エアリスが逃げろと言った。クラウドを連れて逃げろと言った。
分かってる。
エアリスは戦いが好きじゃないことくらい。
だから俺たちに普通に生きるために「逃げろ」と言ったんだ。
なんで私も連れて逃げてと言わないんだ?俺はエアリスのボディガードなのに。
危険な場所にエアリスを置いていけるかよ!?

クラウドを拘束しているタークス…知らない顔だ。…シスネやツォンたちだったら、話し合っていたかもしれない。
意識を集中させる。
囲まれている。
10人…いや、15人か…。タークスは3人…幸いなことにソルジャーはいない。

「戦わないで!」

エアリスの声が聞こえた。いや、心に流れ込んできた。
エアリスを傷つけたくはない。
…クラウド…を置いて…ダメだ。

深呼吸。
気合いを入れるために手をあわせた。
エアリスの悲しそうな顔が見えた。

「…ごめん。」

小さく呟いた。
集中。
…しばらく戦っていない。平和ぼけした元ソルジャー…カッコ悪いな。

「でも…悪くねぇ!」

やれるか?
違う。やるしかねぇ…!俺はバスターソード…俺たちの誇りをかまえた。

「…われわれに逆らうつもりですか?」

タークスの一人が俺に冷たい視線をむけた。

「逆らうもなにも…初めから俺は神羅に従ってないもんでね。」

牽制をしながら、考える。距離は…50メートルと言ったところか…相手は銃だ。接近戦にしなくては勝ち目はない。

「それならなぜソルジャーになったのですか?」
なぜか…なんでだろうね。答えは、簡単さ。

ー英雄になりたかったー

「さぁ、女の子にモテそうだったから…かな。」
「…あなたらしいですね。」

あらら、嘘じゃないのにあきれてらっしゃる。
さて、残念ながらおしゃべりの時間じゃないんだよな~。
難しい戦略は苦手だ。

前を見据えて、あとは押すのみ!!

「いらっしゃいませ~!」

体は若干重いが…大丈夫。いける。
手前にいる奴から切りかかった。

「きゃーー!!」

敵を切る直前で、止まった。
エアリスの悲鳴!?しまった…後ろにもいやがったのか?
俺は振り返った。

「…ツォ…ン?」

タークス…ともに戦った仲間のはずのツォンがエアリスを抱えていた。
表情は読めない。

「…悪いな…」

「そんな!ど…」

「ザックースー!!」

どーして?その言葉を言う前に…俺の耳にはクラウドの絶叫が響いた。

ゴスッ…鈍い音とともに…頭から何かが流れるのを感じた。
立っていられなくなって、膝をついた。

しまった…二度も同じ手をくらうなんて、今日の俺は不注意すぎた。
ツォンがなにかを言ってる…。

「…すまない…。」

…謝るなよ。怒れなくなるだろぅが。

「…サンプルの二人。ザックスとクラウド…それからセトラの娘、エアリスを回収しました。…」
…また研究所にでも送られるのか?俺は立ち上がろうと、何度も力を込めた。…ダメだ…たてね。
エアリスに…まだ空見せてないのにな。

俺はゆっくり世界が赤色に染まるのを感じていた。