劇のことや玲君のことでばたばたしていて、最近買い出しをしていなかった七海ちゃんは夕方に駅のデパートに行くことにしました。仕事帰りの黒崎さんと、大学帰りの咲也君とおちあい、たまには外食をしようと言うことになっていました。
待ち合わせ場所に一番についた七海ちゃんは、ふと自分の後ろのショーウィンドウに飾られているピンク色のドレスに目を奪われていました。下の方が片方だけフリルになっていて、お姫様みたいにふわふわしたスカート。黒いリボンがアクセントになっていて、スカートはやや短めですがいかにも女の子!って感じのドレスでした。
「…可愛い…」
しかし、買ったとしても着る機会はありません。あまり見ていると諦められなくなるので、未練を断ち切るように前を向きました。
「きゃ!!に、兄さん!いつからいたんですか!!」
ほぼ真後ろに咲也君が立っていたのでした。これに気がつかない方が難しいくらいの距離でした。
「ふーん…可愛いじゃん。なな、着てみたら?」
咲也君がお店の人に声をかけようとするのを七海ちゃんが焦って止めます。
「いいの!いいの!…ちょっと可愛いなって思ってみてただけだから!」
「ならなおさら着てみろよ、可愛いじゃんこれ?」
いつものことながら、強引な咲也君に困り切ってしまいます。
「いいの…多分似合わないから…はずかしぃ。」
と顔を赤くしながらうつむいている間に咲也君は店員さんに声をかけていました。
「すいません、これ。試着したいんですけど!」
「ちょ…ちょっと、兄さん!」
「はい、かしこまりました。」
テキパキとマネキンから店員さんがドレスを脱がせています。もはや逃げ道がなくなった七海ちゃん。しぶしぶ店員さんに促され、試着室へと向かうのでした。
そして、ドレスに着替えたわけですが…なんだかかなり服に飲まれている気がしてなかなか出ていけないのでした。
「七海?いつまで着替えてんの?」
咲也君の催促の声にしかたがないので、意を決して、カーテンを開けます。
「お、いいじゃん。めちゃくちゃ可愛い!回ってみ?」
「あ、あぅ~。」
もはや顔が上げられず、とりあえずターンしてみるとふわりとスカートも揺れます。
「とてもよくお似合いですよ。」
店員さんの声。
「確かに可愛い…でもなぁ、スカートが短すぎる!」
「…えっ?」
思わず顔を上げるとそこにはもう一人…黒崎さんが立っていたのでした。
ど、どーしよ??こんな乙女チックなのが好きだなんてバレちゃったら!
慌てふためく七海ちゃんをよそに二人は喧嘩を始めます。
「いーんだよ!むしろ七海にはロングスカートのほうが似合わない。若いうちは、足見せた方が可愛いの!わかったかなぁ~堅物の黒崎さん?」
「いや、嫁入り前の女の子なんだから、もっと露出は控えるべきだな。それから色も七海にはもっとシックな色のが似合う。」
と、違うドレスを持ってきた黒崎さん。同じピンク色でももっと落ち着いた感じのドレスでした。
なんだか二人がにらみ合っています。店員さんと七海ちゃんは苦笑いを浮かべます。
「ななには絶対に元気でガーリーなドレスだよ!」
「いや、清楚でお嬢様なドレスだ。」
なにやら店の横を通る人たちが足を止めて、その様子を見ています。もはや、七海ちゃんは逃げ出したくて仕方がありません。
言い争うこと30分。
「「七海はどっちが好きなんだよ!…ってあれ?」」
もはや七海ちゃんの姿はなく、店員さんが申し訳なさそうに答えました。
「お連れ様なら、先に買い物に行かれました。」
呆然とする二人。
「…黒崎が悪いんだからな…。」
「いや、おまえだろ?」
結局、二人は七海ちゃんが買い出しを終えて戻ってくるまで騒いでいました。
一番の被害者の店員さんに七海ちゃんは何度も頭を下げるのでした。
待ち合わせ場所に一番についた七海ちゃんは、ふと自分の後ろのショーウィンドウに飾られているピンク色のドレスに目を奪われていました。下の方が片方だけフリルになっていて、お姫様みたいにふわふわしたスカート。黒いリボンがアクセントになっていて、スカートはやや短めですがいかにも女の子!って感じのドレスでした。
「…可愛い…」
しかし、買ったとしても着る機会はありません。あまり見ていると諦められなくなるので、未練を断ち切るように前を向きました。
「きゃ!!に、兄さん!いつからいたんですか!!」
ほぼ真後ろに咲也君が立っていたのでした。これに気がつかない方が難しいくらいの距離でした。
「ふーん…可愛いじゃん。なな、着てみたら?」
咲也君がお店の人に声をかけようとするのを七海ちゃんが焦って止めます。
「いいの!いいの!…ちょっと可愛いなって思ってみてただけだから!」
「ならなおさら着てみろよ、可愛いじゃんこれ?」
いつものことながら、強引な咲也君に困り切ってしまいます。
「いいの…多分似合わないから…はずかしぃ。」
と顔を赤くしながらうつむいている間に咲也君は店員さんに声をかけていました。
「すいません、これ。試着したいんですけど!」
「ちょ…ちょっと、兄さん!」
「はい、かしこまりました。」
テキパキとマネキンから店員さんがドレスを脱がせています。もはや逃げ道がなくなった七海ちゃん。しぶしぶ店員さんに促され、試着室へと向かうのでした。
そして、ドレスに着替えたわけですが…なんだかかなり服に飲まれている気がしてなかなか出ていけないのでした。
「七海?いつまで着替えてんの?」
咲也君の催促の声にしかたがないので、意を決して、カーテンを開けます。
「お、いいじゃん。めちゃくちゃ可愛い!回ってみ?」
「あ、あぅ~。」
もはや顔が上げられず、とりあえずターンしてみるとふわりとスカートも揺れます。
「とてもよくお似合いですよ。」
店員さんの声。
「確かに可愛い…でもなぁ、スカートが短すぎる!」
「…えっ?」
思わず顔を上げるとそこにはもう一人…黒崎さんが立っていたのでした。
ど、どーしよ??こんな乙女チックなのが好きだなんてバレちゃったら!
慌てふためく七海ちゃんをよそに二人は喧嘩を始めます。
「いーんだよ!むしろ七海にはロングスカートのほうが似合わない。若いうちは、足見せた方が可愛いの!わかったかなぁ~堅物の黒崎さん?」
「いや、嫁入り前の女の子なんだから、もっと露出は控えるべきだな。それから色も七海にはもっとシックな色のが似合う。」
と、違うドレスを持ってきた黒崎さん。同じピンク色でももっと落ち着いた感じのドレスでした。
なんだか二人がにらみ合っています。店員さんと七海ちゃんは苦笑いを浮かべます。
「ななには絶対に元気でガーリーなドレスだよ!」
「いや、清楚でお嬢様なドレスだ。」
なにやら店の横を通る人たちが足を止めて、その様子を見ています。もはや、七海ちゃんは逃げ出したくて仕方がありません。
言い争うこと30分。
「「七海はどっちが好きなんだよ!…ってあれ?」」
もはや七海ちゃんの姿はなく、店員さんが申し訳なさそうに答えました。
「お連れ様なら、先に買い物に行かれました。」
呆然とする二人。
「…黒崎が悪いんだからな…。」
「いや、おまえだろ?」
結局、二人は七海ちゃんが買い出しを終えて戻ってくるまで騒いでいました。
一番の被害者の店員さんに七海ちゃんは何度も頭を下げるのでした。
