5月25日(土)
 
連日の演奏会。
昨年8月以来となる豊中市立文化芸術センター。
今回は初めて大ホールに足を踏み入れる。
 
 
コードリベット・コールという合唱団主催の演奏会を聴きに行く。
テレマン室内オーケストラで名の知れた延原武春氏が音楽監督を務め、宗教音楽を主なレパートリーとしている。
今回は、演目の「エジプトのイスラエル人」に興味が湧き、チケットを入手した。
延原さん手兵のテレマン室内オーケストラが管弦楽を担当する。
 
午後2時開演。
 
♬ プログラム
G.F.ヘンデル : 宗教的オラトリオ「エジプトのイスラエル人」
 
合唱 : コードリベット・コール
独唱 :
渡辺有香(ソプラノⅠ)
浅野純加(ソプラノⅡ)
青木洋也(カウンターテノール)
鹿岡晃紀(テノール)
篠部信宏(バスⅠ)
林康宏(バスⅡ)
管弦楽 : テレマン室内オーケストラ(コンサートマスター : 浅井咲乃)
指揮 : 延原武春(音楽監督)
 
 
オーケストラはヴィオラを上手側に置き、ヴァイオリンから順に6-5-4-3-2という布陣。
独唱者は基本的に最後方の合唱団に交じって歌い、独唱の際は指揮台の横に移動。そして出番が終わるとまた元の位置に戻るといった具合。
プログラムノートによれば、コードリベット・コールは女声41名、男声28名で構成されているようだ。
対訳及び字幕付き。曲目解説は、先日の大フィルよりも余程しっかりと(知りたいことが)書かれている。
 
演奏会は、休憩1回を挟んだ2部構成。第1部が「出エジプト」で第2部が「モーセの歌」。

元来、「出エジプト」の前に置かれる「ヨセフの死を悼むイスラエル人の嘆きの歌」が、丸々カットされている。

これは、このパートで何度も繰り返され印象的な「How is the mighty fall'n!」というフレーズがまったく出て来なかったことで、すぐに確信を持つことができた。
 
主を賛美する歌が続く第2部の「モーセの歌」は、ストーリーのない分、個別の曲の印象はぼんやりとするものの、全体的に宗教音楽らしい荘厳さに包まれている。
第1部の「出エジプト」については、イスラエル人がエジプトを脱出するまでの出来事が歌われていて、歌唱も管弦楽も変化に富んでいて面白い。
実演を聴いて、改めてそういった感想、印象を強くした。

 

コードリベット・コールの合唱は、開始直後は硬さからか出だしが明らかに揃わなかったり、アンサンブルにズレが生じたりと、危うい場面があった。
しかしながら、曲が進むにつれ徐々に調子を上げ、
第9曲の”He smote all the first-born of Egypt”では、敢然と前に出る男声合唱(バス)が感情の籠った力強い歌声を響かせる。他にも第8曲”He sent a thick darkness”のsotto voce、第1部終盤にかけてのフーガなど聴きどころが多かった。
第2部では冒頭の”Moses and the children of Israel”(この曲を聴くたびに、UEFAチャンピオンズリーグのアンセムを思い出す)から”主の賛美”に相応しい、高らかで伸びやかな歌声が聞こえる。
”Who is like unto thee, o Lord”でのフーガも各声部が均衡し、整然と響いていた。

このあたりは宗教音楽を中心に活動しているだけあって、面目躍如といった感じ。

 
独唱陣ではまず、アルトのパートを歌うカウンターテノールの青木さんがよかった。第1部と第2部、2つのアリアでスッと伸びる高音部に安定感があって、美しい。
テノールの鹿岡さんは透明感のある綺麗な声。もっと抑揚をつけてもよい気も。
ソプラノは2名のうちⅠの渡辺さんが、声量は今ひとつだが物腰の柔らかく優美な歌声で、特に第2部ではそれが敬虔な印象を与え、雰囲気によく合っていた。
バスは2名のうちⅠの篠部さんがよく通る歌声で低音部に迫力があった。
 
テレマン室内オーケストラの演奏は素晴らしかった。
ヴァイオリンは全員女性といった女性比率高めの管弦楽が、合唱万歳のこの曲において、単なる伴奏に止まることのない、生き生きとしていて表情豊かな演奏を繰り広げる。
取り分け第1部「出エジプト」における情景描写が的確で見事。
蛙が群がり、イナゴが襲来し、雹が降り、稲妻が光る。無窮動なパッセージで飛来するハエやイナゴを、硬質なティンパニにより雹と稲妻を描写するところが面白かった。
また、それに続く”He sent a thick darkness”における濃い暗闇の深遠さも、印象深い。
第2部ではトランペットやティンパニの活躍が目立ち、そこにオルガンも加わり、祝祭的な雰囲気がはっきりと打ち出された演奏。
 
予習で聴いていたダイクストラ指揮バイエルン放送合唱団、コンチェルト・ケルンのCDには収録されていた元々の第1部を聴くことが叶わず、その点が心残りではあるが、合唱団が主役の演奏会は今回が初めてといえ、そこは大いに楽しむことができた。
延原さんとテレマン室内オーケストラの演奏も、また機会があれば聴きたい。