ー彼女のことは心配するな。監視任務には危険因子からの保護も含まれている。ー

ーあんたしか頼めるやつがいなくてさ。ー

ーおい、なんで笑うんだよ!ー

ー頼んだからな!ー



二人には先に、教会の中へ行ってもらい、俺はドアに体を預けて懐かしい光景を見つめていた。
予想通り、黒服の男が俺の元へとやってきた。

「…帰って…来たのか。」

教会の前で俺は待っていた。確実に、あいつが訪れることを知っていたから。

「なんとかな。」

「子犬のザックスが今じゃ英雄…ずいぶんと出世したものだな。」

子犬のザックス…そう呼んでくれたあいつらはもういない。

相変わらず皮肉っぽいこと。俺は対抗するようににやりと笑ってみせた。
「ツォン…ありがとな。」

神羅から逃げてる間も、俺はずっと伝えたかった言葉だった。

「なにが…だ?」

俺は一歩前に進み、ツォンの肩に手を押いた。
安心した…ツォンは変わっていない。
神羅の毒にも…浸食されていない。

「エアリスのこと…あとはシスネに俺たちのこと頼んでくれたんだろ?」
ツォンは珍しく照れたように顔を伏せた。

「任務だからな。」

ウソツケ…エアリスのことはともかく、俺とクラウドを捕まえろと言われてたくせに。
まったく、素直じゃない。

「ずっと待ってたんだ。俺と話すより、早く中に行ってやれ。」

顎でドアをさす。
わかってるさ。エアリスが待っていてくれたから…俺は戻ってこれたんだ。

「不良郵便屋さん…ありがとな。」

最後にもう一度礼を言うと、ツォンが笑った。
思わずなんどもみてしまった。
慌てて咳払いをしたツォンに背中を押される。

「いいから、早く行け。」

「へーへー…これからはエアリスのこと、俺が守るから。」

ツォンの表情は見えなかった。俺は手を振って教会のドアを開いた。

咲き誇る花ばな…微笑むエアリス、ここは…やっぱり天国なのかもしれない。

「ザックス!遅いよ!」
ちょっと怒ったエアリスに俺は最高の笑顔を向けた。

「悪ぃ、でももうどこにも行かないからさ!」

この世界も、悪くはないよな。