中島幼八

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中国残留孤児が辿る

 

         奥の細道紀行(30) 

                  京都、嵯峨野

 

 京都は奥の細道には入らないが、最終章として嵯峨野の落柿舎に触れたい。ここは蕉門十哲のひとりである向井去来の庵であった。芭蕉も何回か来ていて、長滞在のおりに「嵯峨日記」を記している。

 

       五月雨や色紙へぎたる壁の跡      芭蕉

 

私が初めて来たときは15年前であった。女房も一緒で縁側に腰掛けて撮った二人の写真はいまも飾っている。女房はすでに病持ちだったが、あのうだるような暑さの中でも私より元気だった。あのあと、3年経ったころ女房は他界した。昨年11月にコロナ禍の自粛が解除されて、一人で出かけた。また落柿舎を訪れて、一人で茅葺きの本庵の前で写真を撮った。15年の間、私の生活は大きく変わった。しかし、15年ぶりの落柿舎はほとんど変わっていなかった。

茅葺きの草庵は、中国語でいう「茅蘆(モールー)」は、依然として以前の様子であった。無造作に組まれた竹垣は相変わらず飾り気がまるでない。それに囲まれた句碑の自然石が粗い肌をそのままで激しい風蝕が進行しているがそれ以上感じさせていない。去来の立烏帽子形のお墓も苔む墓石が侘しいままだ。生け垣の下に咲く黄色のツワブキは以前にあったかどうか覚えていないが、素朴な雰囲気が漂っている。離れの小屋の和風窓からは、俳諧の朗読が漏れているが、昔も今も俳諧のサロン的な存在を受け継がれている。俳諧を好む人はこういう枯淡さを風流としているのだろうか。落柿舎というネーミングからして、この世界の特質を物語っているようだ。そもそも樹から柿が落ちるということが滅多にない。でも、本当にあったらしい。去来がこの庵を手に入れた当初、柿の木がたくさんあったとか。主人の去来は柿を売って一儲けをしようと皮算用したが、買い手が収穫に来る前の晩に突然暴風に見舞われた。柿が地べた一面に落ちたそうだ。金儲けの夢は水の泡になったが、それがヒントで落柿舎の名として今日まで残っている。よほど強い風だったに違いない。

 

        柿主や梢はちかきあらし山     去来

 

  

嵯峨野まで行ったら,私はさらに健脚をいかして、藤原定家の小倉山荘の跡を訪ね歩いた。和歌に関しても興味があり、百人一首のほか、万葉集の歌はじめ、以降の勅撰集の歌などを暗記したいほど手に取ったりする。残念ながら若いときに縁がなかったので、暗記しようと思った頃は、もうなかなか頭に残らない。でも、文字を追うだけでも、声を出して読んだり、自己流で解釈したり、結構楽しいものである。新聞に掲載される俳壇や歌壇の作品も必ず目を通すようにしている。音楽的なリズムを感じながら、それぞれ異なる作者の心境が読み取れるので、たいへん面白い。80にさしかかる歳になったが、異国で過ごした青少年時代の遅れた分を取り戻すためにも、晩年になっても日本の伝統文化への理解を深めていきたい。

松尾芭蕉の「おくの細道」を辿り、学習の意味でブログを作り、自分の認識を深めてきたつもりだ。健脚の限り、今後も歌垣や句垣を訪ねたいと思うし、理解を深めたいと思っている。

 

                  ( 完 )

 

 

 

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