ーささやかだけど、たくさんあるんだろ?ー

ーあたり。聞く?ー

ーなん個あるの~?ー

ーうーん。ニジュウ、サン?ー

ー紙に書けよ。忘れるから。ー

ーうん。ー




普通に生きることが、幸せだって思っていたの。古代種とか、ソルジャーとか…そういうのなしで、ただ…一緒にいたかった。

わがまま。
我慢しなきゃ…ザックス困っちゃう。

「…アリス?エアリス?」

私を呼ぶ声。ハッとして顔をあげると、金髪碧眼の少年が立っていた。
クラウド、神羅で兵隊をしていたらしい。
…なんとなく…なんとなくだけどまったく違うはずなのにどこかがザックスに似ている。

「あ、ごめんね!ちょっとぼーっとしちゃった!」

私は焦ってお花を傷つけないように、掘り起こした。ミッドガルをもっと緑あふれる街にしたいからお花、少しずつ道路に埋めることにした。
ザックスのアイデア。
ザックスはすごく、想像力が強くて感心しちゃう。

「あのさ…マテリア…持ってる?」

いきなりの質問に、私はドキッとしてしまった。マテリアは今じゃ別に珍しいものじゃない。
でも…私のマテリアは特別。なんの役にもたたない…ううん。本当は役に立つんだけど、その日がこないことを祈っていた。

「うん、持ってる…でもどうして?」

お花から視線をクラウドへとうつす。なにか難しそうな顔をしていた。

「いや…なんでもない。」

…不思議。
クラウドと会ったことなんかないのに、ずっと知っている気がする。

「…クラウド、私たち…どこかで会ったのかな?」

クラウドがなにかを言いかけてやっぱり口を紡ぐ。

「…似てるんだ…俺の大切な人に…。」

絞り出したような声は、すごく悲しそうだった。私は、ゆっくりと聞き返した。

「大切な人…彼女さん?」

「…違う…友だちとか恋人とかよりもっと違った…もっと大切な…人。」
なぜだか、嬉しかった。私のことじゃないのに。大切な人…か…。

「その人、どうしてるの?」

言いにくそうに、クラウドは下を向いた。なんとなく分かっちゃう…。

「…死んだんだ…守れなかった…。」

私は小さなピンクの花を一つ手にとって、クラウドへと手渡した。クラウドは戸惑ったようにそれを見つめていた。

「…クラウドのせいじゃないよ。」

笑って見せた。その人が、きっとクラウドのこんな姿を見たらこうすると思ったから。
なにかを言いかけたクラウドのところにザックスがやってきた。

「進んでるか~?」

「ザックス、もうすぐ終わるよ!」

「…あぁ。もうすぐ終わる。」

クラウドは気を使ったのかそっと花を後ろに隠した。

「ザックス、これからはずっと一緒だよね?」

ザックスは太陽みたいに微笑んだ。

「もちろん!」

ーもっと一緒にいたいですー