…。」
渚さんの声だった。男は嫌い。特に俺を苦手だと言った、渚さんの声が優しかった。
「じゃ、みんないくよ~。」
明音さんが声を張り上げたあとに静かなピアノの音が響き渡った。
そこに七海が声を乗せる。そして太陽、信也と声が重なっていく。それは咲也のお母さんが作った子守歌。
「…なんで…?」
言葉が出なかった。
驚いたのと、その旋律に心が揺れた。みんなが笑いながら一つのメロディーを奏でる。
緩やかで…優しくて…穏やかな…どこまでもきれいな歌。
あとで聞いたのだが、この曲は咲也のお母さんが来たときに七海が習ったそうだ。お母さんは参加したかったのだけど、いけないから…とたくされたそうだ。
「~♪」
歌が終わった瞬間に、電気がついて…やっと自分が泣いていることに気がついた。拍手が巻きおこって、みんながそれぞれに激励の言葉を口にしてくれた。
頑張れよ。
ナンパはダメだよ!
ちゃんとご飯食べてね。たまには電話しろよ。
たくさんの優しい言葉が、かけられた。
「あ…ありがとうございます。」
他に言葉が見つからなかった。ありがとう…俺に居場所をありがとう。
帰る場所があれば、人は頑張れる。
だから…ありがとう。
涼風にとって…咲也はそれだけ大切だったんです。
「…咲也知っとるか?木花咲耶姫は富士山の女神なんや…おまえも俺たちにとっては、姫なんや。」
いや、姫は七海だろっとかって言うこともなく話を聞いていた。
「兄さん、さくやひめって桜があるんだよ!みんなで見に行こうね!」
「あぁ。行こう!」
これはさよならなんかじゃない。旅立ちなんだ。俺たちは、また一緒に桜を見上げる。そして思い出を…重ねていくんだ。
きっと…幸せな明日になるな…。
朝におびえなくてすむ日が来たことに、俺は本当に…感謝しています。
