8月2日未明、アタシは自分の命日を生きて乗り切った。


生まれてから13歳と2ヶ月3週間、アタシは死んだ…。








毎年8月1日が近付くと
生きているコトが辛くなる。


そして、8月2日を迎える度に
死んだ『あの日』を思い出す。


正確には【殺された】だ…。




あの日、アタシの部屋のドアが静かに開き、
ドアの向こうに黒くて大きな影があった…。


影の正体は母親の再婚相手。


暗闇に目が慣れると、あいつのにやけた顔が見えた。

体を強張らせ、しっかりと布団にしがみつくアタシ…。

そんなコトお構い無しに力ずくで布団を捲るあいつ…。


あいつの汗ばんだ気持ち悪い手が、アタシの身体中をはい回る…。



アタシが体を捩り、抵抗しようものなら、
その手でアタシの首をきつく押さえつけ、
白い目覚まし時計をアタシの口に押し込んだ。


ギラギラした眼、
興奮した息遣いで、あいつはアタシを脅す…。


抵抗すると首を強く絞められた。

叫ぶどころか、呼吸しようにも気管に空気がうまく入ってこない…。

恐怖と苦しみで体が硬直する…。




あの頃を思い出そうとすると

13歳のアタシの悲鳴が聞こえる…。



『助けて!!』

『アタシを殺 して!!』




母親の再婚相手にレ イ プされたアタシの心は薄いガラスのように粉々に砕け、パラパラと宙に舞いながら無くなった…。



心のあった場所は真っ暗な空洞で、そこへ飛び込むと落ちてるのか上がってるのかわからない…。

2分もいれば気が狂いそうになる…。




今でも怖くて近付けない場所…。





あの日のアタシは、ずっとそこで漂ってた…。



意思もなく漂い、無気力に開いてる瞳には、色のない世界がぼんやり見えた…。

『助けて!!』と叫ぶ気力もなく、

やがて呼吸するコトすら煩わしくなり、

トクン、トクン、と脈打つ心臓の音か弱まり遠退き、


徐々に聞こえなくなった…。







・・・ここまでは以前もUPした実話…。



今回はこの先のコトをお話しします。







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何も考えられない頭で

このまま死ぬか、もがいて生きるを考える…。


これからも続くであろう家族からの虐待、

またあいつにレ イ プされるであろう恐怖と嫌悪感、絶望感…。


『イキテイタクナイ…。』

口にしたくても唇が動かない…。


飛び降りて血に染まる自分の姿を想像する。

瞼を閉じると身体がふわふわした…。



懐かしい感じがして
深く深く眼を閉じる…。




突然、祖母の笑顔が見えた!!


病気がちな祖母だったけど、アタシの成長を楽しみに
どんな辛いコトだって頑張ってた…。


アタシの前ではいつも笑顔でいてくれた祖母…。


大切に育ててくれたアタシの【命】。


なのにアタシは、その【命】を手離そうとしてる…。


子供を4人亡くしてる祖母。


孫のアタシが自 殺したら、




『今のアタシみたいに死 にたくなるかな…。』



『K(アタシの名前)のためなら死 んでもいい。』


日だまりで、祖母の膝に甘えて頭を乗せるアタシの髪を
優しく撫でてくれた、しわくちゃで温かい手を思い出した…。



アタシが死んだら、
あいつ等におばあちゃんもおじいちゃんも虐められる!!



アタシが死ななければ、おばあちゃんもおじいちゃんも悲しまないなら、


アタシが死ななければ、おばあちゃんやおじいちゃんが虐められないよう楯になれるなら、






『生きてるふりをしよう。』




レ イ プされ、畳に叩きつけられるように転がされたアタシは


ありったけの力を振り絞り、何度か転びながら立ち上がった…。


そして、ヨロヨロと階下に行き

口封じのつもりの、あいつからの2千円を、庭の隅で燃やした…。





今でも続いてる、生きてるふり…。



『ふり』でも続けてたら
いつかは『癖』になり、『本物』になる!?




何度も自分の命日を迎えてるけど



『ふり』は所詮『偽物』でしかないとでもいうように




静かに消えてしまいたくなる…。







でもね、




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今はこの子のために『生きてるふり』を続けるつもり。

もちろん、他の子達のためにも踏ん張って『ふり』を続けなきゃ!!って思ってる。



突然、ママンがいなくなったら

あの子達が『死』というものを理解出来ず、受け止められなかったら



淋しいよね…。

不安で不安で仕方ないもんね…。



特にユメくんは、


アタシでなきゃ育てられないんじゃないかな、って思うから…。









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ユメくんのサインも癖もわかってるのは
9年弱、常に共に過ごして来たから…。



『消えてしまいたい』気持ちと

『生きてるふり』でも、生き続けなきゃいけない、って思う母親としての責任…。


ゆらゆら揺れて


やっぱり今日も『生きてるふり』…。




後何回、アタシはアタシの命日を乗り越えなくちゃならないのかな…。