えっ、なにこれ………つら……

 

これが、読み終わった時のシンプルな感想です。

誉田哲也著『主よ、永遠の休息を』感想を綴っていこうと思います。

がっつりネタバレしていますので、見たくない方はご注意を!!

 

 

 

 

話としては非常にシンプルでした。

途中で「あ〜これは…こうなりますよね〜」ってのは正直ありましたが、ラストが辛すぎてもう…。

物語は、大きく分けて二人の視点から進んでいきます。

新聞記者の鶴田とコンビニ店員の桐江の二人です。

基本、主役は鶴田なのかな?という感じなので、鶴田目線であらすじを書いていきます。

色々はしょっているので、「そうじゃないだろー!大切な部分が抜けている!!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、ご容赦ください。

起承転結でラストまでがっつり行くので、未読かつこれから読もうという方はご注意です。

 

 

 

 

〈起〉

桐江の働くコンビニに強盗が入る。その現場にたまたま居合わせたのが鶴田。

鶴田は、強盗の取り押さえに一役買った「コバヤシ」と名乗る男から、ヤクザの家に泥棒が入ったらしいとの話を聞き、その取材をしていく。

 

が、その泥棒の正体は、「コバヤシ」改め桐江の父であった。

桐江父は、ヤクザ達が運営していた裏ビデオの配信サイトを潰すために家に侵入したのだ。

その目的は、姪(桐江からしたら従姉妹)の史奈が被害者のある事件の動画がアップされており、そのデータが入っているパソコンとサーバーを潰すこと

鶴田に事件をリークさせたのは、鶴田の調査をきっかけとし、史奈の動画のオリジナルDVDの回収をするためだったのだ。

かくして、桐江父の目的は達成された。

 


〈承〉

…かに思えたが、後日、鶴田は他のサイトから同じ動画が出回っているという情報を得る。

そしてその動画を見た鶴田は、被害者は史奈ではないという結論に至る。

実は犯人である稲垣は裁判の際、「少女の耳を噛み切った」と証言していたが、史奈の耳にはそんな跡はなかった。

耳が欠損しているのは桐江。

そう、動画に映っている少女は、史奈ではなく桐江だったのだ。

 

となると、疑問に残るのは、「一体この動画は誰が所持し、裏サイトに売ったのか」ということだった。

その他にも稲垣の証言と史奈の状況には様々な食い違いがあり、それが元で稲垣は心神喪失として無実になっていた。

この動画のように稲垣の犯行を記録している証拠があれば、判決は変わっていたため、警察からの流出ということはあり得ない。

鶴田と桐江父は、稲垣がその動画データを所持しており、裏サイトに売ったのではないかと考え、稲垣の地元へ向かう。

 

 

〈転〉

周辺で変な事件や奇妙なことが起きているある日、桐江は出先で体調を崩してしまう。

その時、見知らぬ男が「知り合いです」と言って、桐江を連れて行こうとする。

その男こそ、稲垣である。

しかし、桐江は史奈に関する事件の記憶がない。

見知らぬ男に訳のわからないことを言われ、怯える桐江。

どうにか家に逃げ帰り、鶴田に助けを求める電話をかけるが繋がらず、稲垣によって誘拐されてしまう。

 

一方、鶴田たちは稲垣の地元での取材をし、やはり稲垣が動画を売ったと結論づける。

その取材の途中、鶴田は桐江からの留守番電話が入っていることに気づき、桐江の身に危険が迫っていることを知る。

急いで東京に戻るが、途中の電車でGPSを使って桐江の居場所を探索した結果、桐江は稲垣の地元に近づいていることが判明し、東京駅からそのまま稲垣の地元へ戻ることに。

 

 

〈結〉

稲垣の家へと押し込まれた桐江は、少しずつ記憶を取り戻していく。

自分がかつて稲垣から受けたこと。

父親に発見されて家に帰ったこと。

史奈から言われた言葉。

そして、史奈の命を奪ったのが自分であることを、思い出したのだ。

(父の語りで、史奈を稲垣の家の庭に運んだことは証言される)

 

一方、稲垣の家についた鶴田たちは、家の中にいる桐江を発見し、間一髪、桐江を助けることに成功する。

 

しかし桐江は、自分を助けにきた鶴田、父親にスタンガンを浴びせる。

そして、そのまま…………自らの命を。

桐江は、自らの穢れと史奈の命を奪ってしまったことも忘れてのうのうと生きていたことに耐えきれなかったのだ。

 

鶴田は、今回のことを記事にするのを躊躇う。

様々に協力をしてくれた編集長には全てを報告するが、記事にはできないと告げる。

しかし、編集長は「記事にしろ。この世に真実なんてものは存在しない。あるのは、個人にとっての真実だけだ。お前にとっての真実を書け」というようなことを言う。

 

そして最後、鶴田は桐江の働いていたコンビニに行く。

桐江が死んだことを受け入れられない鶴田に、桐江と仲の良かったバイト仲間が、桐江の名札を渡す。

 

 

 

 

いやしんどー!!!!!!!

 

何!?こういう系って、大体、

 

・見事助けてもらってなんやかんや上手く行く系

・あまりの辛さに精神退行しちゃうけど、なんやかんや皆で助け合おう系

 

とかで終わるもんじゃないの!!?

 

あまりに辛すぎてさ…。

いや確かに「後味の悪い小説」で検索して出てきた本よ?

でもさ、こんな終わり方ってないよ…って感じじゃない?

ここまで誰も救われない小説って珍しいよね…?

 

 

 

しかも、うまくあらすじに入れられなくて端折ったけど、最後、仲良しのコンビニバイト仲間から、「桐江はあなたのこと、好きだったんだと思う」みたいなことを言われて、「僕も、好きでした」ってなる場面があるのね。

(訂正:バイト仲間が、「私、結構桐江のこと好きだったんだよね」「僕も、好きでした」って流れでした)

そことか、すっごく切ないの。

もっと早くその想いが伝わっていたら、気づけていたら、何か変わっていたかもしれないって思っちゃうよね。

 

桐江は、自ら命を経つ前に、色々な人に心の中で謝るんだ。

父親とか、バイト仲間とか、バイト先の店長とか、元彼とか。

その中に、鶴田に「告白しなくてよかった。こんな女に好かれたなんて、きっと嫌に決まっている」みたいなことを独白してるんだよね。

両想いだったんだぞ…ってなる。

そんで、その独白も、全部、周りの人への申し訳なさばっかりなの。

桐江はすごく、すごく良い子なんだなーってのが分かる切ない場面なんだ。

 

 

 

事件の被害者が史奈じゃなくて桐江だ、って鶴田が確信する場面も良いんだな、これが。

桐江が牛乳を鶴田におすすめするんだけど、とにかく、気になる人に少しでも話しかけたい乙女心みたいなものが感じられてめちゃくちゃ良い場面なんだ。

しかもその時に耳を見たのがきっかけで鶴田は確信をするわけで。

桐江の気持ちと鶴田の気持ちのすれ違いがすごく良い具合に書かれていて、好きな場面です。

 

 

 

それと、「これを記事にはできない」って言う鶴田に対しての編集長がまた格好いいんだ…。

「お前の中の真実を書け。桐江さんは明るくて、仕事にも熱心で、とても素敵な女性でした。それがお前の真実ならそれを書け。」みたいなことを言うんだよね。

それがめちゃくちゃ格好良くてさ…。

 

桐江という人間が生きていた証。

桐江がどんな人間で、鶴田の目にどう映って、どう生きてきたのか。

それを残せるのは鶴田しかいないんだ。

何が真実で何が嘘なのか。

その線引きは曖昧だ。

 

鶴田は、果たして記事を書いたんだろうか。

私は、書いていないのではないかと思う。

それは逃げではなく、桐江との思い出みたいなものを、鶴田は自分の中の真実として自分の中に残しておくんじゃないかなぁと思ったんです。

鶴田の中に真実はある。

新聞記者の鶴田ではなく、一人の個人である鶴田の中に。

そうして、鶴田の中に、桐江にとっての「永遠の休息」の場所を与えてあげてほしいな、と思います。

 

 

 

 

半ば深夜のテンションで書いてしまったので、誤字脱字もあるかもしれませんが、ご容赦くださいませ……。

次は、週末にアマプラで観た映画「怪怪怪怪物!」か小説「七色の毒(中山七里著)」の感想を書こうと思います!