ちょきちょき、ちょきちょき・・・次のお芝居で使う小道具を準備するためにはさみで紙を切る七海ちゃんと太陽君。

比較的単純な作業のために、不器用な七海ちゃんでもなんとかこなせます。

それにしても・・・ちょっとぼーーっとしすぎではあります。


「な・・・・み・・なな・・・七海??」


太陽君の呼びかけにも反応せずに、ひたすらに紙を切る七海ちゃん。普段の彼女の落ち着きのない行動からしたら考えられません。何度目かの呼びかけにも反応を示さなかったため、しかたなしに太陽君は無理やり七海ちゃんの手をつかんで止めました。そこでやっと気がついた七海ちゃんは、目を丸くして「どうしたんですか??」っと言いたげに太陽君を見つめました。


「七海・・・言いにくいんっすけど・・・切りすぎっす。」


はっと自分の手元の紙と、床に散らばった紙を見つめる七海ちゃん。すぐにしまった・・・・っと思いました。もはや、何を作っていたのかすらわからないような惨事が起こっていました。


「・・・電話、したらどうっすか?」


「・・・誰にですか・・・。」


「誰にって・・・決まっているっすよね?」


もちろんそんなの決まっていますし、七海ちゃんだってわかっていないわけではありません。最近の自分の心が落ち着いていないのは、なんだかんだで手のかかる二人がいないことにあることくらい・・・ちゃんと分かっているのです。

早い話が意地になっていたのです。別に二人がいなくても生きていけるってことを証明したかったともいえます。

そのくらいのことは誰の目から見ても、わかることでした。


「なぁんか・・・ななたちはみんな不器用っすよね。もっと素直になったらいいっすよ。」


その名の通りに太陽みたいに微笑んで、太陽君は携帯電話を手渡しました。

無機質なコール音が響きます。それに比例するように大きくなる心臓の音・・・。

なんて言おう・・・たった数日離れていただけなのに・・・思いは・・・積もる一方で・・。


「もしもし?」


兄さんの声!!なんだか、気持ちがあふれて苦しくて仕方がありません。


「あ・・・兄さ・・・」「くーーろーーーさーーき!!!どこ触ってんだよ!!やめろって!!おぃ、こらくすぐったいだろ!!」


・・・仲よさそう・・っていうか・・・これってむしろ邪魔なのは・・・私だったの??


「あーーーくそっ・・・ごめんな??なんかあったのか?」

「いえ・・・・もういいです。さようなら!!」


プチっと電話を切って七海ちゃんは暗黒の微笑みを浮かべました。


「お二人はとーーーっても幸せそうでした。」


「七海!!今のはあれっすよ!!・・・スキンシップっすよ!!ほら、外国じゃ普通っす!!」


太陽君の必死のフォローを聞きながら七海ちゃんは、にっこりとしました。


「・・・気にしてませんよ・・・帰ってきたら・・ハリセンボン飲んでくれれば。」


あぁ・・・二人とも・・・余計なことしてごめんなさいっす・・・っと太陽君は二人のいるはずの遠い空を見上げて、これから起こる惨劇を思い浮かべて必死に謝ったとか・・・謝ってないとか・・。