「くそっ!?どっちだ…おい!答えろよ!」
無言でどこか遠くを見ている咲也君の襟元をつかむ黒崎さん。その間にも黒い箱は時間を減らしていく…。
「…無駄だと思いますよ…この人、たぶん目が見えてませんから。」
七海ちゃんが、黒崎さんの手をとがめるようにつかみます。
「どういう…こと?」
亜水弥さんの声が震えます。交錯する四人の視線。時を告げる時計のみが、カチカチとその仕事をおこなっています。
「…はじめから、違和感があったんです。私が飛び降りようとしたとき、この人はあの角度からは見えるはずのない東京タワーのことを話しました。」
黒崎さんと亜水弥さんの戸惑いに満ちた瞳が七海ちゃんに向けられました。
「それから、この人は私たちの身長を確認しました…そして、これが何よりの証拠です。」
そうなのです。ほかの二人が七海ちゃんを見ている中、咲也君だけは七海ちゃんの声が聞こえてくるスピーカーの方向を、つまりは逆を向いていたのです。
「…信じられない…」
「本当に、目が見えないの?」
困惑した声に咲也君は果てしなく黒い笑みを浮かべました。
「っ…はははは!!最高だよ!まさかこんなお子ちゃまに見抜かれているなんてな!」
世界が止まる瞬間。
誰もが、自分の運命を呪いました。
「…さぁ、楽しもうぜ!あとわずかなこの世界をな!」
「はい、カーットやで!」
暁羅さんの声で一気に緊迫した空気が緩むのでした。なんだかんだで本番間近な涼風メンバーはいつになく真剣に、劇の練習をしています。ちなみにここが一番の見せ場、犯人の分かるクライマックスとなります。
「黒崎、間合いが短すぎるな…あと三泊遅く、七海はもっと冷静にかつ冷酷に!亜水弥は素直にもっと驚いて…咲也はナイスな壊れっぷりだ!」
それぞれにアドバイスを受けて、各自反復練習しています。
なんだかんだで、真剣になればいくら大根役者な七海ちゃんでさえやれるものなんです。
「黒崎、おまえはもう少し肩の力を抜かんといけんな。」
さすがにブランクがあったため、黒崎さんの演技は若干堅いみたいなのでした。
さて再会しようと言うときに黒崎さんが手を挙げました。
「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、クロロピクリンってなんだ?」
「あ、私もそれ全然わからない。」
「そういや、私もわかんないや~。」
「実は俺もなんやなぁ。」
台本を書いた七海ちゃん、さらには台本を訂正した暁羅さんまでもがわかっていないという信じられないような状況に咲也君は頭を抱えます。
「クロロピクリンってのは早い話劇物だよ。戦争中とかは催涙ガスとして使われたりしてな、無色透明な刺激物なんだよ。」
へぇ~ボタンがあったら押したい勢いでした。
「さすが咲也やな。」
「偉いぞー咲也!」
「ほぇ~兄さんすごぃね。」
「勉強になった!」
なんだか、このまま俺がいなくなったりしたらこの劇団のいく末が心配でたまらない咲也君なのでした。
無言でどこか遠くを見ている咲也君の襟元をつかむ黒崎さん。その間にも黒い箱は時間を減らしていく…。
「…無駄だと思いますよ…この人、たぶん目が見えてませんから。」
七海ちゃんが、黒崎さんの手をとがめるようにつかみます。
「どういう…こと?」
亜水弥さんの声が震えます。交錯する四人の視線。時を告げる時計のみが、カチカチとその仕事をおこなっています。
「…はじめから、違和感があったんです。私が飛び降りようとしたとき、この人はあの角度からは見えるはずのない東京タワーのことを話しました。」
黒崎さんと亜水弥さんの戸惑いに満ちた瞳が七海ちゃんに向けられました。
「それから、この人は私たちの身長を確認しました…そして、これが何よりの証拠です。」
そうなのです。ほかの二人が七海ちゃんを見ている中、咲也君だけは七海ちゃんの声が聞こえてくるスピーカーの方向を、つまりは逆を向いていたのです。
「…信じられない…」
「本当に、目が見えないの?」
困惑した声に咲也君は果てしなく黒い笑みを浮かべました。
「っ…はははは!!最高だよ!まさかこんなお子ちゃまに見抜かれているなんてな!」
世界が止まる瞬間。
誰もが、自分の運命を呪いました。
「…さぁ、楽しもうぜ!あとわずかなこの世界をな!」
「はい、カーットやで!」
暁羅さんの声で一気に緊迫した空気が緩むのでした。なんだかんだで本番間近な涼風メンバーはいつになく真剣に、劇の練習をしています。ちなみにここが一番の見せ場、犯人の分かるクライマックスとなります。
「黒崎、間合いが短すぎるな…あと三泊遅く、七海はもっと冷静にかつ冷酷に!亜水弥は素直にもっと驚いて…咲也はナイスな壊れっぷりだ!」
それぞれにアドバイスを受けて、各自反復練習しています。
なんだかんだで、真剣になればいくら大根役者な七海ちゃんでさえやれるものなんです。
「黒崎、おまえはもう少し肩の力を抜かんといけんな。」
さすがにブランクがあったため、黒崎さんの演技は若干堅いみたいなのでした。
さて再会しようと言うときに黒崎さんが手を挙げました。
「あ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、クロロピクリンってなんだ?」
「あ、私もそれ全然わからない。」
「そういや、私もわかんないや~。」
「実は俺もなんやなぁ。」
台本を書いた七海ちゃん、さらには台本を訂正した暁羅さんまでもがわかっていないという信じられないような状況に咲也君は頭を抱えます。
「クロロピクリンってのは早い話劇物だよ。戦争中とかは催涙ガスとして使われたりしてな、無色透明な刺激物なんだよ。」
へぇ~ボタンがあったら押したい勢いでした。
「さすが咲也やな。」
「偉いぞー咲也!」
「ほぇ~兄さんすごぃね。」
「勉強になった!」
なんだか、このまま俺がいなくなったりしたらこの劇団のいく末が心配でたまらない咲也君なのでした。
