別れの日が近づいている、もう長くはこんな日々が続かないのを三人は三人なりに理解していた。そして…一人、自分の将来について決意をした人物がいた。
いつだって…ちょっと目を離せば意外なことをしだす。それは涼風のメンバーには誰にでもいえることだった。しかし今回はかなり意外な方向へと物語が進んでいた。
「…はぁ?なんで今日練習日じゃないだろ?」
不機嫌そうに電話をしているのは咲也君。黒崎さんも横でそんな様子を見ている。
一人かけている。
最大のトラブルメーカーが…。
分かったよ!ため息と様々な感情が混じりながら電話を切ると二人は視線を交わらせた。
「で、なんだって?」
少し不安げな黒崎さんを前に大げさに肩を落としてため息をつきながら咲也君が答える。
「なんかしらんが、公民館に妹を預かってるんだってさ。」
ため息。
あの子はまたなにかに巻き込まれたらしい。
昼ご飯の食材を買いに行ったまま…彼らの妹は姿を消した。電話にでない。
そして今の電話は往人さんから。
往人さんと七海ちゃんの仲はあまりよろしくない…だが言いようによってはとても相性がいい。
そんな彼曰く、七海ちゃんはいつも劇の練習を行う公民館に連れ去られたらしい。
「…行くか?」
「あぁ。」
黒崎さんは会社に少し遅れますと連絡を入れるとコートを羽織って、車に乗り込んだ。
咲也君がおまえそろそろクビになるなっと笑えない状況を口にした。
公民館はすぐ近くだ。
二人は特に会話をすることもなくたどり着いた。顔なじみのおじさんに挨拶をする。
「いやー…お二人とも愛されてますね。」
「へっ?」
なんだかにやにやしながらおじさんが通してくれた。
二人は短く確認の意味を込めて視線を交わすと、体育館へと続く扉を開いた。
「なー!?」「え!?」
思わず固まる。
そこには団員たちが待っていた。そしてステージには一人の女の子が立っている。
二人が来るのを見計らったかのように瞬間的にライトがついた。
「みーんな!!もりあがっていこー!!」
やや緊張したような声。めちゃくちゃ聞き覚えのある声。
「いぇーい!」
「ガンバレー!」
「やっちゃえー!」
アップテンポなメロディーが流れる。
なぜか全員ノリノリ…。下を向いていたステージの女の子が顔を上げる。
「「七海!?」」
ステージにいたのはピンクバージョンの初音さん。揺れるツインテール、ちなみに猫耳つき。手にはきちんとネギ装備。
「ぺったん、ぺったん…♪」
「なぜにその選曲!!」
と叫んだ咲也君の声は加熱した団員たちの声にかき消されます。
ねらったのかのような振り付け。
ねらったのかのような声。
ねこにゃんダンスとか懐かしすぎる。
「…完璧だ…。」
黒崎さんは呟きました。以前のイベントで頑なに練習をこばみ、本番では歌詞はかむわ、転ぶわでみんなが手助けしたくなったダンスが見違えるほどうまくなっていたのです。
「次行くよー!」
「いいぞーなな!」
「ななじゃなーぃ!莉桜って呼んでー」
息切れすることもなく、アップテンポな曲を歌い続ける七海ちゃんに言葉がでない咲也君。
楽しそうに歌っている。それは今までに見たことのない姿だった。
そして最後に、くるっと回ってステージから二人を指さす。
ーしん…と静まる。
「咲也兄さん、私…わた…あきらめない…から…」
さすがに息があがっている。膝に手をついて湯かを見ている。マイクを使ってもぎりぎり声が聞き取れるかというライン。
「歌も…ダンスも…演技も…練習する…勉強も…文章も…やれば…できる…って…分かったから!」
だいぶ…苦しい。
運動不足だったのを恨みたくなる。
「…七海じゃ…なれないなら…私…橘莉桜にだってなってみせる…。」
フラフラしている。…このままじゃ倒れる!駆け出した咲也君がステージに飛び乗ろうとした瞬間。
顔を上げた七海ちゃんと目が合う。
見とれてしまうような完璧な笑顔。
「私、どんな手を…使っても…自分の力で…あなたと同じ…世界に立つ!」
その瞬間、糸が切れたかのようにひざを突いて倒れる七海ちゃんを抱き留める咲也君。
誰からともなく、拍手が巻き起こる。
息をついた。ちゃんとできた…よかった。
「…兄さん…?」
しまった…呆れたかな?
「……。」
?聞き取れなかった。
顔を上げたら、暖かい液体が頬にふれた。
それは、たぶん涼風にいた誰もが初めて見た咲也君の表情だった…。
笑いながら泣いてる。
「…愛してる…もー、可愛い、なんでこんなに可愛いんだよ!」
「にょわーー!ちょ、ちょっと兄さん、痛い痛い…。」
ぐりぐりと頭をなでる。兄バカだけど…確かに兄バカだけど…、できた妹だって。
「…これからは…俺がプロデュースする。」
意外な言葉。
どうやら二人はなんらかの協定を結んだらしい。
「…あとは俺もいるし、な。」
若干忘れられていた黒崎さんがちゃんと笑ってました。
「俺もいるっす!」
「私もーいるよ!」
みんなの声が集まって、やっぱり笑顔が残った。
いつの間にか、成長したもんだ…。
感慨深い瞬間でした。
これだから、これだからここからは出ていけないんだ。
っと咲也君は笑っていました。
いつだって…ちょっと目を離せば意外なことをしだす。それは涼風のメンバーには誰にでもいえることだった。しかし今回はかなり意外な方向へと物語が進んでいた。
「…はぁ?なんで今日練習日じゃないだろ?」
不機嫌そうに電話をしているのは咲也君。黒崎さんも横でそんな様子を見ている。
一人かけている。
最大のトラブルメーカーが…。
分かったよ!ため息と様々な感情が混じりながら電話を切ると二人は視線を交わらせた。
「で、なんだって?」
少し不安げな黒崎さんを前に大げさに肩を落としてため息をつきながら咲也君が答える。
「なんかしらんが、公民館に妹を預かってるんだってさ。」
ため息。
あの子はまたなにかに巻き込まれたらしい。
昼ご飯の食材を買いに行ったまま…彼らの妹は姿を消した。電話にでない。
そして今の電話は往人さんから。
往人さんと七海ちゃんの仲はあまりよろしくない…だが言いようによってはとても相性がいい。
そんな彼曰く、七海ちゃんはいつも劇の練習を行う公民館に連れ去られたらしい。
「…行くか?」
「あぁ。」
黒崎さんは会社に少し遅れますと連絡を入れるとコートを羽織って、車に乗り込んだ。
咲也君がおまえそろそろクビになるなっと笑えない状況を口にした。
公民館はすぐ近くだ。
二人は特に会話をすることもなくたどり着いた。顔なじみのおじさんに挨拶をする。
「いやー…お二人とも愛されてますね。」
「へっ?」
なんだかにやにやしながらおじさんが通してくれた。
二人は短く確認の意味を込めて視線を交わすと、体育館へと続く扉を開いた。
「なー!?」「え!?」
思わず固まる。
そこには団員たちが待っていた。そしてステージには一人の女の子が立っている。
二人が来るのを見計らったかのように瞬間的にライトがついた。
「みーんな!!もりあがっていこー!!」
やや緊張したような声。めちゃくちゃ聞き覚えのある声。
「いぇーい!」
「ガンバレー!」
「やっちゃえー!」
アップテンポなメロディーが流れる。
なぜか全員ノリノリ…。下を向いていたステージの女の子が顔を上げる。
「「七海!?」」
ステージにいたのはピンクバージョンの初音さん。揺れるツインテール、ちなみに猫耳つき。手にはきちんとネギ装備。
「ぺったん、ぺったん…♪」
「なぜにその選曲!!」
と叫んだ咲也君の声は加熱した団員たちの声にかき消されます。
ねらったのかのような振り付け。
ねらったのかのような声。
ねこにゃんダンスとか懐かしすぎる。
「…完璧だ…。」
黒崎さんは呟きました。以前のイベントで頑なに練習をこばみ、本番では歌詞はかむわ、転ぶわでみんなが手助けしたくなったダンスが見違えるほどうまくなっていたのです。
「次行くよー!」
「いいぞーなな!」
「ななじゃなーぃ!莉桜って呼んでー」
息切れすることもなく、アップテンポな曲を歌い続ける七海ちゃんに言葉がでない咲也君。
楽しそうに歌っている。それは今までに見たことのない姿だった。
そして最後に、くるっと回ってステージから二人を指さす。
ーしん…と静まる。
「咲也兄さん、私…わた…あきらめない…から…」
さすがに息があがっている。膝に手をついて湯かを見ている。マイクを使ってもぎりぎり声が聞き取れるかというライン。
「歌も…ダンスも…演技も…練習する…勉強も…文章も…やれば…できる…って…分かったから!」
だいぶ…苦しい。
運動不足だったのを恨みたくなる。
「…七海じゃ…なれないなら…私…橘莉桜にだってなってみせる…。」
フラフラしている。…このままじゃ倒れる!駆け出した咲也君がステージに飛び乗ろうとした瞬間。
顔を上げた七海ちゃんと目が合う。
見とれてしまうような完璧な笑顔。
「私、どんな手を…使っても…自分の力で…あなたと同じ…世界に立つ!」
その瞬間、糸が切れたかのようにひざを突いて倒れる七海ちゃんを抱き留める咲也君。
誰からともなく、拍手が巻き起こる。
息をついた。ちゃんとできた…よかった。
「…兄さん…?」
しまった…呆れたかな?
「……。」
?聞き取れなかった。
顔を上げたら、暖かい液体が頬にふれた。
それは、たぶん涼風にいた誰もが初めて見た咲也君の表情だった…。
笑いながら泣いてる。
「…愛してる…もー、可愛い、なんでこんなに可愛いんだよ!」
「にょわーー!ちょ、ちょっと兄さん、痛い痛い…。」
ぐりぐりと頭をなでる。兄バカだけど…確かに兄バカだけど…、できた妹だって。
「…これからは…俺がプロデュースする。」
意外な言葉。
どうやら二人はなんらかの協定を結んだらしい。
「…あとは俺もいるし、な。」
若干忘れられていた黒崎さんがちゃんと笑ってました。
「俺もいるっす!」
「私もーいるよ!」
みんなの声が集まって、やっぱり笑顔が残った。
いつの間にか、成長したもんだ…。
感慨深い瞬間でした。
これだから、これだからここからは出ていけないんだ。
っと咲也君は笑っていました。
