あれから、ザックスはやっと体を起こし朝ご飯のある一階へと降りてきた。それを見て、エアリスのお母さんが少し顔をゆるませた。

「…戻ってきてくれて、ありがとうね。」

小さな声でエアリスがどれだけ心配をしていたのか、どれだけ楽しそうにザックスとのことを話していたのかをこっそりとザックスに話していた。ザックスは嬉しそうに何回もうなずいていた。
やがてお母さんは用事があるからと席を立ち、俺たち三人が残された。

「飯うめぇ!エアリス、天才!」

確かに久しぶりに食べたまともなご飯は、すごくおいしかった。
エアリスは照れたように顔を少しうつむかせた。
「ザックスは大げさ!」
「なんで?マジ一番うまいって!なぁ、クラウド?」

「え!…あ、あぁ。」

突然話をふられて戸惑ってしまった。エアリスが心配したように俺を見つめていた。

「口、あわなかった…かな?」

「そんなことない!」

ガタンと慌てたためにイスを倒してしまった。二人が目を丸くして、俺を見ていた。

「わ…悪い…。」

「あははは!それなら良かった。」

「あれだな、クラウドの母ちゃんの料理もうまかったもんな。」

俺の頭はいまだに混乱していた。二人の様子から見ると、どうやらニブルヘイムへの任務に行ってセフィロスが狂った事件は本当に起こったようだった。しかし、村が焼かれる前にザックスが異変に気がつき、セフィロスを倒したらしい。しかし、俺たちとセフィロスは撃ち合いに近い形で倒れそこを北条博士に見つかり神羅屋敷で魔胱漬けにされていたらしい。ザックスが気がつき、なんとか逃げ出し今はそれから四年の月日がたっているそうだ。
今ではセフィロスではなくザックスが英雄として語られていた。

真実がなんなのか…俺にはよくわからなかった。
「そーいや、さっき神羅がどうとか言ってたよな?」

食事が終わり、一息ついているとザックスが問いかけてきた。そうだった。さっきルーファスから連絡が来たんだった。

「あ…なんか…表彰したいから、神羅に戻ってこいって。」

エアリスが複雑そうな顔をしていた。

ソルジャーはおかしい。
ザックスはふーんと息を吐き出すと、その場でスクワットを始めた。

「今更…戻れるかっちゅーの!俺とクラウドはもう神羅の犬じゃねぇ!」
俺とエアリスはその姿を見つめていた。そして何回かスクワットをするとザックスは笑顔を振りまいた。

「俺とクラウドはなんでも屋を始めんだよな!な、クラウド!」

「なんでも屋?」

エアリスの不思議そうな声が響いた。



ー俺はクラウドだ。仕事は…。仕事は「なんでも屋」だ。ー

ーはぁ…なんでも屋さん。ー

ーなんでもやるのさ。何がおかしい!どうして笑う!ー

ーごめんなさい…でも、ね。ねぇ、クラウド。ボディガードも仕事のうち?何でも屋さん、でしょ?ー

ー…そうだけどな。ー

ーここから連れ出して。家まで、連れてって。ー
ーお引き受けしましょう。しかし、安くはない。ー

ーじゃあねぇ…。デート1回!ー


「そうだよ!危険なこと面倒なこと報酬次第でなんでもやる!儲かるぞ~!」

楽しそうにザックスは夢を語っていた。夢と誇りはいつだって手離さない…ザックスはそういうやつだ。

「じゃあ、依頼!私のボディガード…してくれる?」

上目遣いにエアリスが提案してきた。ザックスはよっしゃ!とガッツポーズをした。

「お安いご用だぜ!ただし報酬にはデート一回してもらうからな。な、クラウド?」

俺も知らないうちに笑っていた。

「あぁ…そうだな。」

二人でいたら、俺たちはなんにも怖くない。
ザックスがいるなら、俺たちは無敵だ。