テストというかお勉強が大嫌いな七海ちゃんは机にむかっておおよそ三秒ほどでため息をつきました。というかまだ、教科書を開いて一ページ目を読んだだけなのに、すでに飽きています。

「…はぁ~…テスト…レポート…もぅやだ…。」
なぜかテスト中になるとお掃除をしたくなる症候群が発動中です。おかげでいつもは片づけるのがめんどくさいとか何とかで本やぬいぐるみが山積みになっていた部屋はきれいに片づいていました。ついでに洗える物も洗ってしまい、お風呂掃除までしたのでもはや片づけるところがなくなってしまったのでした。それでも片づけたくて…片づけたくて…七海ちゃんは立ち上がりました。

「兄さーん、お部屋片づけにきたよ。」

だいたいこの時期には、こうやって七海ちゃんがやってくることがお約束なので初めは断っていた咲也君ももはや文句も言えずに部屋に迎え入れるのでした。

「さっさと片づけて、勉強しろよー。」

まったく聞いていない七海ちゃんは楽しそうにてきぱきと部屋を片づけていきます。
30分ほどたったあたりで、部屋がだいぶきれいになった頃七海ちゃんが訝しげに明らかに何かを探していました。

「…?七海、なに探してんだ?」

うつろな目で振り返る七海ちゃん。

「…えっちぃ本…ないの?私、某音姉みたいに『燃やしなさい!』ってやりたいのに…。」

昔は、そりゃ置いてありましたよ。健全な男子ですもの…しかし、毎年それで喧嘩になったために咲也君は前もって教育上悪い物は片づけておくようになったのでした。

「まぁ…なんだ。俺だって卒業したわけよ、七海ちゃんがいてくれれば十分なわけ。」

きらきらな王子様スマイル!大人な男を装ってこれでハートを狙い撃ちなつもりだったんですが…
「…次…行きましょう!黒崎さんのところ!」

七海ちゃんが怪しいほほえみを浮かべながら、立ち上がったのでした。

「…あー、あいつの部屋ならあるかもな…。」

三年間留守にしていた自称おおかみさんの黒崎さんは七海ちゃんのがさいれもわからないはずです。南無南無と手を合わせた咲也君でした。

「くーろーさーきーさん!」

元気いっぱいに部屋に飛び込む七海ちゃん。黒崎さんはパソコンにむかってなにやらお仕事中のようでした。

「おー、ななに咲也どうしたんだ?」

「お部屋、お掃除にきたよ~。」

「…笑いにきたよ。(エロ本が見つかって嫌われちまえ…)」

にこにこな七海ちゃんと不気味な笑みを浮かべる咲也君でした。しかしそんなことには気がつかず黒崎さんは嬉しそうに言うのでした。

「助かる!ここしばらく仕事たまってて洗濯とかたまってたんだ~。」

主の了解を得たためお掃除というなのエロ本探しがはじまりました。

「定番はベットの下だよね~。」

座り込んでガサガサと漁るとなにかを発見して、嬉しそうに取り出すのでした。

「なにがでたかなぁ?ちっ……バスケの雑誌か…。」

ガサガサ漁ってみてもバスケの雑誌しかでてこないので次は六法全書のカバーを外すのでした。

「…『良い筋肉の作り方』『スクワット』『法律を知る』…」

「…おもしろくねぇ…というか…ここまでくるとムサクルシイ…。」

そこまできて初めて気がついた黒崎さんが焦ったように二人から本を取り返すのでした。

「あー、おい!は、恥ずかしいからあんまみんなよ!」

なんとなく25年間彼女がいないわけがわかってしまった瞬間でしたとさ。