黒崎さんが咲也君に呼び出され、なぜかミーティングルームで机を挟んで向かい合っています。ちなみに七海ちゃんは、毎年恒例の鼻血が止まらない時期なので、只今往人さんに止血剤をもらいに行っています。
「咲也?どうしたんだよ。そんなに改まってこんなところに呼んだりして…。」
確かに団長を交代するときならともかく、ずっと一緒にいたわけですから今更な感じがします。咲也君はなにやら一冊の本を取り出しました。
「…これを…おまえに貸してやるよ。」
「?なんだこれ?」
なにやら、分厚いその本らしきものには~取り扱い説明書~と書かれていました。
「…説明書だよ。」
この厚さからいって…いったいどれだけ複雑な機械なのかはわかりませんが、なにやらとても重要なものであるのはさすがの黒崎さんでも直感的にわかりました。
「なんのだよ?」
なんとなく、受け取る気にならなくてついついオウム返しをしてしまいます。というのも黒崎さんは機械と説明書が大の苦手なんです。電子レンジで卵を爆発させるくらい…苦手なんです。
「…七海のだ。」
「へっ?七海の??だいたいのプロフィールはもらったぞ。」
確かに、パートナーを交代したときにすでに七海ちゃんと黒崎さんはお互いのだいたいのプロフィールが書かれたものを交換したのです。だからなんで今更…??
「それには、俺が長年培った上で学んだ様々な対処法が書かれているんだ。」
よくよく見ると確かに、表紙の文字は咲也君のものでした。いったいなにが…ちょっと躊躇しましたが黒崎さんは開けてみることにしました。
「こ、これは…!!」
「…おまえ、俺がいなくなる前に全部頭に入れろよ。」
ざっと360ページありました。咲也君がいなくなるのは4月1日、びっちりと書かれた文字は読むことすら無理なんじゃないかというような量になっています。絶句をしながら、黒崎さんはそれをパラパラめくってみました。
「あ、汚すなよ??俺の大切な思い出なんだから!」
そこいらの親バカを超えた愛を感じます。
「あ…鼻血が止まらないときの対処法とかまである。」
お世辞にもうまいとは言えないイラストつきです。確かにさっきいきなり鼻血がでた七海ちゃんにテキパキ動く咲也君をしりめにどう対応したらいいか黒崎さんはわかりませんでした。
「あー、それはこれからマジ使うから覚えろよ。」
丁寧に説明されていて、最悪の場合に備えて主治医の携帯番号までそえられていました。
「おまえさー…確かに七海のこと大切にはしてくれてるけど、まだブランクがあるから、まずは身体のことはちゃんと対処法を知っててもらいたいんだ。」
確かにいなくなった間に七海ちゃんの病気の症状は驚くほど変わりました。良くもなっていれば…悪くもなっています。
「…これはなかなか…大変だな。」
倒れたときやパニックになったとき、一番そばにいる人がやらなければならないこと…。
「そこは、本当に頼むよ。」
病気にたいしてが終わると、黒崎さんはページを開いたままフリーズしました。
「…これは…?」
咲也君が身を乗り出して内容を確認します。
「それは、兄分が足りなくなったときにかけてやる甘い言葉集だ。」
それは甘すぎ…胸焼けしそうです。言うのにはかなり勇気がいります。咲也君なら余裕でしようが…なかなかハイレベルです。
「……おまえ、なにしてんだよ?」
そこはかなり放送コードぎりぎりな内容が詰まっていました。
「あ!そこはまねすんなよ!七海をいじめていいのは俺だけだから。」
「相変わらず…ドS…というか…なんというか…。」
遠慮したため、変態とはいえませんでした。
「まねすんなよ?」
念を押されました。
「まねできません。」
まぁ、これは普通の人には無理です。それからもたくさんのことが書いてありました。二人が過ごした時間の長さがつまっています。…絶対覚えきれない。確かな自信がありました。それよりも、なによりも一字一字に込められた咲也君の思いが…なんとなく胸を苦しめます。黒崎さんはちょっと迷ったあとに手を止めました。
「…やっぱりこれは咲也が持ってろよ。」
「え?なんでだよ?」
黒崎さんはゆっくり、説明書を閉じて咲也君へ渡しました。
「それは…おまえと七海の大切な思い出だろ?すぐにはうまくはいかないかもしれないけど、俺は俺なりに…作っていくよ。」
迷いのない視線。
いつだって…黒崎さんはまっすぐにみんなを見ていました。
「…これだから…かなわないんだよ…」
咲也君はちょっと悔しそうにしたあと、静かに説明書を受け取りました。
「へ?なんだって?」
聞こえないくらい小さな声、それからゆっくり立ち上がり…咲也君は頭を下げました。
「七海を…頼みます。」
やっと、安心したよとつけ加えて…微笑みました。黒崎さんもゆっくり頭を下げました。
「…お預かりします。」
ちなみに部屋の外では、バッチリ話を聞いていた七海ちゃんが自分がもらった黒崎さんの説明書を見つめながら、考えていました。
「…私も、また新しく作ろうかな。」
黒崎さんはみんなに新しい気持ちを抱かせていたのでした。
「咲也?どうしたんだよ。そんなに改まってこんなところに呼んだりして…。」
確かに団長を交代するときならともかく、ずっと一緒にいたわけですから今更な感じがします。咲也君はなにやら一冊の本を取り出しました。
「…これを…おまえに貸してやるよ。」
「?なんだこれ?」
なにやら、分厚いその本らしきものには~取り扱い説明書~と書かれていました。
「…説明書だよ。」
この厚さからいって…いったいどれだけ複雑な機械なのかはわかりませんが、なにやらとても重要なものであるのはさすがの黒崎さんでも直感的にわかりました。
「なんのだよ?」
なんとなく、受け取る気にならなくてついついオウム返しをしてしまいます。というのも黒崎さんは機械と説明書が大の苦手なんです。電子レンジで卵を爆発させるくらい…苦手なんです。
「…七海のだ。」
「へっ?七海の??だいたいのプロフィールはもらったぞ。」
確かに、パートナーを交代したときにすでに七海ちゃんと黒崎さんはお互いのだいたいのプロフィールが書かれたものを交換したのです。だからなんで今更…??
「それには、俺が長年培った上で学んだ様々な対処法が書かれているんだ。」
よくよく見ると確かに、表紙の文字は咲也君のものでした。いったいなにが…ちょっと躊躇しましたが黒崎さんは開けてみることにしました。
「こ、これは…!!」
「…おまえ、俺がいなくなる前に全部頭に入れろよ。」
ざっと360ページありました。咲也君がいなくなるのは4月1日、びっちりと書かれた文字は読むことすら無理なんじゃないかというような量になっています。絶句をしながら、黒崎さんはそれをパラパラめくってみました。
「あ、汚すなよ??俺の大切な思い出なんだから!」
そこいらの親バカを超えた愛を感じます。
「あ…鼻血が止まらないときの対処法とかまである。」
お世辞にもうまいとは言えないイラストつきです。確かにさっきいきなり鼻血がでた七海ちゃんにテキパキ動く咲也君をしりめにどう対応したらいいか黒崎さんはわかりませんでした。
「あー、それはこれからマジ使うから覚えろよ。」
丁寧に説明されていて、最悪の場合に備えて主治医の携帯番号までそえられていました。
「おまえさー…確かに七海のこと大切にはしてくれてるけど、まだブランクがあるから、まずは身体のことはちゃんと対処法を知っててもらいたいんだ。」
確かにいなくなった間に七海ちゃんの病気の症状は驚くほど変わりました。良くもなっていれば…悪くもなっています。
「…これはなかなか…大変だな。」
倒れたときやパニックになったとき、一番そばにいる人がやらなければならないこと…。
「そこは、本当に頼むよ。」
病気にたいしてが終わると、黒崎さんはページを開いたままフリーズしました。
「…これは…?」
咲也君が身を乗り出して内容を確認します。
「それは、兄分が足りなくなったときにかけてやる甘い言葉集だ。」
それは甘すぎ…胸焼けしそうです。言うのにはかなり勇気がいります。咲也君なら余裕でしようが…なかなかハイレベルです。
「……おまえ、なにしてんだよ?」
そこはかなり放送コードぎりぎりな内容が詰まっていました。
「あ!そこはまねすんなよ!七海をいじめていいのは俺だけだから。」
「相変わらず…ドS…というか…なんというか…。」
遠慮したため、変態とはいえませんでした。
「まねすんなよ?」
念を押されました。
「まねできません。」
まぁ、これは普通の人には無理です。それからもたくさんのことが書いてありました。二人が過ごした時間の長さがつまっています。…絶対覚えきれない。確かな自信がありました。それよりも、なによりも一字一字に込められた咲也君の思いが…なんとなく胸を苦しめます。黒崎さんはちょっと迷ったあとに手を止めました。
「…やっぱりこれは咲也が持ってろよ。」
「え?なんでだよ?」
黒崎さんはゆっくり、説明書を閉じて咲也君へ渡しました。
「それは…おまえと七海の大切な思い出だろ?すぐにはうまくはいかないかもしれないけど、俺は俺なりに…作っていくよ。」
迷いのない視線。
いつだって…黒崎さんはまっすぐにみんなを見ていました。
「…これだから…かなわないんだよ…」
咲也君はちょっと悔しそうにしたあと、静かに説明書を受け取りました。
「へ?なんだって?」
聞こえないくらい小さな声、それからゆっくり立ち上がり…咲也君は頭を下げました。
「七海を…頼みます。」
やっと、安心したよとつけ加えて…微笑みました。黒崎さんもゆっくり頭を下げました。
「…お預かりします。」
ちなみに部屋の外では、バッチリ話を聞いていた七海ちゃんが自分がもらった黒崎さんの説明書を見つめながら、考えていました。
「…私も、また新しく作ろうかな。」
黒崎さんはみんなに新しい気持ちを抱かせていたのでした。
