いきなりの告知で失礼します。

このたび、おススメ♪クラシック第6回を記念して、これまでに当コーナーでご紹介した輝かしい作品の数々を、ひとつにまとめたCDのBOXセットが発売されることになりました(嘘)

師も走るほど忙しい年末なので、早速。


① ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲

聴いている演奏:エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団(SSS0090-2)
$おもひでぺたぺた♪

第6回になって今さらですが、実は数あるクラシック音楽の中で一番好きな作品です。

題名のとおり、歌劇の前奏曲(序曲)なのですが、コンサートでは単独で採りあげられることも多く、人気の高さを証明しています。

ベルリオーズやリスト、そしてチャイコフスキーが称賛したその音楽は「聖杯」がモチーフなのだそうですが、日本人の僕はそれがどのような意味をもつのか、今ひとつ理解できません。

しかし、冒頭のヴァイオリンの和音から続く、魂を浄化するような美しい音の重なりに触れてみると、これが人間による作品なのかと思えるほど、神々しくロマンティック。

さらに管楽器や低音部の弦楽が加わり、次第に厚みが増していく音に心が動かされます。

終結部近く、3度目のシンバルが小さく鳴らされたあとの下降していく音型を聴いていると、
白鳥が飛び立ったあとに、その羽根が半円を描きながら、静かに落ちる情景をふとイメージします。

スヴェトラーノフ指揮ミュンヘンフィルの演奏による、繊細で透明感ある響きは美の極致です。


こちらは、
クラウディオ・アバド指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団の演奏。





② ドヴォルザーク/チェロ協奏曲

聴いている演奏:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Vc)、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団(447 413-2)
$おもひでぺたぺた♪

このコーナーの第3回でご紹介したドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。その作品と時期を同じくして作曲されたのが、今回のチェロ協奏曲です。

楽器の使い方や曲想がよく似ており、協奏曲版の「新世界より」といった趣です。

ニューヨークナショナル音楽院長の職務のため、アメリカに滞在していた頃に書かれたこれらの作品からは、ドヴォルザーク特有の素朴で親しみやすい旋律に加えて、黒人霊歌の力強さや望郷の念からくる哀愁を感じます。

さらに、
第2楽章中、ティンパニの連打により曲調が一転したのちに、自身の歌曲「ひとりにして」が引用されている箇所があります。

これは、彼が若い頃に想いを寄せていた女性(夫人の姉)が好きだった1曲で、その彼女が病気であることを知ったドヴォルザークの切ない想いと祈りが込められています。


正直に言うと、クラシックを聴き始めた頃は、協奏曲にしては長大すぎるこの作品があまり好きではなかったのですが、最近になって好んで聴くようになりました。


奏者のロストロポーヴィチは、稀代のチェリスト。
名指揮者カラヤン、最強オケのベルリンフィルとの共演にふさわしい、力と技がぶつかり合う名演となっています。



③ フォーレ/レクイエム

聴いている演奏:キャスリーン・バトル(S)、アンドレアス・シュミット(Br)、フィルハーモニア合唱団、ティモシー・ファレル(Org)、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団(UCCG3972)

$おもひでぺたぺた♪

このコーナーの第1回でご紹介したヴェルディのレクイエム、そしてモーツァルトのそれと並んで3大レクイエムの一角をなす、フォーレのレクイエム。

作品が完成する数年前におきた父親の死という出来事が、作曲の動機になったと言われています。さらに作品の初演直前には、母親も他界しています。

3大レクイエム中、唯一、死の恐怖を表現した「怒りの日」が曲題として含まれていないことと、終曲に「イン・パラディスム」という棺を墓地まで運ぶ際に歌われる聖歌が加えられていることが大きな特徴となっています。


第1曲:イントロイトゥスとキリエ
導入部分の合唱から荘厳で神聖な空気に包まれ、テノール、ソプラノと歌唱、さらにキリエへと音楽は続く。

第2曲:オフェルトリウム
柔らかな合唱と弦の響きに続き、バリトンの独唱でしめやかに歌われる。最後は「アーメン」と結ばれる。

第3曲:サンクトゥス
印象的なハープの音色にのって、ソプラノが美しく歌う。合唱に呼応するように曲は盛り上がりを見せるが、それも束の間。一瞬で静寂の中に…。

第4曲:ピエ・イエズス
死者の安息を願うソプラノ独唱が清らか。オルガンの柔らかな音色と溶け合い、死者が天に昇ってゆくさまが思い浮かぶ。

第5曲:アニュス・デイ
穏やかな弦の旋律に始まり、優しいテノールの歌声が心に沁みる。中間部、曲調は一転し「ルックス・エテルナ」と第1曲の冒頭部分が挿入されたのち、再び弦により曲は結ばれる。

第6曲:リベラ・メ
シリアスなバリトンの独唱が「リベラ・メ」と歌い、壮大な合唱へと続く。合唱は地を這うような抑制のきいた低音部が印象的。

第7曲:イン・パラディスム
終曲にふさわしく、安らかな天空をイメージさせるオルガンの響きとソプラノの優しい歌声が、一筋の光が射すように曲全体を包み、静かに終わりを迎えます。

他のレクイエムと比べると抑揚がほとんどなく退屈かも知れませんが、各曲それぞれに美しい旋律と表情豊かな独唱、合唱に満ち溢れていて、日本人が思い描く「死と安息の世界」にもっともフィットした曲想ではないかと感じます。

特に第4曲:ピエ・イエズス。
ソプラノによって歌われる旋律に心が洗われます。時間がない方はまず、この曲、そして次曲のアニュス・デイを聴いてもらいたいです。

ジュリーニの指揮による演奏は、独唱も合唱も伸びやかで清らか。
このレクイエムが持つ美しき歌の魅力を最大限にひき出した、そんな演奏です。