東海道本線下り、小田原→早川→根府川
「根府川駅」は海の見える無人駅。
降りたら、その開放感にちょっと驚くくらいだ。ホームは屋根がなく、崖の上に位置しているので、目線に青い水平線が!

関東駅百選認定駅 「潮騒の駅」そして茨木のり子の詩「根府川の海」で知られる。
 
 根府川
 東海道の小駅
 赤いカンナの咲いている駅

に始まるこの詩は、戦争中に青春を過ごした茨木のり子が、青い海とカンナにその十代の歳月の心を寄せて詠んだとてもせつない詩。

 丈高いカンナの花よ
 おだやかな相模の海よ
  〈中略〉
 ほっそりと
 蒼く
 国を抱きしめて
 眉を上げていた
 菜ッパ服時代の小さいあたしを
 根府川の海よ
 忘れはしないだろう?

海と空の青さが心に目に身体に沁みるのだ。
このおだやかな風景からは想像できないが、根府川は関東大震災の震源地として、最も熾烈な場所だった。
地震直後に片浦中道向かいの山崩れにより、駅周辺では地滑りが発生。また五分後には大洞の山崩れで土石流が家々をまきこみなから海へ流れ落ちた。
そして海で遊んでいた子供たちも。

写真はホームから改札へと渡る繋線橋。
懐かしいパステルプルーが、風景を邪魔しない。小さな無人の駅舎もこの色だ。
ここへ降り立つ度に、ずっとおだやかな海であってください!と祈る。