中絶手術の予約をする | 中絶、うつ病、そして明日への希望

中絶、うつ病、そして明日への希望

望まなかった中絶、それを思い出して苦しむ日々。同じ体験をした女性たちにとって、少しでも救いになるとともに、一人でも多くの女性が同じ苦しみを味わうことのないように願います。

2009年12月23日。

彼は中絶を望んでいるが、
私は何を望んでいるのだろう?

冷静に考えるべきだが
悪阻と体調不良で
頭がまともに働かない。


割れるような頭痛を我慢して、予約していた産婦人科へ行く。
血液検査をしたあと、個室で医師が私に尋ねた。


「で、、今後の方針は決まりましたか?」

「…はい、今回は諦めることにしました…」


とうとう、超えてはいけない壁を超えてしまった。

でももう、何でもいいから決めたかった。
結論がほしかった。
宙ぶらりんでグルグル迷うことに疲弊し、
彼の無言のプレッシャーにおびえていた。
本当に、疲れていた。


その日、中絶手術の予約を入れた。


「30日から1月3日までは病院がお休みですので
今年だと29日までになります。何日にしますか?」


美容院の予約みたいに、あっさりと聞かれる。

年始でもよかったけど、4日からは仕事だ。
それに、何日くらいで回復するのか心配だった。
会社は26日から冬休み。その間に体を休めることができる。


「29日で、お願いします」


年内でいちばん遠い日を選ぶ。
私は勝手だ。
自分から、自分の都合で手放すくせに
少しでも、長く一緒にいたいと思ってる。


そうすることで、罪が少しだけ、軽くなるとでも思ったのだろうか。
そんなわけ、絶対にないのに。


別の個室に呼ばれ、手術当日の注意事項などを聞く。
目の前には、20代半ばの事務員と思われる女性。
彼女は、毎日こういう説明を淡々としているのだろうか。
その表情は、能面のように動かない。


手術は、完全麻酔(全身麻酔)で行うらしい。

24時間前から飲まず食わずでいること。
当日は、ノーメイクで来ること。
中絶同意書を完全に埋めて、持って来ること。
父親と母親の筆跡が明らかに同じの場合、手術は受けられないらしい。
手術費用を全額持って来ること。分納不可。
当日は、夜用のナプキンを持って来ること。


…多すぎる。

とりあえず、当日までに同意書を書いてもらわなくてはいけない。
私はまた、彼に電話した。
この期に及んでも、彼の声を聞けると思うと
ちょっと嬉しくなってしまう自分が、
本当に情けない。


天国のあなたへ。
あの日、手術の予約をしなければ
運命は別の方へ動いたのかな?

自分のことばっかり考えてしまう母親を
あなたはお腹の中で
どう思っていたんだろう。