男二人が寂しくババ抜きを(永遠にババが言ったりきたりするためにかれこれ30分間も終わっていない)している横でよろよろしながら七海ちゃんがパソコンから顔を上げました。

「で、できました…うう…死んじゃいそぅ…。」
結局昨日から台本を訂正し続けた七海ちゃんは心なしかやつれていました。

「おー、できたか!偉い、偉い!」

咲也君が笑顔を浮かべながら七海ちゃんの頭をなでようと、トランプを置いたときでした。黒崎さんがガシッと腕をつかみました。

「まだ…勝負がついてないだろ?逃げる気か?」
カチーン!負けず嫌いな咲也君は引きつった笑みを浮かべました。

「…ほぉ?心いくまでやってやろうじゃねぇか…。」

行き交うババ…七海ちゃんはため息をつきながらしばらくその様子を見てましたが、終わる気配が全くないので二人の手からトランプを抜き取りました。

「人が…こんなにも…必死になって書いたのに…兄さんたちは…幼稚園児か何かですか?」

見た目中学生、精神年齢幼稚園児の七海ちゃんに怒られる、一応年上二人組。

「「す…すいませんでした。」」

そうして、台本のチェックが始まりました。

「…ほー、なかなかな心理戦になったな。さすがは心理学部。」

「うん、確かにこの展開は予想外だな。まさか、こいつが犯人とはな。」
新しく書き直した台本はこういったことには厳しい二人から見てもなかなかなできだったらしく、ほっと息をつくのでした。

「…でも、これじゃハッキングできねぇぞ?まずはLANを…」

現役工学部の理数系なら任せなさいな咲也君はペラペラと専門用語を話していきます。

「うぅ…日本語で話して…よぉ。」

黒崎さんも大きくうなずきます。元祖数字嫌いの二人はどうあがいても理解できないのです。

「残念ながられっきとした日本語だよ!」

「うー…まだwktkとかの方がわかるよ。」

それはただのネットスラングルである。

「あー、でもそしたらこの組織じゃここで逮捕する権利はないぞ。」

今度は現役弁護士からのダメ出しです。

「逮捕する流れにしたいんなら、警視庁の…」

咲也君はある程度文系科目もできるためなるほどと話を聞いていますが、得意科目は小論文オンリーの七海ちゃんの頭はぐるぐるしているのでした。

「んじゃ…、今のところを訂正して…って七海?おーい?」

完璧に容量オーバーで頭から煙がでています。

「…イマナラメテオガヨベソウナキガスル…ク、ク、クロマテリア…」

訳の分からないことを口にしながら、そのままパソコンに倒れ込むのでした。

「…この場合はケアルかエスナか…レイズか?どれをかけるべきなんだ?」

「とりあえず、ポーション(買いだめしたまま窓際に放置してた物体)飲ませるか?」

こうして、たくさんの尊い犠牲の元に台本は作られていくのでした。