今日も今日とで本番の迫った三人組は一生懸命に劇の練習をしています。次のシーンでは、七海ちゃんと咲也君が黒崎さんと初めて出会うシーンをやる予定でした。
台本を確認しながら、咲也君と一時休憩をしていた七海ちゃんは控え室からステージへと歩いていました。
「わっ!…すいません!」
なにかにぶっかってしまって、七海ちゃんは慌てて謝りました。すると、可愛いボーイソプラノの声が響きました。
「台本読みながら歩いちゃだめなんだぞ!」
「あぅ…すいません、ってなんで!どうしたの!?」
そこに立っていたのは小学校にあがりたてくらいの、少年でした。
驚いて目を丸くしている七海ちゃんなんて気にせずにこにこしながら少年は立っていました。
「ママ、遊びに来たよ!」
一方、ステージにて練習をしている他のメンバーはなかなかやってこない七海ちゃんと咲也君を待っている状態でした。
「しかし…遅いな?」
「本当だよ、もう呼んでから三十分立ってるよ!…なにかあったのかな?」
いい加減にその前のところは何回もやったので、みんな休憩を通り越してあきてきていました。早くしないと貴重な残り少ない時間がなくなってしまいます。
黒崎さんがよいしょっと重い腰を持ち上げました。
「しかたがないから、ちょっと見てくるな!」
団長としてのけじめもあります。一人、ステージからおりると廊下を歩きます。そして控え室として使っている部屋の前へと立ちました。
しかし、控え室はしーんとしています。
少し考えます。
「…ドア開けたら、いちゃついてた…とか言う落ちはないよな?」
たはは…そうなってたら泣いちゃうかもなと多少の不安を心に秘めながら黒崎さんはドアを開けました。
「ママ見て~パパ、すごぃんだよ~!」
「おっと!玲大きくなったな~。」
「良かったね。玲、ちゃんとつかまるんだよ。」
「…。」
ぽかーん…思わず開いた口が閉まらなくなる黒崎さん。咲也君が小さな子を肩車していて、七海ちゃんがそれに寄り添うように立っています。おまけに少年は二人をママ、パパと呼んでいて…。
どうしても信じたくない光景に冷や汗が流れ落ちてきます。
「あれ?おじちゃん誰?」
止まっていた黒崎さんの時間が動き出します。
どうやらおじちゃんとは自分のことらしいと言うことに気がつきました。
「あ、しまった…黒崎さん、すいません。みんな待ってるよね?」
「あ…あぁ。」
言葉に詰まる黒崎さん。咲也君が玲君をおろすと頭をなでてやりながら、説明をしていました。
「玲、パパたち練習しないといけないんだ。良い子にして、待ってられるかな?」
玲と呼ばれた少年は咲也君の足にしがみつき、さらには七海ちゃんの手を握りしめていました。
「やーだぁ!僕も練習に行く!」
困ったなぁと顔を見合わせる二人とツッコミを入れたいけど、いれられない黒崎さん。二人はなにやら説得していますが少年は首を横に振るばかり。
「もぉ、ちゃんと静かにしてるんだよ…黒崎さん、玲もつれてって良いですか?」
いきなり話題をふられて、脳内フリーズな黒崎さんは思わずうなずいていました。
「玲、ちゃんとみんなに挨拶するんだぞ?」
しゃがみ込んで目線をあわせ、咲也君は真剣な瞳を向けました。
「うん!僕、ちゃんと挨拶するし静かにしてるよ!」
それを聞いて咲也君は微笑みながら、また頭をなでてやります。
「よし、偉いぞ。さすがお兄ちゃんだな。」
「本当、玲君偉いね。終わったら好きな物作ってあげるからね。」
「わーい!ありがとーパパ、ママ!」
微笑ましい情景と言いますか、むしろすっかり親子な三人の様子に、切実に誰かこの状況についてわかりやすく説明してくれ!!と頭を抱えたいのを我慢していた黒崎さんでした。
昨日からつくづく付いていない可哀想な黒崎さん。
彼がこの一見仲良しな親子たちの真実を知るまでまだしばらく時間がかかるのでした。それまで、可哀想なことに彼はずっと一人だけついていけずに悩み続けることとなるのでした。
台本を確認しながら、咲也君と一時休憩をしていた七海ちゃんは控え室からステージへと歩いていました。
「わっ!…すいません!」
なにかにぶっかってしまって、七海ちゃんは慌てて謝りました。すると、可愛いボーイソプラノの声が響きました。
「台本読みながら歩いちゃだめなんだぞ!」
「あぅ…すいません、ってなんで!どうしたの!?」
そこに立っていたのは小学校にあがりたてくらいの、少年でした。
驚いて目を丸くしている七海ちゃんなんて気にせずにこにこしながら少年は立っていました。
「ママ、遊びに来たよ!」
一方、ステージにて練習をしている他のメンバーはなかなかやってこない七海ちゃんと咲也君を待っている状態でした。
「しかし…遅いな?」
「本当だよ、もう呼んでから三十分立ってるよ!…なにかあったのかな?」
いい加減にその前のところは何回もやったので、みんな休憩を通り越してあきてきていました。早くしないと貴重な残り少ない時間がなくなってしまいます。
黒崎さんがよいしょっと重い腰を持ち上げました。
「しかたがないから、ちょっと見てくるな!」
団長としてのけじめもあります。一人、ステージからおりると廊下を歩きます。そして控え室として使っている部屋の前へと立ちました。
しかし、控え室はしーんとしています。
少し考えます。
「…ドア開けたら、いちゃついてた…とか言う落ちはないよな?」
たはは…そうなってたら泣いちゃうかもなと多少の不安を心に秘めながら黒崎さんはドアを開けました。
「ママ見て~パパ、すごぃんだよ~!」
「おっと!玲大きくなったな~。」
「良かったね。玲、ちゃんとつかまるんだよ。」
「…。」
ぽかーん…思わず開いた口が閉まらなくなる黒崎さん。咲也君が小さな子を肩車していて、七海ちゃんがそれに寄り添うように立っています。おまけに少年は二人をママ、パパと呼んでいて…。
どうしても信じたくない光景に冷や汗が流れ落ちてきます。
「あれ?おじちゃん誰?」
止まっていた黒崎さんの時間が動き出します。
どうやらおじちゃんとは自分のことらしいと言うことに気がつきました。
「あ、しまった…黒崎さん、すいません。みんな待ってるよね?」
「あ…あぁ。」
言葉に詰まる黒崎さん。咲也君が玲君をおろすと頭をなでてやりながら、説明をしていました。
「玲、パパたち練習しないといけないんだ。良い子にして、待ってられるかな?」
玲と呼ばれた少年は咲也君の足にしがみつき、さらには七海ちゃんの手を握りしめていました。
「やーだぁ!僕も練習に行く!」
困ったなぁと顔を見合わせる二人とツッコミを入れたいけど、いれられない黒崎さん。二人はなにやら説得していますが少年は首を横に振るばかり。
「もぉ、ちゃんと静かにしてるんだよ…黒崎さん、玲もつれてって良いですか?」
いきなり話題をふられて、脳内フリーズな黒崎さんは思わずうなずいていました。
「玲、ちゃんとみんなに挨拶するんだぞ?」
しゃがみ込んで目線をあわせ、咲也君は真剣な瞳を向けました。
「うん!僕、ちゃんと挨拶するし静かにしてるよ!」
それを聞いて咲也君は微笑みながら、また頭をなでてやります。
「よし、偉いぞ。さすがお兄ちゃんだな。」
「本当、玲君偉いね。終わったら好きな物作ってあげるからね。」
「わーい!ありがとーパパ、ママ!」
微笑ましい情景と言いますか、むしろすっかり親子な三人の様子に、切実に誰かこの状況についてわかりやすく説明してくれ!!と頭を抱えたいのを我慢していた黒崎さんでした。
昨日からつくづく付いていない可哀想な黒崎さん。
彼がこの一見仲良しな親子たちの真実を知るまでまだしばらく時間がかかるのでした。それまで、可哀想なことに彼はずっと一人だけついていけずに悩み続けることとなるのでした。
