勢いに任せて書いてきてしまったこのシリーズももうすぐ十回目を迎えようとしています。どうせなら可愛いヤンデレにできたらいいのですが・・・なかなか難しいですね「見習いサンタのプレゼント⑨」↓だんだんと浸食されていく心・・・それはまるで遅効性の毒のようにほかのものの心まで・・・染め上げていく。





このままなにも聞かずに病気にしてあげたほうがちづるちゃんにとって幸せなのかもしれない。俺の心にはそんな迷いが生まれ始めていた。幸せの形なんて人それぞれのものなのだ。だったら…これ以上踏み込むべきではないのかもしれない。

「分かったよ…ちづるちゃん…君の思いは…確かに俺に伝わった。」

俺はちづるちゃんの手を取ると静かに握りしめた。ちづるちゃんが不思議そうに俺を見つめる。

「サンタ…さん?」

心が揺れる。迷いが抜けきらない。決心が鈍りそうになるのを俺は必至になって押さえ込んだ。

「…君を病気にはできないよ。なぜならそんなことをしたらまささんが悲しむからだ。」

俺だって妹がいるからよくわかる。俺がもしまささんだったら自分のせいで大切な妹が病気になることを選んだなんて知ったらどんなに悲しいか…考えたくもなかった。

「だから…ちづるちゃんのことを、グッ!?」

言葉を紡いでいる途中で後頭部に何か違和感を覚えた。なにか、どろりとした液体が頭を伝っていく。目の前がくらくらして真っ暗になってきた。遅れて鈍い痛みが走り出した。

「イジワル…イジワル…イジワル…いいもん。病気にしてくれるまで、サンタさんはおうちに帰してあげないんだから。」
ちづるちゃんの手には赤く染まった花瓶が握られていた…それでようやくわかった。俺はちづるちゃんに殴られたんだ。

「安心して、サンタさんのお世話はちゃんとちづるがするから…だからゆっくりしていってね、サンタさん。」

薄れいく意識の中でちづるちゃんの笑顔だけがやけに輝いて見えた。